昨晩、調べ物をしていたら、面白いデータに遭遇しました。
- List of largest empires(英語版wikipedia : 領域の広い帝国リスト)
さて、歴史上で最も広い領域を支配した帝国はどこでしょうか。答えを見ずに、まずは予想してみてください。
ちなみに、わたしの予想はハズレました。
ハズれても面白いから、みなさんも3位くらいまで予想してみてね。
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正解は、二位以下を大きく引き離し、
大英帝国
でーした!
これ、意外でした。へえー、と思った。
いや、よく考えれば至極当然。なぜこの答えを思いつかなかったか、むしろ不思議なんですが、答えを知った瞬間はなぜか「そっか、大英帝国も帝国なんだー」と思った。名前からして「帝国」なのにね。
ではわたしが当初、どこが1位だと予想したかというと。
ローマ帝国^^;
今朝、夫にも尋ねたら、やはり「ローマ帝国」って答えていました。・・・やっぱり(笑)。
たぶんわが家だけでなく、「ローマ帝国」と答える人は多いのではないでしょうか。「全ての道はローマに通ず」ですもんね。「大帝国」と聞くと、まずローマが思い浮かぶ。・・・で、次が、アレクサンダー大王の大遠征とかササン朝ペルシャとか。違う・・・?
この辺は学校の世界史の授業で、まだヤル気のある4月頃にやるから、印象が濃いのでしょう。先生もヤル気満々で、丁寧に説明する。・・・で、年度末になると時間が足りなくなり、産業革命以降は駆け足。だからかなあ? 帝国というと古代の帝国のイメージで、近代的な植民地帝国のイメージがいまいち沸かない。
ところで。では「ローマ帝国」、実際は何位だったでしょうか。
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リストを上から1、2、3、4・・・と指で数えたら、なんと・・・!!
インドのマウリア朝と並んで、23位!!
インドのマウリア朝? どこよ、それ? そんなマイナーな帝国(?)と、「あのローマ帝国」がタイとは!
もう、意外すぎ~~!!
ではローマ帝国よりも上の順位はどんな感じになっているでしょうか。リストを和訳・抜粋の上、以下に転記します。
名称 | 最大占有率 | 年号 | |
---|---|---|---|
1 | 大英帝国 | 23.84% | 1920 |
2 | モンゴル帝国 | 16.11% | 1270,1309 |
3 | ロシア帝国 | 15.31% | 1895 |
4 | 清 | 9.87% | 1790 |
5 | スペイン帝国 | 9.20% | 1810 |
6 | フランス植民地帝国 | 7.72% | 1920 |
7 | アッバース朝 | 7.45% | 750 | ウマイヤ朝 | 7.45% | 720 |
9 | 元 | 7.39% | 1310 |
10 | ポルトガル帝国 | 6.98% | 1815 |
11 | 匈奴 | 6.04% | 176 BC |
12 | ブラジル帝国 | 5.60% | 1889 |
13 | 後漢 | 4.36% | 100 | 明 | 4.36% | 1450 |
15 | 正統カリフ時代 | 4.30% | 655 |
16 | 突厥 | 4.03% | 557 | キプチャク・ハン国 | 4.03% | 1310 | 前漢 | 4.03% | 50 BC |
19 | アケメネス朝 | 3.69% | 500 BC |
20 | 唐 | 3.63% | 715 |
21 | マケドニア王国 | 3.49% | 323 BC | オスマン帝国 | 3.49% | 1683 |
23 | マウリヤ朝 | 3.36% | 250 BC | ローマ帝国 | 3.36% | 117 |
※年号は、領土が最大になった年。古代:■、中世:■、近現代:■。
そもそも「帝国」とは何か。なにを持ってその国の「領土」とするのか。定義が難しいので、このリストの序列がそのまま信じられるわけではありませんが、大雑把に読み取れることはいろいろあります。
まず、大英帝国の広さにビックリ。最盛期には地球上の陸地の4分の1近くだったとは~!!
しかもそれからまだ100年も経っていない。英語が席捲するわけです。納得。
英語に限らず、7位までの上位には見事に、現在の6つの国連公用語を公用語とした国が並んでいます。英語、ロシア語、スペイン語、フランス語、中国語、アラビア語。
唯一モンゴル帝国だけが例外ですが、モンゴル帝国は栄えたのがずいぶん昔だし、それに言語に寛容で、モンゴル語以外にも、トルコ語、ペルシャ語、中国語などが使われていたとされています。元も同様。
清の支配者層は満州語を母語とする満州族でしたが、民衆は満州語の習得を押し付けられることなく、母語を使用しつづけました。それどころか、wikipediaの満州語のページには
民間の漢人は、満洲語と満洲文字の習得を禁止されていた。
とあります。
覇者が広域を支配すると、その領域内の通商活動が安全・容易になり、交流が盛んになります。人の往来が増え、物のやり取りだけでなく、広く文物が運ばれる。特に支配者の言語、宗教、思想、社会習慣が、時に強制的、時には恣意的に伝播される。
たとえばアルメニア人に、父称を使うかどうか尋ねたところ、「伝統的にアルメニアには父称はない。でもソビエト連邦時代にロシアからその習慣が輸入され、いまも使われ続けている」とのこと。
英語版のwikipediaから引いてきたこの表にはソ連は入っていませんが、同じwikipediaでも、日本語版では4位で、帝国とみなされています。英語の感覚だと、Emperor(皇帝)のいない国をEmpire(帝国)とは呼ばないのかもしれませんが、その違いを除けば帝国支配的。その影響の強さが伺えます。
この表は統治面積での比較で、統治人口の比較だと、また違った順位になります。
たとえば我らがローマ帝国(?)は統治人口順で言うと、11位まで浮上します。そして上の表ではランク外だったムガール帝国が5位に浮上します(日本語版wiki参照)。生産性の低かった古代、5~7千万人の民がいたことを思うと、やっぱりローマは当時としては破格に強大。
また、アレクサンダー大王の大遠征のように瞬間芸で終わった領土拡大と、ローマのように何世紀も続いたヘゲモニー。単純に領土や人口を比較しても、影響度の比較にはならないかもしれません。
アッバース朝やウマイヤ朝が広域を支配していたとはいえ1000年以上も昔のことだし、石油がなかったら、アラビア語は国連公用語になっていないんじゃないかな、とか。
いろんなこと考えながら表を見比べるのはすごく面白い。
最初に見たのが英語版だったので、今回は主に英語版を引用しましたが、日本語版をはじめ、他の言語版を見ると、英語版とは帝国の定義も数値データも違っています。
たとえばローマ帝国の最大版図は英語版では500万平方キロメートルなのに対し、日本語版では650万平方キロメートルと、30%も違います。
スペイン語版では、領土が宗主国から連続しているか、離れているかに注目しています。この項目でソートしてみると、昔型の帝国と近代の植民地政策の違いが一目瞭然。宗主国からポーンと離れたところに領土があるのは概して大航海時代以降の植民地政策であることがわかります。
・・・って、見比べていると、いつまでたっても見終わらない~!
この辺でやめておきます。