Fiji  マナ島とフィジアン

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【 ロボ・ナイト 】

ロボ料理

昼間、レストラン近くの空き地を通りかかると、男性スタッフが一人、ボ〜ッとしながら空を眺めていた。 彼の回りには椰子の葉を編んだ大きなバスケットがたくさん転がっている。 きっと、バスケット編みの仕事を終えて、休息しているところなのだろう。

今夜の日替わりビュッフェは、ロボ料理。 フィジーの伝統料理である。 椰子の葉で編んだバスケットに食材を入れて焼けた石と共に土に埋め蒸し焼きにすると ものの本に書いてあったから、このバスケットはきっとそのためのものだろう。

ビュッフェが始まるのは6時半。 その20〜30分ほど前に外に出てみると、早くもスタッフたちが、土から料理を掘り出すところだった。 この料理の掘り起こしは一種の儀式らしく、歌とギターのバンド付き。 回りには低い石積みの塀があり、その塀を数十人のゲストが取り巻いて、この様子を見物していた。

椰子の葉のバスケットに包まれた料理は、直径が1メートルほどもある丸い金網の籠に入っており、 数人がかりで土の中から掘り起こされると、バスケット毎にビュッフェの切り分け台の上に運ばれて、中身が開かれた。

切り分け台の前で待っていたのは、朝食のオムレツ焼きおばさんだった。ブタ肉、羊肉、とり肉、魚、芋類‥。 バスケットの中身は次々に台の上に出され、おばさんがそれらを切り分ける。 そのおばさんをゲストがぐるりと取り囲み、包丁を握るおばさんめがけて一斉にシャッターを切った。
その様子はさながら芸能人を取り巻く芸能リポーター。 そのリポーターの一員としてシャッターを切りながら、ふと気づけば、回りは見事に全員日本人であった。 ここは狭いので、どうでも一部始終をカメラやビデオに収めたい十数人だけが残ったが、 それは全員日本人だったというわけだ。 さっき土から料理を掘り起こす作業を見ていた時には、西洋人も大勢いたはずだが、 我らが日本人カメラ部隊の意気込みに恐れをなして、ここでは遠巻きの見物に甘んじたとみえる。 日中は日本人をあまり見かけなかったのに、 こういうところではいつの間にか日本人社会が形成されちゃっているのが、なんか可笑しい。

このカメラ部隊には、すごいカメラを携えた本物のカメラマンと雑誌の記者までが混じっていた。 何でも、彼らはOZマガジンという雑誌の取材に来たのだそうだ。 そういえば、昨日からちょくちょく彼らの姿は目にしている。 プールサイドで白人の女の子に向けてシャッターを切ったり、カバの儀式で自らもお手前を頂戴しながら、 シャッターを切っていたっけ。ともあれ、彼らと居合わせたのは運がいい。 取りそびれた写真、聞き逃した情報を彼らが補ってくれるかもしれないし、同じ杯でカバを飲み、 同じビュッフェで食べた記者さんたちの経験が雑誌で読めるなんて愉快じゃないか。

料理は、土から掘り起こした芋や肉だけではなかった。 台の上にはフィジー料理やデザートやら果物やら色とりどりに所狭しと並び、実に楽しげな雰囲気。 そして、味の方もたいへん結構であった。
中でもうさぎが一番気に入った料理は「ココンダ」と呼ばれる魚介類のマリネ。 フィジー特有の料理でココナツを使用しているらしいが、全く違和感のないおいしさで、何度もお代わりした。
ロールキャベツのフィジー版「パルサミ」もおいしかった。 これはコンビーフをタロイモの葉で包み、これまたココナツで煮込んである。 トマト、タマネギ、唐がらしと共に魚を煮込んだ「イカ」や、 酸っぱいバナナを煮てココナツミルクで和えた「ブディ・バカソソ」や「ラウラウ」という名のスープも、 なじみやすい味だった。

デザートでおいしかったのは、モチ状の「キャッサバ」に甘いタレ(タフィー)を掛けたもの。 味はほとんど「きなこ餅」で、日本人スタッフに説明されるまで、本当に餅だと思っていた。
「キャッサバ」というのは芋の一種で、ロボ料理で蒸し焼きにしたものは、 まさに芋以外の何者でもない食感と味がした。ところが、これの別名は「タピオカ」だというので驚いた。 日本でもときどき口にするツブツブのタピオカの正体が、なんと芋だったとは。 先の「きなこ餅」といい、七変化とでもいいたいところだ。

ウェイターが飲み物のオーダーを取りにきたので、「バナナドリーマー」を二つ頼んだ。 ところが、運ばれてきたカクテルを飲んでみると、バナナの味がしない。そしてココナツの味がする。 どうみてもこれは「バナナドリーマー」ではなく「マナ・パラダイス」の味だ。 見た目は同じ色だから、一瞬だまされたけど。がっかり〜。

とにかく料理に関しては大満足! 全ての料理をひととおり試したあと、気に入ったものを何度もお代わりしたら、 昼食抜きで臨んだお腹がはちきれそうになってしまった。胸も充実感ではちきれそう。本当に、ごちそうさまでした!

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