Thailand  プーケット島ラグナエリア

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【 「あの子、日本人?」 】

飛行機に無事乗り込み、自分の席にたどり着くと、例のOL3人組はもう席に着いていた。 我々が席に座ろうとすると、3人のうちの1人が言った。

「あれ、あの子、日本人?」

と。あの子って一体誰のことだろう。ネネかチャアのこと? 他に誰かいるのかとあたりを見回してみたが、それらしい人はいない。 うさぎたちが日本人だということは、バンコクで日本語で会話して分かっているはずだが‥?

今度の席はスクリーンの前。しかも後ろの5列くらいがまるまる空席だ。 これはリクライニングを倒しっ放しにできるぞ。 映画もらくに見られるし、子供が前の席を足で蹴ることもない。最高の席だ。

隣りのOL3人組は、短いおかっぱ頭のスチュワーデスと早くも話し込んでいた。 それはちびまる子ちゃんみたいな感じのスチュワーデスらしからぬスチュワーデスで、 お互い友達言葉で盛り上がっている。なんて気さくなスッチーなのだろう。

飛行機が離陸し、安定飛行に入ったところで、うさぎはちびまる子ちゃんを呼び止めた。
「子供が熱を出しているので、空いている席に横にならせても良いですか?」と尋ねると、彼女は
「あっ、ど〜ぞど〜ぞ。もうご自由に! どんどん使っちゃってくださいね〜。大丈夫ですかあ〜?」と言った。 なんと個性的なその話しっぷり! スチュワーデスに対するイメージが変わってしまいそうだ。

ともあれ、ネネを寝かせられたのはラッキーだった。彼女は機内食の間もぐったりとして眠っていた。 バンコクでは何とかソファーに座って起きていたが、熱は全く下がってはいない。 それでも不平も言わずに付いてきたのだから偉いが、ここでできるかぎり休んでもらわなくては。 まだ成田から先のこともある。

機内食は、きりんが「3人は肉ね!」と早々決めてしまっていた。 何でこの人ったら子供たちの分まで決めたがるのかしら、と思った。 が、うさぎが頼んだエビが運ばれてきてはっと思い出した。 そうだ、エビっていうのは、きりんが行きの飛行機で食べるハメになって、NGだったじゃないよ。 つい5日前のことなのに、すっかり忘れてた。また「エビ」の一言に騙されてしまった‥。

肉は分厚いステーキで、確かにこっちが正解。 まあ、どのみちうさぎもあまりお腹がすいていなかったので、 オードブルとデザートなど、好きなものしか食べなかった。 ネネは眠っているし、チャアも殆ど何も食べないので、機内食はもったいない状態。 下げてもらえば片づくが、しばらくそのままにしておいてもらった。

しばらくして、ネネが「おなかがすいた」というので、つけあわせのポテトとジュースを飲ませた。 するとまたすぐに眠ってしまった

きりんがトイレに立ったすきに、きりんの席側の通路から美人のスチュワーデスさんがやってきて、 チャアの脇にしゃがみこみ、残っていたおそばに汁をつけて食べさせてくれた。
「あっ、すみません」とうさぎが言うと、彼女はびっくりしたように目を見開いた。そして言った。
「お母さん、日本の方だったんですかー。てっきりタイの方かと‥」。
ちょっとショック。そうか、チャアにおそばを食べさせてくれたのは、 外国の子供に日本の文化を紹介しているつもりだったのね‥。

ここでうさぎはハッと気がついた。「あの子日本人?」の言葉の意味に‥。
まさかとは思うけれど、隣りのOLさんたちにも、うさぎはタイ人だと勘違いされているのではないか。 バンコクであれだけ日本語をまくし立てていたにも係わらず‥。
「あの子、日本人?」という言葉には、「母親がタイ人なのにどうして?」という意味が込められていたのだ? ‥うーん、まさかとは思うけど‥。

そういえば、昨日カナルビレッジのお店でも、
「お客さん、日本人? タイ人みたい」と売り子さんに言われた。

うーむ、うさぎってばタイ人みたいなんだろうか。
確かに日焼けしているし、ラメ糸でゾウの刺しゅうの入ったTシャツ着てるけど‥。

尤も、肌の色を除けば、さほど日本人とタイ人の容姿の差はない。 昨日のその店でも、カウンターの後ろに飾ってあったのは、 まるっきり日本人と見分けのつかない赤ちゃんの写真だった。
「あれは日本の赤ちゃんでしょ?」と売り子に尋ねると、 日本人とは間違えようもない肌色をしたその売り子さんが、
「あら、あれはウチの子よ」と言うのでびっくりしたものだ。

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