Essay  うさぎの旅ヒント

【 ツアーと個人旅行(FIT) 】

海外旅行に、ツアーで行くべきか、個人旅行で行くべきかという問題は、しばしば掲示板などで話題になります。 そのときいつも思うのが、「ツアー」「個人旅行」といった言葉の定義が不明確であることです。 それゆえ議論がもう一つ、いすかのはしと食い違ってしまうような印象を受けることもあります。

なので今日はまず、わたしはこんな風な意味で「ツアー」とか「個人旅行」という言葉を使っているよ、 というわたしなりの定義づけを披露しつつ、それらをどう捉えているかについてお話したいと思います。 一つの考え方として、参考にしていただければ幸いです。

「ツアー」って?

「ツアー」という言葉を耳にしたとき、みなさんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。 日本を出てから帰国するまで添乗員さんと一緒のイメージでしょうか、 それとも、渡航先の空港で現地係員さんが出迎えてくれるイメージ?

この二つはどちらも「ツアー」という言葉で呼ばれており、 「日本を出てから日本に帰りつくまで」の期間を対象としたセット商品です。 旅行会社の約款などでは「募集型企画旅行」とか「主催旅行」などという名前で呼ばれています。

そのツアーの中でも、日本から日本人添乗員さんが付き添い、 航空券、宿はもちろんのこと、滞在中の移動手段、博物館の入場料、食事などまでが セットになったものを、わたしは「フルパッケージツアー」と呼んでいます。

一方、現地の空港で日本語の話せる現地係員さんが出迎えてくれる 航空券と宿、宿までの移動手段のみがセットになり、食事や観光がついていないものを わたしは「フリーツアー」と呼んでいます。

まあ厳密に言うと、この二つの定義から外れる商品もしくは、あいのこのような商品も ありますが、 「日本を出てから日本に帰りつくまで」の期間を対象としたセット商品のほとんどは、 だいたいこのどちらかにおおよそ分類できると思います。

また、上の二つとは別に、「滞在期間中の一部」を対象としたセット商品もあります。 こちらは「オプショナルツアー」「現地ツアー」などと呼ばれており、 もう一つその呼び名に決定打がないように思いますが、 たいてい数時間から一日、長いもので数日のカセットプランで、 どこかに集合し、解散するまでの間、ガイドつきで観光したり、 マリンスポーツなどのアクティビティに参加したりするものです。 このページでは、分かりやすいように、こうした滞在期間中の一部を対象とした「ツアー」を、 便宜的に「カセットツアー」と呼んで、上の二つと区別することにします。

「フルパッケージツアー」って?

わたしが「フルパッケージツアー」と呼ぶのは、 日本を出てから帰るまでの過ごし方の大半をセットにしたパッケージ商品のことです。 行き帰りの航空券、宿はもちろんのこと、観光などの過ごし方の大半がセットになっています。 つまりこれは、「フリーツアー」に「カセットツアー」を埋め込んだものだと考えればよいでしょう。

フルパッケージツアーのメリットは、何と言っても、 日本の空港から日本人添乗員が同行することです。

滞在中のほとんどの時間、添乗員さんが一緒なので、初めての海外旅行、もしくは初めて行く国でも安心です。 わたしが個人的に一番ありがたいと思うのは、飛行機の乗り継ぎ時ですね。 一人では不安な飛行機の乗り継ぎも、添乗員さんが一緒ならば、大船にのった気分でいられます。

更に現地では、添乗員さんの上に、現地に詳しいガイドさんまで登場し、 足の便が悪い場所でも専用バスが連れて行ってくれます。 一日一日の予定がすべて予めキチンと組まれており、実に効率よく、見所を回ることができます。 お腹が空いた頃にはちゃんとレストランに到着する手はずになっているし、 おみやげを買う時間だってちゃんととってくれています。 それはもう、至れりつくせりです。

こうしたフルパッケージツアーはほとんどすべてのものがインクルーシブになっているので予算が建てやすく、 一見、高額に見えますが、その盛りだくさんの内容を考えるとお値打ちです。 同じ内容のことを一つ一つ手配してやろうとしても、なかなか同じ費用で実現するのは難しいと思います。

一方、フルパッケージツアーのデメリットは、団体行動であるがゆえの時間の制約でしょうか。 気に入った観光スポットにあともう少しいたいと思っても、集合時間を厳守しなくてはならないので、 気の向くままに行動することができません。 ただ、そういうペースメーカーがあってこその効率なので、考え方一つですね。 フルパッケージツアーにも多かれ少なかれ、たいてい自由行動の時間があるので、 その時間を上手に利用することで、ツアー内容と自分が重点的に見たい部分とのズレを解消すると良いと思います。

もう一つのデメリットは、ある程度の人数が集まらないと採算がとれないため、 ツアーが催行中止になりやすいことです。 ツアーの場合、パンフレットに載っているツアーが必ず催行されるとは限りません。 パンフレットの隅に小さく20名とか30名といった「最少催行人数」がかかれていますが、 この人数が集まらないと、せっかくの旅行の計画がオジャンになってしまうのです。 人気のないプランは、時期を変えて何度申し込んでも催行中止、なんてこともあります。 催行中止になりやすいこと、それがフルパッケージツアーの最大のデメリットかもしれません。

フルパッケージツアーが向くのは、

  1. 海外旅行が初めて・もしくは初めて行く国で、なんとなく不安な場合
  2. 渡航先でどう過ごしたいか、独自のイメージが特にない場合
  3. 観光の見所が多く、効率よく見て回りたい場合
  4. 観光バス以外に移動手段がない地域へ行く場合
  5. 極端に暑い・寒い地域へ行く場合
  6. 治安が悪い場所へ行く場合

といったところでしょうか。 観光名所が多く、案外治安の悪いヨーロッパの都市などを転々としたい場合など、 フルパッケージツアーは大変便利です。 わたしもかつて、イタリアやドイツへ行った際、 こうしたツアーを利用しました。 どちらもフルパッケージツアーにしては比較的自由時間が多かったので、 見所という見所を効率よく回れた上に自分らしい散策時間まで持てて、大満足でした。

逆に、フルパッケージツアーに向かないのは、

  1. 自分のニーズに合うプランのツアーが見つからない場合
  2. 自分なりのプランがはっきりあって、現地で自由に行動したい場合
  3. 滞在中のんびり過ごしたい人
  4. 時間にルーズな人

などでしょうか。

「フリーツアー」って?

わたしが「フリーツアー」と呼んでいるのは、 行き帰りの航空券と宿をセットにした商品のことです。 フルパッケージツアーと違い、 観光など、滞在中の過ごし方は基本的に含まれず、添乗員は同行しません。 その代わり、日本語のできる現地係員が空港で出迎えて宿まで送ってくれ、 ホテルのチェックインの手続きまで代行してくれます。

「滞在中こう過ごしたい」というイメージがはっきりしていて、 自分のペースで過ごしたい場合は、 こうしたフリーツアーを利用すると便利です。 わたしもよく利用しています。 カセットツアーを適宜組み込めば その部分だけはフルパッケージツアー風になりますし、 のんびりしたい日は何も予定をいれずにおけば、気ままに過ごすことができます。

またフリーツアーの場合、催行中止の可能性はフルパッケージに比べてかなり低い。 フリーツアーの「最少催行人数」はたいてい2名だからです。

それから、けっこうわたしが気に入っているのが、ツアーの現地係員さんの存在です。 係員さんは日本人とは限りません。 むしろ、今までわたしが出会ったのは現地人の方が多かったように思います。 日本語の堪能な現地の方と知り合えるのは、フリーツアーならではのメリットです。 ホテルに向かう車の中で、現地の話を日本語でいろいろ聞けます。

逆に、フリーツアーのデメリットは、現地に着くまでに飛行機の乗り換えなどがある場合、 自力で乗り換えを成功させなければならないことです。 言葉の通じない国で初めて降り立つ空港で、自力で飛行機の乗り継ぎをしなくてはならないというのは それなりにしんどいものです。 また、治安や衛生状態、極端な気候など、特別な注意が必要な場所へ行く場合は、 フルパッケージツアーのほうが無難かもしれません。

では、フルパッケージツアーよりもフリーツアーが向くのはどんなときでしょうか。

  1. 飛行機の乗り継ぎがない、もしくは自力で乗り換える自信がある場合
  2. 自分なりのプランがはっきりあって、現地で自由に行動したい場合
  3. あまり観光をせず、のんびり過ごしたい場合
  4. 現地に到着してから過ごし方を決めたい場合
  5. 比較的治安の良い場所へ行く場合

といったところでしょうか。

「個人旅行」って?

さて今度は「個人旅行」について考えてみましょう。 セット商品に頼らず、航空券や宿など、旅のパーツを一つづつ自分で手配することを、 わたしは「個人旅行」と呼んでいます。 「個人手配」とか「FIT(Foreign Independent Travelの略)」などと呼ぶこともありますが、 ここでは「個人旅行」で統一することにします。 「手配」という言葉はまた別のニュアンスで使いたいので。

服に例えるならば、「ツアー」は「既製品」で、「個人旅行」は「手縫い」です。 服を縫うには、生地、ボタン、糸などを買い求め、それを縫い合わせて服の形にしていくのと同様、 個人旅行では、航空券、宿、移動手段などのパーツを一つづつ買い、それを繋ぎ合わせていく必要があります。

‥とはいえ、プランによっては、それはさほど難しいことではありません。 たとえば「滞在中ずっとどこかのリゾートホテルでのんびりしたい」なんていう場合は、 「航空券」と「宿」の手配を別々にするだけで済みます。 あらかじめ頼んでおけば、宿のスタッフが有料もしくは無料で空港まで迎えにきてくれることでしょう。 航空券はツアー同様、旅行会社で買うことができますし、 日本に代理店で扱っている宿を選びさえすれば、すべて日本語で用が足ります。 ツアーであれば一箇所で済む予約を、宿と航空券と二箇所に分ける、ただそれだけです。

ただ辛いのは、宿が航空券のどちらか一方がキャンセル待ちになってしまったときです。 ツアーでは「取れる」か「取れない」かどちらかしかありませんが、 個人旅行の場合、 「宿はとれたが航空券が取れない」「航空券がとれたが宿がとれない」 といった宙ぶらりんな状況が発生します。

これは精神衛生上、大変よろしくありません。 基本的には航空券を宿より先に取るのが正攻法で、宿は現地に着いてから取ったって構わないのですが、 宿に特別なこだわりがある場合はちと厄介です。 航空券が発売されてもいない時期から押さえないと取れない宿もあり、 あとから航空券を取ろうと思ったら取れない、なんてことも起こりがち。 こうなるともう、宿のキャンセルチャージがかかってくる時期を見据えつつ、 胃が痛くなるような日々を過ごす羽目になります。

しかも、一年のほとんどの時期は、航空券と宿を別々に取るよりも、 それらがセットになったツアーを利用したほうが安い。 同じ内容で比べた場合、ツアー価格より安く上げるのはなかなか難しいものです。

それでもフリーツアーを利用せず、あえて個人旅行を選ぶ理由があるとすれば、 以下のような場合でしょうか。

  1. ツアーの出ていない地域へ行きたい場合
  2. ツアーでは扱われていない宿に泊まりたい場合
  3. ツアーでは扱われていないようなフライトスケジュールで現地へ行きたい場合
  4. すでに航空券もしくは宿の宿泊券を持っている場合

要するに、ツアーでは実現できない場合は個人旅行で実現するしかないわけです。

最近はツアーの行き先もかなり広範囲を網羅するようになってきましたが、 それでもまだまだツアーで行かれる地域は世界のほんの一部。 ちょっと変わった行き先となると、ほとんどツアーは出ていません。 わたしがブルネイへ行ったとき、そしてミネソタへ行ったとき、 「ツアーを利用する」という選択肢はありませんでした。

また、ツアーで使われる宿はほんの一握り。 ツアーがたくさん出ている地域でも、ツアーで使われない宿はたくさんあります。 ツアーでよく利用されるのは、だいたい100以上の客室を持つ大規模ホテルです。 小さな宿は供給が安定しないため、扱いづらいのでしょう。

それから、マイレージや日程の関係などで、特殊なフライトスケジュールで 現地まで赴きたい場合があると思います。 ツアーでは、直行便を優先的に扱いますが、敢えて経由便を利用したい場合もあるでしょう。 そういう場合は、個人旅行で行くしかありません。

4番目は旅のパーツがすでに一部揃っていて、あと残りの足りないものだけを揃えたい場合ですね。 わが家のパラオ旅行はこれに当てはまります。

また、たとえツアーが出ていても、 費用面で、個人旅行のほうが安く上がるシチュエーションもいくつかあります。

  1. 特殊なスケジュールの場合(滞在が長期の場合など)
  2. 寝られさえすれば、宿はどこでも良い場合
  3. ピークシーズンに旅する場合
  4. 子沢山の場合

まず1番、ツアーの延泊料金は高い! 1泊2泊の延泊ならともかく、3泊以上の場合は、個人旅行を考えたほうが利口かもしれません。 また、ツアーの行き先として一般的でない場所は、割安感のあるツアーがあまり出ていないことが多いようです。

2番。ツアーで使用するのはあるグレード以上の宿ですが、 それよりも安い宿で構わなければ、ツアーよりずっと安く上げられる可能性があります。

3番。ツアー代金の設定は、航空券価格や宿の価格以上に、 オフシーズンとピークシーズンの落差が激しいので、 ゴールデンウィーク、夏休み(特にお盆休み)、年末年始などは、 個人旅行のほうが安くなる可能性があります。 わが家がバリへ個人旅行で行ったのは、夏休み中で、ツアー代金が高かったからなのと、 ツアーでは使われない宿に泊まりたかったからです。

4番、これは一つの部屋に大人数で泊まる場合ですね。 ツアーの場合、2人部屋に3人で泊まっても大した割引は受けられませんが、 個人旅行の場合は宿の費用が単純に3分の2になるので(エキストラベッドを使わなければ) たいした節約になります。 尤も、一部屋に何人でも泊まれるわけではありません。 たいていその国の消防法やホテルの規定などで、 一部屋に収容できる最大人数が決まっていますので、予約の際に確認が必要です。

要するに、ツアーというのは薄利多売で安くなっているような部分が多分にありますから、 なんらかの要因で一般的なニーズから外れる場合、そのスケールメリットが享受できず、 却って高くついてしまう可能性があるのです。 そういう場合は少々面倒でも、個人旅行にチャレンジする価値があります。

逆に、個人旅行に向いていない場合というのはどんなシチュエーションが考えられるでしょうか。

  1. 極端に暑い国・寒い国
  2. 極端に治安が悪い地域
  3. 特異な文化の国
  4. ビザが取りづらい国
  5. 予算が決まっている場合

1番目から4番目は、要するにリスクが高い場合です。 これは滞在中の話なので、フリーツアーについても同様です。 極端に暑い、もしくは寒い地域というのは、 ちょっとした手違い、たとえば迷子になっただけで死に直面する可能性がありますから、 わたしなら、添乗員付きのフルパッケージツアーでなるべく安全に行きます。 特異な文化があり、ちょっとした不手際が とんでもない結果を引き起こす可能性がある地域も同様です。

また、ツアーでないとビザが取りづらい(取れない)国もありますので、 物理的に個人旅行ではいかれない場合もあります。

それから、個人旅行は単品を組み合わせるだけに、ツアーよりも総額がつかみづらく、 予算がオーバーしやすいきらいがあります。 ふと気づいたら、ものすごい費用総額になっていた、なんてことも‥。 選択肢の幅が広いだけに、「あとワンランク上の部屋に泊まろうか」などと欲が出て、 費用がかさみがち。 ただこれは本人の心がけ次第ですね。 きりつめようと思えば、逆に航空券以外はとことん切り詰めることもできるはず。 極端なことを言えば、宿を取らず、駅のベンチで寝ているバックパッカーだっていますからね。

「手配旅行」って?

最後に、「手配旅行」について少し触れることにします。 「服に例えるならば、「ツアー」は「既製品」で、「個人旅行」は「手縫い」」と前に書きましたが、 それで言うなら、「手配旅行」は「オーダー」もしくは「セミオーダー」といった感覚でしょうか。 手配を一括して旅行会社にお任せする方法です。

これは、「既製品ではない」という意味では「個人旅行」に近く、 「人に任せる」という意味では「ツアー」に近いものです。 大きな旅行会社では、航空券の種類と宿の選択肢を並べ、 選びやすいようにしたパンフレットを出していることがありますが、 これもわたしは手配旅行の一つと捉えています。

手配旅行の形態は、添乗員までつけてきっちり日程を組むフルパッケージ型から、 航空券と宿だけのフリーツアー型まで、様々です。 ここでは、旅の見た目の形態はどうあれ、「手配を代行してもらう」という意味で、 「手配旅行」というくくりで考えることにします。

こうした手配旅行が有効なのは

  1. 個人では航空券が押さえにくいピークシーズンなどの場合
  2. ツアーが出ていない地域で且つ情報が少ない地域へ行く場合
  3. 旅行のプロに特殊なアレンジを頼みたい場合

などといったシチュエーションです。 私自身はあまり手配旅行の経験がなく、唯一の利用は、宿の予約代行くらいのものですが、 なぜ自分で直接ホテルに予約を入れなかったかというと、その代理店を通したほうが 宿賃が安かったからです。 代行手数料は数千円支払いましたが、そんな費用はまったく気にならないくらい、 安かったのです。

こうした手配は名の通った大きな旅行会社でも請け負っているようですが、 特定の地域に滅法明るい小さな旅行会社も人気が高いようです。 特によく聞くのが、ダイビング目的の旅の場合。 小さなダイブショップに 滞在中のダイビングカセットツアーまでも含めてアレンジしてもらった、なんていう話をよく聞きます。

また、社員旅行などの場合、社員から見れば普通のツアーですが、 幹事さんから見れば「手配旅行」ですね。 わたしがドイツへ行った際のツアーも、主催者側から見れば、手配旅行だったと思います。 見た目は添乗員つきの普通のフルパッケージツアーでしたが、 小さな町の町長さんを表敬訪問したり、現地の方々とパーティをしたりと、個性的な内容でした。

手配旅行というのは、要するに旅のプロに「マイ・ツアー」を組んでもらうわけですから、 素人ではなかなか困難なプランでも実現できる可能性があります。 但し、プラン内容によっては手配料が高額になることも覚悟しなくてはなりません。 宿もしくは航空券の予約代行くらいなら数千円程度或いはタダのこともありますが、 フルパッケージ風にすべての手配をお任せすると、万単位の手配料がかかることもあるようです。 この辺はそれぞれの会社によりますので、一概にいくらとは言えませんが。

ツアーと個人旅行の違い

「ツアーか個人旅行か」という議論はよく目にしますが、 「航空券と宿の手配をどのように行うか」ということに関しては、 ツアーであれ個人旅行であれ、大差はないとわたしは思っています。 「ツアーだとこう、個人旅行だとこう」と語られることの中には、 この二つの本質的な違いではない部分が含まれているような気がするのです。

たとえば、 「ツアーだと他のお客のために現地空港で待たされる」という意見をよく目にしますが、 これはツアーの本質ではないように思います。 ツアーだから必ずしも現地空港で待たされるとは限らず、 同じツアーのお客さんが他にいなければ、 自分のためだけに用意された車ですぐにホテルへ向かうことになります。 逆に、個人旅行であっても、同じホテルへ向かうお客さんが他にいれば、 その人のために空港で待つ可能性があるわけです。 ですから、空港で待たされるかどうかは、 ツアーだから、個人旅行だから、という問題とはまた違うことのように思います。

また、「ツアーでは機内での座席指定ができない」「ツアーではマイレージを貯めにくい」 とよく言われますが、個人旅行なら必ずその辺がクリアできるかというと、そんなことはありません。 格安航空券の多くは座席指定ができませんし、マイレージが貯まらないものもあります。 ただ、個人旅行では航空券にしろ宿にしろ、選択肢の幅が広いので、 「座席指定のできる航空券を選ぶこともできる」「マイレージの貯まる航空券を選べる」 ことはできます。 先の「現地空港で待たされる」というのも、 個人旅行の場合、どうしてもいやならば、タクシーで宿まで行くことができます。

要するに、個人旅行というのは、単品を組み合わせていくだけに、 「どうしてもイヤなことはそこだけ避けることができる」というだけの話なのです。 ただ、快適を手に入れるためにはそれなりにお金がかかりますから、 「個人旅行なら機内での座席指定ができる」というのはとどのつまり、 「お金を余分に出せば機内での座席指定ができる予約クラスのチケットが買える」というのと同じことです。 「個人旅行ならホテルの部屋を選べる」というのも、 「お金を余分に出せば高いグレードの部屋に泊まれる」というだけのこと。 ツアーだって、ビジネスクラスに乗るプランもあれば、 ある特定のゴージャスな部屋に泊まるものもあるわけで、 つまりこれらは、個人旅行とツアーの違いというよりは、 どれだけお金をかけたかの違いだと、わたしは思っています。

カセットツアーと単独行動

一方、航空券と宿の手配にツアーを利用するか否かという違いに比べたら、 もっとずっと大きな違いを感じるのは、滞在中の過ごし方です。 つまり、同じツアーでも、フルパッケージツアーにするかフリーツアーにするか。 カセットツアーを利用するかしないか。 こちらのほうがずっとインパクトが大きい気がします。 航空券と宿の手配方法が個人旅行であっても、 カセットツアーをめいっぱい入れれば フルパッケージツアー・ライクな旅になると思いますし、 航空券と宿がツアー利用であっても、 単独行動をとれば、個人旅行っぽい雰囲気の旅になると思います。

つまり、航空券と宿の手配については

  1. ツアー(セット商品)
  2. 手配旅行(お好みチョイス)
  3. 個人旅行(バラ売り)

の三種から選べ、 滞在中に関しても

  1. ツアー(セット商品)
  2. 単独行動(バラ売り)

からのニ択になるわけで、この「単独行動」こそ、航空券の手配云々よりも、 むしろ「個人旅行」のイメージに近いのではないかな、とわたしは思っています。 所定の場所に集合し、あとは流れに乗っていさえすれば 一連の観光やアクティビティがこなせるカセットツアーに対し、 単独行動は、同じところに行くにも、宿から駅まで歩き、 切符を買って電車に乗り、路線図とニラメッコしながら乗り換えて、 道を歩けば迷子になり、道を聞いては言葉が分からず四苦八苦し、 その面倒くささは、航空券や宿の手配の比ではありません。 でも、そういう苦労をするからこそ、達成感と臨場感を味わえる部分はあります。 但し、非効率ですけれどね。 ツアー(カセットツアー)を利用するか単独行動をとるかという選択は イコール、効率をとるか、臨場感をとるかという選択であると考えています。

ともあれ、ツアー・手配旅行・個人旅行の選択にしろ、カセットツアー・単独行動の選択にしろ、 要は適所適材で、どちらが絶対的に良いとか正しいということもないし、 時期や渡航先、予算など そのときそのときの状況に応じて柔軟に考えればよいのではないかとわたしは思うのですが、 いかがでしょうか。

2005年5月7日 うさぎ

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