Essay  うさぎの旅ヒント

【 子供にとっての海外旅行 】

以前、

本当は、旅行に子供を連れて行く意味ってないんじゃあないか

と思っていた時期がある。

子供はカルチャーショックを感じにくい。 珍しいものを見ても、あんまり感動せず、淡々としている。 子供はまだ常識が確立されていないので、珍しいかどうか自体、よく分からないらしい。 いつもツアー代金の分はたっぷり驚きや感動を持ち帰ってくるうさぎからみれば、 淡々としているネネやチャアは不経済に見える。

しかも、子供はどこで何を見たか、やったかも大して覚えていない。 おそらく、驚きや感動を感じないから、記憶に残りにくいのだろう。
「○○に行ったときは◇◇だったよねえ」と言っても、
「えー? そうだっけ?」などと言われるとガックリしてしまう。 ホントにコイツらに海外旅行はもったいないよなあと思う。

けれど、ある日ふと、

もしかしたら、子供を海外に連れて行くのって、実はすごいことなんじゃあないか

と思いはじめた。

子供はカルチャーショックを感じないからこそ、すごいんじゃあないか。 大人は、自分の常識がかっちりできてしまっているから、その常識外のことを見て驚く。 けれど子供は、まだ常識が確立されていないから驚かない。 ‥てことは、ひっくり返してみれば、大人から見れば常識外のことが、 子供の中には常識の範囲内として刷り込まれてゆく、 ひいては常識の範囲が広くなるということではないか!

常識の範囲が広くなる――これはすごいことだ。 たとえばそれは、肌の色の違う人を見て 「へえ、こんな人もいるんだ」と感じつつ受け入れるのではなく、 その違いに気を留めることすらなく当然のこととして受け入れてしまう――そういうことだ。 「あたりまえ」の世界が広い、許容範囲が広い、ということだ。

もちろん、常識の許容範囲が広いことが幸せかどうかは、一概には言えない。 これから先、きわめて常識の範囲の狭い日本という国で生活していくのだから、 いたずらに許容範囲を広げるのは、禁断の木の実を食らうようなものかもしれない。 別に将来は国際的に活躍してほしいとか、 国際人になってほしいなどと思っているわけではないので、 海外旅行の費用を教育費に計上できないのがつらいところだ。

けれど、自分とは異なる体験を刷り込まれたわが子の成長は、 どんな実をつけるのか見当もつかない異国の植物の成長を見るようで、ワクワクする。

2001年10月20日 うさぎ

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