Guam  丘の上のリゾート・レオパレス

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【 コンチネンタルミクロネシア航空 】

夜便のフライトは考えようによっては楽だ。
早起きすることも、大きな荷物を朝のラッシュの中で揉みくちゃにされることもなく、空港へ向かえるから。

昼間の暖かい時間に家を出て、成田空港行きの電車に乗り、空港でのんびりした。
途中、電車の中でチャアが「おしっこ〜!」と言うので慌てたけれど、 「長距離列車には必ずどこかにトイレがあるはず!」という信念のもと、うさぎはチャアの手を引いてグリーン車に行き、 そこでトイレを見つけて事なきを得た。

毎度のことながら2時間以上も掛かる成田までの道のりは遠かった。飛行機に乗る時、きりんが言った。
「グアムは近いから、ここまで来たら半分来たも同然だな」と。

さて、サテライトでうさぎたちを待っていたのは、藍色のバックに地球の経緯線をオレンジで描いた尾翼。 コンチネンタルミクロネシア航空のジャンボジェットであった。 夜便は不人気だと聞いていたし、しかも今は正月休み前の閑散期なので、こんな大型機が待っていようとは思わず、 ちょっと意外だった。
そして、これならさぞかし機内が空いているだろうとほくそえんだが、その期待も外れた。 満席とは言わないものの、どうしてどうして、7〜8割の乗船率だ。
しかも、成田発グアム行きなんてのに乗るのはすべからく日本人かと思いきや、米国人の姿もちらほら。 日本人7に対し、1くらいの割合か。ビジネスマンはおらず、ラフないでたちの女子供が多い。 やっぱり彼らもグアムにリゾートしに行くのだろうか。

グアムまで3時間半のフライトは慌ただしい。 3時間半といっても、離陸から着陸までは3時間弱しかない。 その間におつまみ・機内食を出し、映画を上映し、入国カードを配るのだから、 クルーたちは大忙しだ。 まだ安定飛行にも入らぬうちから通路に立って おつまみとトロピカルジュースをくばりはじめ、 そのほんの5分後にはチャイルドミールを配膳し‥いう過密スケジュールぶりである。

乗客の方も、退屈しているヒマなどあらばこそ。 映画を見ながら食事をし、 食べおわったらそろそろ入国カードの記入を始めなければならない。 タラタラしていようものなら書きおわらないうちに飛行機が着陸体制に入ってしまうぞ―― というのが、きりんの持論だ。
いつも用意周到なきりんは映画を途中で諦め、一時間以上もかけて3人分を丁寧に書いた。 それぞれの分を混同したり、ちょっとでも間違えたらいけないと思って、 慎重に書いたらしい。
きりんはうさぎにも「早く入国カードを書いちゃいなよ」と再三勧めてきた。 けれどうさぎはいま映画を見ているのだ。 邪魔しないで欲しい。
「こんなものはね、一分ありゃ書きあがるのよ」とうさぎはきりんに豪語し、 映画が終わってから、 本当に自分の入国カードを一分で書き上げた。
「ほら、どんなもんよ? パパったら、こんなものになに一時間もかけてるかしらねー?」 そういいながら、 最後にサインをして、入国カードの完成‥と思ったら、おっとしまった間違えた。 チャアのカードに自分のサインを書き入れてしまった。
「なにやってるんだ〜! どうするんだよー!!  これ一枚書くのに、何十分かかったと思ってるんだ!!」ときりん。 あたかも自分の作品を台無しにされたといった騒ぎようである。
でも、こんなことで動じるうさぎではない。
「あら、こんなものはね、こうすりゃすぐに直るのよ」 と、間違ったサインを二重線で消した。
それを見て、きりんはいや〜な顔をした。

ともあれ入国カードを無事書き上げた後、飛行機はグアムについた。
チャモロ人の係員に案内してもらいながら空港ビルを一歩出ると、ムア〜ッとした空気に包まれた。 その瞬間、うさぎは「あっ、外国に来たんだ」と実感した。 たった3時間のフライトで、こんなにもきちんと外国なところについてしまうなんて、なんだか魔法みたい。 冬の最中の日本からこんなにも暑い国へ、容姿も言葉も異なる人々の国へ、たった3時間で着いてしまうなんて。

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