言語を学ぶとき、あまり「難しい、難しい」と言わない方がいい、という意見があります。「○○語は難しい」という先入観を自分に植えつけてしまうからだそうです。
一理ある、と思います。自分だけでなく、人にも先入観を与えてしまうから、良い子は言わない方がいい。
でもわたしは良い子ではない。だからつい言ってしまうのです。「難しい」って。
だって本当に難しいんだもの。
そして、「言うな」と言われると、ますます言いたくなる。王様の耳はロバの耳。
ロシア語は難しい
ロシア語は難しい
ロシア語は難しいーーー!!
もうこうなったらロシア語の何が難しいのか、どこが難しいのか、今日は徹底的に追求します!
ロシア語の難しいところ・易しいところ
まずはいつものジェネラルチェックから。
青は比較的平易な特徴、赤が厄介な特徴です。
- 文字
- 33文字(キリル文字)
- 単語の切れ目が容易にわかる
- 発音
- 文字と音が一対一対応
- 難しい発音の子音がいくつかある
- 母音は10種類あるが、発音は難しくない
- 声調はないが、アクセントの位置に規則がない
- 格変化
- 格変化は6つで、例外が多い
- 動詞活用
- 一つの動詞に完了体と未完了体があり活用は複雑
- 名詞
- それぞれ格変化が異なる性が3種類
- 複数形の作り方はまあまあ規則的
赤が5つ。青が5つ。
ちなみにスペイン語は赤が1つ。アラビア語、英語は3つ、トルコ語は5つ。タイ語6つです。(過去記事「トルコ語は簡単?」「アラビア語は難しい?」参照)
文字がキリル文字であるにもかかわらず青になっているのは、子音字だけで42文字あるタイ文字など、固有の文字を使う言語を基準にしているからです。この基準でいくと、アラビア文字ですら青。でもラテン文字ではないというのはそれだけでハードルが高く、文字の難しさは意外と後を引く。ここは基準を変え、ラテン文字と漢字以外は赤にしてもいいかも、と最近思っています。
あと青か赤かで迷ったのが、母音の発音。自分で発音するのはそれほどでもありませんが、ыとиは聴き分けが困難。быть(存在する)とбить(殴る)なんて音は似ているのに意味はえらい違い。
ロシア語の単語は覚えにくい
しかし上のチェックではまだまだロシア語の真の怖さは示せていない気がします。
今わたしが直面しているロシア語の一番辛いところは、単語が覚えられないこと。あまりに覚えられないので、最初は「トシのせいで覚えが悪くなってきたのか?」と思いました。でもどうもそうではなさそう。最近は「ロシア語だから」覚えにくいのでは、という気がしています。
動詞が覚えにくいのはどの言語にも共通しているので仕方がないとしても、ロシア語は名詞までが覚えにくい。
ではロシア語単語はなぜ覚えにくいか。
- やたらと長い単語が多い
- 格変化で語尾がコロコロ変わる
- アクセントの位置に規則がない
- 発音が難しい
- キリル文字で読みにくい
- 造語法がはっきりしない
一つの単語に覚えるべきことが多すぎる
1から3までは、一つの単語に覚えるべきことがたくさんありすぎる難しさです。
とにかくやたらと長い単語が多い。たかが「現代の」というだけでсовременный。「教師」がпреподаватель。いちいち長すぎ。しかも似た単語が多い。прで始まる単語がものすごく多い。
単数・複数合わせると12の格変化。つまり一つ単語を覚えるということは、この12の変化を全て把握するということなわけで・・・。しかも女性名詞なら対格の形が、男性名詞だと与格。そういうのが無理!
動詞にも完了体と不完了体があるから、それだけでも通常の二倍の手間です。
そして、重荷の上の藁一本となるのが、アクセントの位置。アクセントが重要にも関わらず、その位置が気まぐれ。しかも格によっても変わる。なので個別に覚えなくてはならない。
どう覚えていいのか分からない
4から6までは、それをどう覚えていいのか分からないという問題。
発音が難しいので、「口で言って覚える」のが難しい。
キリル文字なので、「目で読んで覚える」のも難しい。
様々な言語の影響を少しずつ受けているからか、造語法も見えにくい。
ロシア語は規則よりも慣習の影響が大きい。「大言語になればなるほど簡略化してくる」というのがこれまでわたしの自論でしたが、うーむ、自信がなくなってきました。
ロシア語の例外は変化形が多すぎることに起因している気がします。変化が多すぎるがゆえに、異なる単語が変化させるとバッティングしがちで、その混同を防ぐため、スペルやアクセントの位置を変えて区別せざるを得ないのではないかと。
たとえばпеть(歌う)の命令形がなぜпейではなくпойなのか。それはпить(飲む)の命令形がпейだからではないか。
また、完了体と不完了体の違いが微妙な単語はたいていアクセントの位置が異なります。たとえばвыбиратьとвыбрать(選ぶの不完了体と完了体)。ыが入っているかいないかという微妙な違いなものだから、アクセントの位置で差別化を図っているのでは?? ・・・そう思うしかない理不尽な例がロシア語には溢れています。
もしかしてロシア語って、「難しい」というより、「メンドクサイ」言語なのでは??
規則に従っておけばラクなのに、わざわざ不規則だからイラッとする。
その点、ちょっと英語に似てる気がします。理屈をこねてもダメ。理不尽でもなんでも覚えるしかない。
文法がちょっとやそっと複雑でも、それが確実に適用されるなら我慢もしようが、それに当てはまらない場合が多いところが理不尽すぎます(涙)
ロシア語にはお仲間がいっぱい
・・・と、さんざ悪態をつきましたが、ロシア語には一つ、一つ朗報があります。それは一般的にロシア語は難しいと言われていることです。
ロンブ・カトーの「わたしの外国語学習法」(米原万理訳)にもこうあります。
ロシア語は、多種多様な円天井や突起部、正面装飾やアーチ型の壁などから成る、複雑で調和のとれた密度の高い建造物、さしずめ大寺院といったところでしょう。
ロンブ・カトー『わたしの外国語学習法』(米原万理訳)p.36
ちなみにイタリア語は以下のように形容されています。
その飾り気のなさを誇りとするイタリア語の方は、それに較べると、ずっと単純な造りになっていて、その建築原理もより簡潔です。
ロンブ・カトー『わたしの外国語学習法』(米原万理訳)p.36
ロシア語学習者のブログで「ロシア語は難しい」と書いてあるのを読むと、「ああ、自分だけじゃないんだ」と安心します。
トルコ語の入門テキストのはしがきの定番は「トルコ語は日本人にとっては学びやすい言語です」でした。本を書かれた先生方はさして苦労せずに習得されたのでしょう。
トルコ語の場合は、学習者のブログがそもそもあまりないので、他の学習者がどう思っているかは分かりませんが、苦労しているのが自分だけのような気がして、思えば孤独な日々でした。
そういう意味ではロシア語は苦労しているお仲間がたくさんいると思うと、それだけでもずいぶん気がラクです。
未来は明るいと思うことにする
言語というのは、よく使われる語彙ほど慣習が強く、使用頻度が低くなるにつれ、規則的になっていく傾向があります。規則的でなかったら、ネイティブにも覚えられないからです。
つまり、理不尽なのは最初だけ。最初を乗り越えれば、だんだんラクになっていくはず。
・・・と期待することにします。
ロシア語は、英語やスペイン語のようにシンプルでもなければ、正則アラビア語やドイツ語のように規則的でもない。そこが難しさの原因だと思います。
でもロシア語は、全世界で2億6000万人もの話者を擁する大言語。それほどの数の人が使えているんだから、きっとわたしにも使えるようになる日がくるはず!
・・・と信じて、頑張ります!