Philippines  セブ・マクタン島

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【 セブの風景 】

サリサリストア

朝からたっぷりプールで遊び、子どもたちの気がいちおう済んだようなので、 明日に予定していたセブシティ行きを今日済ませることに。 "セブシティ行き"と言っても、行き先はただ一箇所、"シューマート"という名の巨大ショッピングモールである。 ここに行けば、マクドナルド見学、おみやげの買出し、安価な夕食など一通りの用が済むはずだ。 ホテルからシューマートまでは約40分、ホテルで頼んだタクシーで片道420ペソ(1200円くらい)ほどかかるらしいが、 一度くらい行ってみてもバチは当たらないだろう。

3時前にプールから部屋に引き上げ、すぐに服に着替えてロビーで車を呼んでもらった。 車はすぐにやってきたが、日本のタクシーのようなセダンが配車されるかと思いきや、昨夜のようなワゴン車であった。 新しくて立派な車だけれど、エアコンが入っていないのが玉にキズ。 物価の安いこの国で1200円も払って乗っているんだもの、エアコンくらい効かせてくれたっていいのにねえ。

車に乗り込んで、シューマートまでと告げると、
「おみやげを買いに行きませんか?」と運転手さん。 きっとおみやげ屋さんに連れて行きたいのだろうとうすうす感づいたが、わざと
「ええ、おみやげを買いにシューマートに行くのよ」とはぐらかすと、
「いや、わたしが言っているのは、別の店におみやげを買いに行かないか、ということでして」と運転手さん。
「ああ、今回は遠慮しておくわ」とうさぎが答えると、今度は
「観光はいかがですか?」
面倒くさくてつい「ノー!」と強い調子で答えたら、同じセリフを吐いたきりんと唱和してしまった。 そしたらそれっきり、運転手さんは何も言わなくなった。

昨夜同様、タクシーの窓からはフィリピンの庶民の生活が見えた。崩れかけた小屋のような家、店。 そここちらにいる野犬、山羊、ニワトリ、そして人間。本当にどうしてかと思うくらい、人、特に子どもが多い。
どうみてもここは"村"なのに、どうしてこんなに人が多いのだろう。 それが不思議だったが、この辺の家には、水道や電気などのライフラインが通っていないのだとのちに知って合点がいった。 テレビもなけりゃ、灯りもつかない家の中に昼間っからこもる理由は何もない。 日本でなら家の中にいるはずの人間が外にいるから、だからこんなに人が多いのだ、と。 この国は一年中暖かいから、外にいても快適だし。
雑用をしたり、昼寝をしたり、食べたり飲んだり。 日本だったら家の中に入らなければ見えない人間の暮らしが、ここではタクシーの中からでも見える。 見たこともないくらい貧しい村、けれどそこには活気があった。

ホテルの近くには貧しい村の景色が続いていたが、しばらくするとだんだん周りの景色は街らしい様相を呈しはじめ、 マクタン大橋を渡ってセブ島本土に足を踏み入れると、とたんに近代的な景色に変わった。 セブシティとおぼしき方角には高層ビル群がそびえ、行く道沿いにも大きな工場や会社が並ぶ。 道路の幅も広くなり、周りを走る車もそれまでのトライシクルから、扶桑やマツダなど日本製のトラックや乗用車に変わり、 その分空気は確実に悪くなった。

お目当てのシューマートには、街が華やかさを呈する前に、到着してしまった。 うわさには聞いていたが、呆れるほど大きな建物。しかも窓がまったくついていない。 遠くから見ると、巨大な倉庫といった感じである。

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