Palau  パラオ

<<<   >>>

【 ロングビーチ 】

ロングビーチ

子供の頃、繰り返し見ていた夢がある。 島ひとつ見えない大海原のど真ん中に突然、浅瀬が広がっている夢だ。

その浅瀬は、水の深さがくるぶしくらいまでしかない。 水がひたひたしている、水深10センチにも満たない浅い浅い海なのだ。

波はなく、辺りはしんとしている。 砂の中に、ときどき青く、赤く、キラリと光るものがある。宝石だ。 うさぎはたっぷりとしたスカートを広げ、宝石を拾ってはそこに集めている。

空には雲が多く、青と白が入り混じっている。 厚い雲の合間から、薄い雲のベールを纏った太陽が白くのぞき、 薄黄色い光の筋を下界に投げかけている。 空耳かな、と思えるくらいのかすかな声が聞こえる。 異国の言葉が空から聞こえる。

――これはうさぎのお気に入りの夢で、いつまたこの夢が見られるかとワクワクしていた。 現実にも、こんな場所がどこかにあるのではないか、と時々真面目に考えた。 でも、あるわけがない、という結論に達した。 波のない海なんて、あるわけない。 どこまでも平らな浅瀬なんて、あるわけがない。 そう思い込んでいた。

ところがなんと、あったのだ。 パラオのロングビーチは、そんな感じの場所だった。 宝石こそ落ちていなかったが。 近くに島がありはしたけれど。 大きな大きなリーフに守られて、ここにはほとんど波がない。 水深ゼロメートル、海抜ゼロメートルの不思議な空間。 本当にこんな場所があったのだ‥!

海抜0メートルの砂地が、長く白くゆったりと弧を描いていた。 こっちの島からずっと遠くのあっちの島まで、ほとんど途切れず続いていた。 波のない、静かな海。 砂地は平たく、やっと水から顔を出す程度。

島からずっとこの白い道の上を歩いていくと、数百メートル行ったところで、 水が道をヒタヒタに覆っていた。 光が水に反射してキラキラと跳ねていた。

水のヒタヒタの向こうには、また白い道が続いていた。 向こうの島から、こっちに向かって白い道が向かってきていた。

天井から天使の声が本当に聞こえそうな、そんな感じの場所だった。

<<<   ――   5-3   ――   >>>
TOP    HOME