Essay  きりんの旅ヒント

【 迷子 】

カナダはウィスラーでの最終日。
スキーを滑り終えて、借りたスキーとシューズを返しにレンタルショップへ。
レンタルショップはゴンドラ乗り場のまん前だったので、 ゴンドラを降りるとそのままみんなでスキーを返しに行った。
しかし、スキー靴を返してしまうと覇いて帰る靴がない。
しかたが無いので代表してきりんがホテルへ取りに行く事になった。

ホテルまでは歩いてもたいした距離でなかったが、 スキーを滑った後、スキーブーツで歩くのは骨が折れる。
「よし、今日はバスで戻ることにしよう。」
昨日までは、歩いてホテルまで帰っていたので帰りにバスに乗るのは初めてだったが、 巡回バスなのでそれ程心配はない。

ちょっとした階段を上がってバス停に行くと、バスは一台しか止まっていなかった。
バスに乗る時、ドライバーにデルタウィスラーにいきますか?と聞くと、 「YES」という返事。 安心してバスに乗り込んだ。
しばらくしてバスは発車した。
しかし、歩いても行けるはずのホテルがなかなか見えてこない。
どうしたのだろう?ホテルを見過ごしてしまったのだろうか?いやそんなはずは無い。 目を皿の様にして見ていたのだから。
心配になってもう一度ドライバーに尋ねた。すると、次のバスに乗ってと言われた。
どうなっているのだろうか?良く分からないままバスを降りた。

なぜ、こうなってしまったのだろう?
英語が通じなかったのだろうか?
それにしては、「YES」という返事が返ってきたのはなぜだろう?
相手は適当に答えたのだろうか?
しかし、そんな事は後から考えれば良い。さてこれからどうしよう?

何か見覚えのあるものが無いかと辺りを探してみたが何も見つからなかった。
しかたが無いので運転手に言われた通り次のバスを待つ事にした。
しかし、バスはなかなか来なかった。
改めて周りを見渡して見ても見慣れたものは何一つない。 見知らぬ土地に1人きりという事がこれ程心細いとは。

どのくらい待っていただろう。バスはやってきた。
一瞬乗ろうかどうか迷ったが他に方法は無い。思い切ってバス乗り込んだ。
そして、ドライバーに「デルタウィスラーにいきますか?」と尋ねた。
しかし、このバスはゲレンデ行きだと言う。
ゲレンデに帰れば何とかなる、そう思ってこのバスで行く事にした。

さっきの事もあり少し不安だったが、しばらくすると見慣れた光景が広がった。
そこは、最初にバスに乗ったところ。何のことはない、振り出しに戻っただけだ。
バスから降りる時ドライバーに、 デルタウィスラーに行くには、どのバスに乗れば良いのかと聞くと、 前の方のバスを指して「あれに乗れ」という。

早速そのバスに乗ったが、随分時間を取ってしまったものだ。
バスはなかなか発車しなかった。
その間に頭の中に不安がよぎった。
ホテルまでたどり着けなかったらどうしよう? 又同じ事を繰り返したらどうしよう?
少し考えてから、バスを降りた。「やっぱり歩いて行く事にしよう。」
バスは座われたので少し疲れも取れたし、何より確実に行こうと思った。

ここからは問題は無かった。
少し時間はかかったが、ホテルから4人分の靴をとってレンタルショップに向かった。

何がいけなかったのか今でも良く分からない。 英語があまり通じていなかったのかもしれない。
バスに乗らずに最初から歩けば問題なかったのだろう。でも、何事も経験。
普段から保守的で余り冒険はしない方だが、 ふと冒険心が起こったり、とっぴな事をしたりする事がある様だ。
実は自分でもあまり気づいていなかったのだが。

今回の様な場合、確実な道を選んだ方がいい事は確かだと思った。急がば回れだ。
しかし、こんな事できりんの冒険心が萎えたりはしない。
さて、次は何をしようか?

2002年6月15日 きりん

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