バントゥー諸語・コイサン諸語

母語はアイデンティティ

 ングニ諸語のクリック音の出し方を教えてもらおうと思い、もういちどボツワナの先生を指名したところ、休講になってしまったので、南アフリカの先生に予約を入れなおしました。

 大きな切れ長の目のお嬢さんです。たぶん黒人の先生のほうがズールーかコサの母語話者である可能性が高いんじゃないかと思い、それっぽい風貌の先生を選んでみた^^。

 結果、大当たり!! 母語ではないけれど、ズールー語が話せるそうです。

 先生のクリック音、バッチリ聞かせてもらいました! 当たり前かもしれないけれど、ちゃんとクリックするんですねえ。youtubeでみた数々の動画、決して大げさではなかった。「xhosa(コサ語)」っていうたびにちゃんとクリックしているのに感動~。

 でもそのクリック音は、わたしが考えていたほど単純ではないらしい。まずコサとズールーでは、クリック音が違う。xhosaと言うときの音は、コサ語のほうがコツン、って感じで、ズールーだとチャッって感じ。こっちのほうがxに聞こえる。

 三種のクリック音を続けて発音して頂いたのですが、その違いは聞けば聞くほど分からなくなる感じ。これは限りなくRとLの世界かも、と思った。自分で発音するより、聞き分けることのほうが大変そう。

 先生の口元をよーく見ながら、わたしも一緒に練習してみました。「さあ言うぞ!」みたいな気合をいれて言おうとすると言えないんですが、何気なく言うと、すごくうまく言えたりして、レッスン後、二日くらい「コサ、コサ」とヒマさえあれば言っていたら、言えるようになりました^^。

 たぶん出る音がどう聞こえるかは気にせず、耳より口の形を信じてやったほうがいいんじゃないかなあ。口の奥のほうで舌を弾けば、自分の耳にどう聞こえようが、xのクリック音になってるんじゃないかと??

 ところでクリック音以外にズールー語に難しいところはあるかどうか聞いて見ました。すると、難しい部分は何もないとのこと。但し、「先生にとっては」(笑)。

 先生の母語は小国マラウイの公用語チェワ語だそうですが、これはほぼジンバブエのショナ語と同じといって良いんだそうです。

 「ショナって発音が日本語に似ているの。母音はアイウエオの5つだし。たとえば日本にタナカさんっているでしょう? ショナでもタナカって言葉があるのよ。発音もスペルも同じ」と言うので、意味を尋ねると、「I feel OKの意味」だそう。

 また、南アのズールー語とジンバブエのンデベレ語もほぼ同じ。コサは発音が少し違い、クリック音も強めだそうです。

 いずれにしろ、共通の語彙が多く、発音や接頭辞が少し違っている程度なので、初めて聞く言語でも、南部アフリカのバントゥー諸語でありさえすれば、だいたい何を言っているか分かるそうです。

 つまり、日本で言う方言くらいの違いなのかなー? 東京の人にとって、関西弁や東北弁は、自分では話せないけれど、聞けば大まかな内容くらいは推測がつく。そんな感じなのかも。

 でも「アフリカの言語なら分かるけど、それ以外の外国語は苦手」なんだそうです。たとえばアフリカーンス語。オランダ語から派生した言語なので、英語ができる人なら楽勝かと思いきや、「アフリカーンス語は難しい~」と嘆いていました。

 ・・・って、なんか似たような話を聞いた気が。ジンバブエの先生も、バントゥー諸語がいくつもでき、英語だってペラペラなクセして「ポルトガル語が難しい~」とのたまっていたっけ。

 つまり、バントゥー諸語間の差は、英語とオランダ語、もしくは英語とポルトガル語の違いほどもない、ということでしょう。

 英語がこれだけできる人たちがアフリカーンス語だのポルトガル語が難しいと嘆くのを聞くと、日本人としては一言説教してやりたくなります。・・・いや実際、言ってやった(笑)。

 「何言ってるのよー! 日本語とは似ても似つかぬ英語を学ぶ日本人の困難に比べたら、そんなの朝飯前でしょうがっ!!」って。

 コイサン諸語についても尋ねてみました。先生がお住まいのケープタウンにはコイサン人がたくさん住んでいるそうです♥

 ただ最近、コイサン人でも若者は英語を使い、コイサン語を使わなくなっているとか。

 「それはとても残念。言語は文化なのに」と言うと、「言語はアイデンティティそのもの」と先生。

Your language is who you are.

 その英語はものすごく印象的だったので、くっきりと耳に残りました。

 それは一般的な真理というより、先生ご自身が身に沁みて感じてきたことのように思えました。それが証拠に、DMMにショナ語を母語とする先生が二人いると話したときの嬉しそうな顔。

 この人は様々な言葉、様々な人種が入り混じる社会の中で、いつもWho am I ?と自分に問いかけてきたのかもしれない。個々人としてのアイデンティティではなく、帰属意識に近いものを。

 そんな言葉を聞いてしまったら、先生の母語でもない言語について、なんだかそれ以上はつっこめなくなってしまいました。

 でも別にいいや。

 ときどきこういう言葉が聞けるから、わたしはスカイプレッスンをやっているんだと思います。

アフリカ・スーダンで買った菓子鉢
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