土曜日にスカイプレッスンで話した先生はフィリピン人で、ミンダナオ島のダバオ市に住んでいるとのことでした。
「ミンダナオ島」というと、何か危険なイメージがあります。外務省の渡航情報では常時黄色やオレンジ色に塗られている印象。
でも先生によれば、危険な地域もあるけれど、ダバオは安全とのこと。確かに。あとで調べてみたら、ダバオ市だけ「十分注意してください」になっていました。
この先生、とっても可愛らしくて、お顔を見てるだけでも癒されるんですが、話も面白かった。
わたしがアラビア語を学んでいるというと、「アラビア語かあ、シュクラン(ありがとう)しか分からないわ」と言う。「他にもいろいろ友達に教えてもらったんだけど、もう忘れちゃった。その子、プリンセスなの。で、いつもきれいな花柄のベールをかぶっていて・・・」
「・・・ちょっと待った。今”プリンセス”って言った?」
「ええ、言ったわ」
「”プリンセス”ってどういう意味?」
「プリンセスとは『王様の娘』という意味です」
「・・・そうじゃなくて^^;。その子がプリンセスって、どういうこと?」
「ああ、つまりその子、スルタンの娘だったの」
「スルタンの娘となっ?!」
わたしは内心、非常に驚いたのだけれど、先生にとってはそこはどうでもいいらしく、こともなげに話を続ける。
「・・・それでね、ベールがいつもあんまり素敵だから、わたしにも貸してくれない?って言ったんだけど、髪を見せられないので、ダメだって」
そのままベールの話になってしまい「スルタン」に関して突っ込むタイミングを逃してしまいましたが、「スルタン」だの「プリンセス」だのという、わたしにとっては非日常的な単語が、先生の口から自然に出てくること自体が、新鮮な驚きでした。
そこで、レッスンが終わってすぐ地図で確認。あら、ミンダナオ島はカリマンタンのすぐ近くなんだわ、と気づきました。ブルネイ、マレーシア、インドネシアのマレー系イスラム教国と目と鼻の先。どうかするとフィリピンの首都マニラよりも近い。
どうも地理というのは、国ごとに見てしまいがちなのですが、国境線を無視して地図を読むと、また違った発見があるんですよね。「スルタン」をキーワードに考えると、フィリピンの南部はむしろブルネイ、マレーシア、インドネシアと文化的に近いのでは・・・?
ブルネイはスルタンが治める国。わたしもラマダン明けにロイヤルファミリーと握手しに行ったことがあります。ミーハー(笑)
マレーシアも、州ごとにスルタンがいて、マレーシア国王はスルタンの輪番制らしい。
インドネシアの古都ジョグジャカルタにもスルタンがいて、独立戦争時における功績により今も例外的に特権を認められている様子は、インドネシア語にハマっていたとき「ジョグジャカルタ 支えあう王と民」という本で読んだ。この本も相当衝撃的でした。
そして今回はフィリピンのスルタン。スルタンをキーワードに地図が見事に繋がりました。
でもフィリピンは共和国のはず。スルタンには今でも政治的に権力があるんだろうか? それとも今は肩書きだけなんだろうか?
それが気になって調べたのですが、いまいちはっきりした情報が見つからなかったので、日曜日もミンダナオ島在住の先生を探して授業の予約を入れました。今度はまだ顔に幼さを残した爽やかな男の先生でした。ダバオ市にある大学の学生さん。
簡単な自己紹介を終えたあと、いきなりスルタンについて尋ねると、個人的にスルタンの知り合いはいないとのことでしたが、スルタンは今もなおイスラム教徒のリーダーであり、今もって広大な土地を治める権力者だと教えてくれました。
特にミンダナオ島の西部はスルタンが治めている土地が多いのだそうです。スルタンは一人ではなく、先生も詳しい数は知らないようでしたがたくさんいるらしく、それぞれ自分の領土でイスラム教徒を治めているのだそう。
スルタンにはたくさん奥さんがいるそうです。イスラム教では奥さんは4人までしかもてないはず。でもその先生によれば、ミンダナオ島のスルタンが持つ奥さんの数は、4人なんてもんじゃないそうで、貧しい家の娘を、先生の表現によれば「買う」ことによって、貧しい家に経済援助をするんだそうです。だからスルタンは金持ちでなくてはならず、実際、大金持ちだとのこと。
・・・なんか、おとぎばなしみたい。とても現代のこととは思えない。
スカイプで繋がった向こうの世界の背後には、そんな世界が広がっているんですね。しかもフィリピンなんて、飛行機ならすぐなのに。
ミンダナオ島のイスラムゲリラの話は時々ニュースになりますが、ゲリラになるからには、キリスト教国であるフィリピンにおいてイスラム教徒というのは、虐げられた少数派なんだとばかり思っていました。まさか大金持ちのスルタンが、大勢の奥さんに囲まれ、悠々暮らしているとは思わなんだ。
面白いなあ~。これだから、外国語はやめられない。
ちなみに英語で「ミンダナオ」は「ミンダナオ」 。最後にアクセントがくるようです。