2003年7月23日 ピロリ菌を追え!!(その6)

5月14日のつづき

5月に、処方されたランサップを一週間、朝夕2回、 きっちりと12時間置きに飲み続けたうさぎ。 副作用のひどい下痢には悩まされましたが、それも飲み続けている間の一週間のこと。 一週間の服用が終わると、下痢はすぐに直り、胃の調子も、うさぎの人生始まって以来の 未曾有の絶好調となりました。 う〜ん、やっぱりピロリ菌の退治は無駄じゃなかった!!

今日はピロリ菌駆除以来初めて病院へ行ってまいりました。
下手に病院に近づくとまた要らぬ薬を処方されそうなので ずっとご無沙汰していたのですが、 ピロリ菌駆除から2ヶ月以上が経過したので、 そろそろ再検査を受けてピロリ菌の駆除が完璧なことを確かめ、 この騒動にも終止符が打てたらいいなと思って。

でも、今日のドクターハンサムは、なんとなく不機嫌。 「調子はいかがですか」といいつつも、うさぎの顔を見ようともしません。
まあ無理もありません。薬を貰いに3週間に一度現われるはずのうさぎが、 2ヶ月以上もお見限りだったんですものね。

実はピロリ菌を駆除してからこっち、うさぎの体調は絶好調です。 物心ついたときから、空腹というのは胃が痛むことと同義だと思ってきたのですが、 違うんですね。 胃が痛まなくても、お腹が空いたことって分かるんだなあ、って初めて知りました。 痛みではない空腹感というものを、初めて経験したのです。

ドクターハンサムにもそれを伝えると、彼は「なるほど」と一言。 「でも、薬は飲み続けてくださいね」と、机の上の処方箋を引き寄せました。 毎度お馴染みの「パリエットとゲファニールのセット21日分」です。

「あの〜、誠に申し上げにくいのですが、お薬はもう頂かなくて結構です。 実は全く飲んでおりませんので」と、おずおず申し出るうさぎ。

「飲んでいない?! 全く?!」と大きな声を出し、 ぷい、と横を向くドクターハンサム。 きゃ〜、怒らないで〜っ!
うさぎは慌てて早口で申しました。
「あの、実はですね、今日は是非、増血剤を処方していただきたいと思いまして」

「増血剤?」と、ドクターハンサム。
あ、やっとこっちを向いてくれたわ。 今日はじめてうさぎと目を合わせました。

「はい! 増血剤です!
実はわたくし、ピロリ菌を退治していただいて、先生にはとっても感謝しているんです! 本当に本当に、ピロリ菌を退治してからのこの2ヶ月というもの、 全く胃が痛むということがなくって、なんだかこんなわたしでも、もしかしたら健康に なれるかなあ、って思えて、今までは自分がほかの人と同じくらい丈夫になれるなんて 思っていなかったんですけれど、急に希望が持てるようになって、 それで、貧血治療も前向きに考えたいなあ、って」 と、うさぎは一気にまくしたてました。

するとドクターハンサムはコホン、と大きな咳払いを一つ。
まだ完全にオマエを許したわけじゃあないんだぞ、というジェスチャーを示しつつも、 頭のスイッチを、胃潰瘍治療から貧血治療へと切り替えたご様子。 滑らかな口調で貧血治療についての説明を始めました。

「では、増血剤を飲みましょう! 増血剤はですね、うさぎさん、多少便秘気味になることがあります。 それに、気分が悪くなる、食事障害が起きる可能性もあります。 また、便が黒くなりますので、びっくりなさらないように。
あと、増血剤は多すぎてもいけません。 多すぎると、肝臓を壊すおそれがあります。 ですからね、うさぎさん、ひと月に一度は必ず血液検査を受けていただきます。 貧血の具合を見ながら処方する薬の量を調節しなくてはなりませんので」

「分かりました」とうさぎ。ニコニコしながら頷きました。
名前を呼ぶドクターハンサムの合いの手が、今日はなんだか嬉しい。
血液検査だろうが何だろうが、この際、受けて進ぜましょう!!

ドクターハンサムはうさぎの承諾をとるが早いか、目にも止まらぬスピードで 血液検査の申請用紙を書き上げ、それをヒラヒラさせてみせました。
そして、「この胃潰瘍治療薬はもう必要ない‥と」 とうさぎの顔を見ながらおっしゃいました。
これまたうさぎが「はい!」とニッコリ頷くと、早速彼は、 「パリエット、ゲファニール21日分」に大きなバッテンをし、訂正印をポンと押しました。 そして「フェロミア(50)28日分」と書き込みました。

ああよかった。 これでやっとパリエット、ゲファニールのコンビと縁が切れたわ〜!、 とほくそえむうさぎ。 でもこのままだと、ピロリ菌の再検査も忘れられてしまいそうね。 ひとこと申し上げておいたほうがいいかしら?

「あのー、ピロリ菌の再検査はどうなりましょうね?」とうさぎ。 その瞬間、ドクターハンサムが、口をヘの字に曲げたのを、うさぎは見逃しませんでした。 きっとまたさっきのいやーな気分を思い出してしまったのね。 これはヤブヘビだったかも‥。

「ピロリ菌の再検査は急がない方がいいです。 あんまりすぐだと擬陽性が出る可能性が高いですからね。 まだ除菌から2ヶ月半しか経っていませんから、検査の申し込みは次回ということで」 とドクター。

あのー、お言葉を返すようですが、 血液検査の申請用紙はもうお書きになったじゃありませんか。 ピロリ菌の方も、検査の日取りはひと月後で構わないから、 申し込みは今日済ませていただけたら‥。

そういうセリフが喉元まで出かかりましたが、うさぎはそれを飲み込み、 ただこう申しました。
「では8月の後半以降に再検査という感じになりますかしらね?」

うさぎが再検査にこだわっているのを見てとったドクターはおっしゃいました。 「よろしい、では次回の日取りを決めてしまいましょう。 8月13日、水曜日にまたお会いしましょう! その時に、ピロリ菌の再検査は予約を入れる、と。 これでいかがでしょう」

‥ありがとうございます。
でも、わたくしが確定させたいのは、
次の診察日の日取りではなく
ピロリ菌再検査の日取りなんですけど‥。

‥まあいいわ。今日はこのくらいにしておきましょう。

「分かりました。‥あら、お盆休みのど真ん中ですね」とうさぎ。
「お盆休みに病院へ来るのは気が進まないとお考えなら、別の日取りでも‥?」とドクター。
「いえいえ、とんでもございません。ただ、ドクターはお休みにならないのかな、と」
「わたしは休みなしですよ」とドクター。
「まあ、それはお気の毒に。ありがとうございます」と気遣ってみせるうさぎ。
「そうと決まれば、増血剤は28日分ではなく、21日分だな」と、 ドクターは処方箋を書き換えました。

‥やれやれ、次回はついに最終回かと思いきや、もうすこし時間がかかりそうです。
それどころか、「貧血克服体験記」という新連載が始まりそうな予感?!
ドクターハンサムとも長いお付き合いになりそうです。 逢瀬はいつも水曜日。 ドクター・ハンサムとマダム・ウェンズデー(注:うさぎのことよ) のかけあいは、まだまだ続くのでありました‥。

つづく