インドネシア語

インドネシア語の魅力1 借用語

 インドネシア語の魅力の一つは借用語が多いこと。ムラユ語元来の語彙の上に、サンスクリット語、アラビア語、ポルトガル語、オランダ語、英語がまるで地層のように積み重なっており、様々な文化の足跡が窺えます。

 ひとつひとつの語彙の形を見ていると、何語からの借用語なのか、なんとなく見当がつくことがあります。見当がついたら、あとは元の言葉をあたり、似ているかどうかを調べます。けっこうこれが当たっているから嬉しい~!

 以下はわたしが気づいたムラユ語由来の語彙および各言語からの借用語です。

ムラユ語元来の語彙

 数字(たとえば5はlima)、石(batu)、目(mata)、島(pulau)など。

 同じオーストロネシア語族のタガログ語・フィジー語・サモア語と酷似するものを挙げてみました。

 子音一つに母音が一つつく2音節の語彙が多いです。

 フィリピンとインドネシア、こんなに近いのに、なぜこんなに違ってしまったの?!というくらい、共通点が少なくて、逆にビックリ。

サンスクリット起源の語彙

 神(dewa)、女神(dewi)、王子・子(putra)、王女・娘(putri)、土地・世界(bumi)など。

 インド商人との交易や仏教・ヒンズー教の伝来に伴い、語彙も入ってきたようです。

 男性形が-a、女性形が-iで終わる対の語彙は、サンスクリット語源の語彙である可能性があります。

 bumi(土地)とputra(子)という語は、マレーシアの土地っ子優遇政策ブミプトラ政策でお馴染み。

アラビア語起源の語彙

 曜日(日曜日を除く)、年齢(umur)、出身(asal)、時間(waktu)、特別(khusus)、健康(sehat)、条件(syarat)、意図(maksud)、世界(dunia)などなど、抽象名詞を中心に、た~~~~っくさん!

 インドネシア人の9割近くはイスラム教徒。イスラム教の聖典はアラビア語で書かれていることから、アラビア語からの借用語は非常にたくさんあります。

 アラビア語起源の借用語は、いかにもアラビア語っぽい特徴を忠実に受け継いでいるので、見分けやすいです。たとえば

  1. -h、-tで終わっている語彙はアラビア語の女性名詞からの借用語である可能性がある。
  2. もともとインドネシア語にはないkh、syの発音が入ったものは、アラビア語起源である可能性が高い。
  3. ma-、mu-で始まる語彙にアラビア語起源のものが多い。
  4. 3音節の語彙が多い。 

ポルトガル語起源の語彙

 クリスマス(Natal)、フォーク(garpu)、学部(fakultas)など。

 マラッカ海峡周辺と交易の歴史が古いポルトガル語からの借用語もチラホラあります。西洋言語は似たり寄ったりなので、英語・オランダ語からの借用語との切り分けが難しいですが。

オランダ語起源の語彙

 事務所(kantor)、窓口(loket)、停留所(halte)、部屋(kamar)、プレゼント(kado)、スカート(rok)など。

 インドネシアは戦前までオランダの植民地だったので、オランダ語起源の語彙も多い。但し、これも英語からの借用語との切り分けが難しいです。

英語起源の語彙

 月の名前、バス(bis)、ビジネス(bisnis)、ビフテキ(bistiks)などなど、た~っくさん!

 英語起源の語彙の取り入れ方には2種類あります。

インドネシア語ナイズされた発音・綴りのもの

 たとえば、テレビ(televisi)、ディスカッション(diskusi)。-tionが-siに切り上げられているところが、インドネシア語っぽくてカワイイ。

英語をそのまま使っているもの

 最近の語彙は、英語のスペルのまま取り入れられるようです。たとえばインターネット(internet)、充電(charge)など。インターネットはともかく、チャージは、インドネシア語の綴りの法則に従えば、違ったものになるはず。

日本語からの借用語

 ヤクザ(yakuza)、自爆(jibaku)、ワカメ(wakame)、カラオケ(karaoke)、漫画(manga)など。

 日本語からの借用語は、英語・アラビア語に比べると、ほんの少しです。

  1. 太平洋戦争中、日本軍占領時代に伝わった言葉。
  2. 現在のジャパニーズポップカルチャーによる伝播。

 日本語とインドネシア語は発音が似ているので、日本語の語彙をローマ字で書いたものがそのままインドネシア語になっていることが多いです。

中国語からの借用語

 豆腐(tahu)、客家(hakka)など。

 シンガポールに近いのと、インドネシアにも中華系の人々が住んでいるので、中国語からの借用語もみられます。

元々インドネシア語にはない音

 インドネシア語には本来 f の音がなかったのか、古い時代に伝わった単語は f の発音が p に変えて取り入れられたものもあります。たとえば理解(pahama)というアラビア語由来の単語は、本来なら faham になるところ paham になりました。「2月」もスペルが pebruari と綴る場合があります。

 日本語には th の音がないのでサ行で書くように、アラビア語には p の音がないので外来語の p を b の音で代用するのと同じ。面白いですね。

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