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新しい趣味の始め方

 新しい趣味を始めました。「お絵描き」です。

 この新しい趣味を始めるのは簡単ではありませんでした。最初の一歩の踏み出し方が分からなかったからです。

 でもついに始められた。長く続けられるかどうかはまだ分かりませんが、「始め半分」とも言うし、今は「はじめの一歩」を踏み出せた達成感でいっぱいです。

 新しい趣味を始めるにあたって、外国語学習の経験と環境が非常に有力な助けとなったので、今日はそのことについて書きます。

きっかけ

 老後に向け、新しい趣味を始めたいと最初に思ったのは3年前です。コロナで外出できなかったのを機会にレゴにハマり、作ることの楽しさを知りました。レゴ熱が一段落したあと、今度は別の形で何かを作りたいと思ったのです。でもその「何か」が分かりませんでした。お人形作り、陶芸、洋裁、料理、刺繍、フラワーアレンジメント、カリグラフィー・・・。いろいろ思いつきましたが、どれもいまいちしっくりきませんでした。

 一年くらい前になると、たぶん自分は絵が描きたいんじゃないかとぼんやり見えてきましたが、絵といっても、それがイラストなのか絵画なのか、何を描くのか、画材は何を使うのか、全く分かりませんでした。

 ところが2週間ほど前のこと、どんな絵が描きたいかが、ある日突然分かったのです。

 とある絵画ブログに出会ったのがきっかけでした。ブログ主さんは70代の男性で、旅先でご自分が撮った写真を元に絵に描いていらっしゃる。旅の印象を絵画という形で残しておきたくて、15年ほど前に油彩を始められたそうです。

 その絵画が素敵で素敵で・・・! わたしもこういう絵が描きたい・・・!という気持ちがうわーっと沸きあがりました。わたしも、海外で自分が見た景色を描きたい。

 海外で絵を描きたいと思ったことは今までにもありましたが、人前でスケッチブックを広げるなんて、そんなの絶対無理!と諦めていました。でも撮ってきた写真を元にして家で描くのなら、わたしにもできるかも・・・?

 でも一体何から始めれば・・・。始めるために何が必要なのかも分からないし、どんな風に描けばいいのかも分からない。「旅の印象を絵に描きたい!」と決まったものの、最初の一歩をどう踏み出していいのか分かりませんでした。 

自分のブログは役に立つ

 わたしは何か迷ったり困ったりすると、今の状況や気持ちをブログに書き殴ります。思考を言語化すると思考が整理され、得てして解決の糸口が見つかるからです。

 今回もブログに書き始めました。便宜的に「はじめの一歩が踏み出せない」というタイトルをつけて。

 でもこのタイトル、何か見覚えがある。そこで「はじめの一歩」でブログ検索をかけたら、やっぱりありました。

 そしてなんと、わたしが探していた答えは、ここに全部書いてありました! 自分の過去記事、参考になるわー!

  1. ちょっと動いて感触を見る
  2. 不安要素をつきとめる
  3. 人を頼るのも行動のうち
  4. いきなり高価な道具を買い込まない

 どれも内心分かっていたこと。でも行動を起こすのが億劫で、なんとなくグズグズしていたんだな、と気づきました。

 でも過去の自分が教えてくれた。この通りにやってみよう、と決めました。

ちょっと動いて感触を見る

 思い立ったが吉日、まずは何でもいいからとりあえずお絵描きをしてみることにしました。たまたまテーブルの上に置きっぱなしになっていた図鑑の絵を色鉛筆で模写してみることに。

エジプトファラオ像(絵で見る古代世界地図より)

 最初から複雑なことに取り掛かると挫折するので、なるべくシンプルに、と思って茶一色で描きました。

 たぶんこれを描いていたのは10~20分くらいだったと思います。その10~20分が長かった・・・! 描きながらずーっと不安で、「ここはこうじゃない、どう描けばいいんだろう? 下手くそ、下手くそ、下手くそーーー!」とずーーーっと考えながら描いていた。だから嫌で嫌で、途中でやめちゃった。

 この不安は一体なんなのでしょう?

不安要素をつきとめる

 曲りなりにもいっぺん描いてみてわかりました。なぜ最初の一歩が踏み出せなかったのか。何が不安なのか。

 それはやり方が分からないということ。何に注目し、どこに気をつけ、どう描けばいいのか分からない。要するに下手ってこと。下手だからやりたくない。自分が下手なのを目の当たりにするのが怖いのです。

 最初からうまく描けるわけはない。そんなこと、理屈では分かっています。でも感情的には、自分の稚拙さを見せつけられるのは、ものすごーく嫌。分からないこと、できないことを無理やりやるのは、ものすごく怖い。

 外国語で人に話しかけるときと同じ。わたしは割と人見知りしないほうだし、間違いを怖れるほうでもない。それでも気軽に誰にでも話しかけられるわけではない。けっこう勇気を振り絞っています。日本人だって見知らぬ人に話しかけるのはかなり億劫。まして外国語。それは「間違えたら恥ずかしい」なんて生易しいレベルではなく、「できないことを無理やりやる不安と恐怖」に近い。

人を頼るのも行動のうち

 この不安と恐怖に打ち勝つのはまだ無理。でもだからって、何もしないのはじれったい。

 そこで傷つかなくて済むことを探しました。

 具体的には

  1. 動画視聴
  2. 人に相談

 どちらも自分からは何もしない。他者に頼るだけの「受け身型の行動」と言えましょう。

動画視聴

 触発された絵画が油彩だったので、当初、頭の中は油彩でいっぱい。DMM英会話でデイリーニュースを選ぶときも、気づけば検索窓に「Oil Painting」と打ち込んでいました。

 そこでひっかかってきた記事がこれ:

 20世紀のアメリカで人気番組だった「ボブの絵画教室」の紹介でした。わたしは講師のボブ・ロスという画家を知りませんでしたが、相当有名な人だそうで、その時お願いした先生はこの番組の大ファンだそう。「YouTubeで見られるから探してごらん」というので、検索をかけると、公式チャンネルがほとんどの動画を無料配信していました。

Bob Ross – One Hour Special – The Grandeur of Summer

 ボブ・ロスの動画を見て気づいたのは「人が描いているところを見るだけでも、肥やしになる」こと。外国語でいえば、リスニングをしているようなもの。会話をしなくても、学習言語で映画やドラマを視聴すれば、リスニングのトレーニングになりますよね。

 不安や恐怖に打ち勝つ勇気が出ない今、無理をせず、まずは気楽な「リスニング」から入ろうと思い、絵の描き方講座を浴びるように見ました。

人に相談

 これも相手はDMM英会話の先生方。「絵を描きたいけど、何から始めたらいいのか分からない」と打ち明けました。

 驚いたのは、いつもの女性の先生に「絵が描きたいんだけど」というと「わたしのスケッチブック見る?」と見せてくれたこと。これにはびっくり。この先生とは10年近く400回以上会っているけれど、絵を描く人とは知らなかったからです。

 「先生も絵を描くんだ?!」と驚くと、「えっ、知っててこの話を振ってきたんじゃないの? プロフィール欄にも『趣味:絵画』って書いてあるでしょうが」。いやー、今更プロフィールなんて見ないから、気づかなかったわ。

 「難しいものを描こうとすると挫折するから、まずは非常にシンプルで簡単なものから挑戦することをお勧めするわ。あと、誰かの絵や写真の模写から始めること。一から自分で描くのは難しいから」とのこと。

 そこで先日描いたファラオを見せ「わたしもシンプルな模写から始めたのよ。でもそれでも難しくてうまく描けなくて」というと「いやいや、それ全然シンプルでも簡単でもないから! 単色で描くっていうのは色でごまかせないから難易度が高いのよ」ですと。えっ、そうなのかー。


 もう一人は最近知り合った男性の先生。「ワッツニュー?」と訊かれたので「お絵描きを始めることにした」と言うと、「奇遇だねえ! 僕も昨年絵を始めたんだ!」。ええー! ビックリ! 立て続けになんという偶然!

 わたしが「模写をしてみたんだけど、うまく描けなくて『ここはこうじゃない、下手くそ、下手くそ、下手くそーーー!』ってずーっと自分を責めてた」と言うと「分かる。僕もそうだから。いつも心の中で、下手くそ、下手くそ、と自分にイライラしながら描いている」。

 この先生もやはりご自分の絵を見せてくれました。

 ・・・はい? どこが下手?! めっちゃ上手いやん! ほとんどプロの域!

 「とても始めたばかりには見えない」というと「まあ絵の基礎を子どものころ親に叩き込まれたからね、全くの初心者ではないかも」。

 「親父は日曜画家で、叔父は職業画家。僕も将来画家になることを嘱望されて絵の手ほどきを受けた。でも下手だ、下手だ、と言われ、嫌になって5歳のとき絵をやめてしまった。親父も叔父も、子どもに嘘をつくことを良しとしない人たちだったんだね」と笑う先生。

 ・・・五歳で絵筆を折るって・・・( ̄▽ ̄;) そんなトラウマ?を持ちつつ、また絵を再開した先生、すごい・・・! それに比べたら、わたしは気楽だなあ。

 もう一つ、この先生と話して良かったのは、使う画材が固まったことです。

 「油彩は匂いが嫌。揃える道具が多くて場所も食うし、お金もかかる。水彩は手軽だけど難しい。透明なので、失敗を上塗りでごまかせない。それに水で紙がヨレるのが嫌」というと、「確かに油彩は敷居が高いよね。でも水彩は、グワッシュなら上塗り可能。僕も紙のシワは許せないんだけど、昨年YouTubeで裏技を知ってさ。紙を丸ごと水に浸して、水から引き揚げたら平らなものにテープで固定して一昼夜、風のない屋内で乾かす。そうすると何度水をつけて筆でこすってもヨレない紙の出来上がり。一度試してみたけど、ほんとにヨレないよ」

 えー! マジすかー!

 ・・・でも。「グワッシュなら上塗り可能」「ヨレない紙も制作可能」と先生が論破してくれてなお水彩には心が動かない自分を発見し、水彩は好みじゃないんだ、と悟りました。

いきなり高価な道具を買い込まない

 ボブ・ロスの絵画教室をきっかけに、様々なYouTube動画を見まくった結果、やはりわたしは油彩の仕上がりが好き、でも油絵具は敷居が高いため、油彩っぽい仕上がりが可能で、且つ扱いやすいオイルパステルを使いたい気持ちが固まってきました。

 でもここでオイルパステルを一式買うのは失敗のもと。道具を先に揃えてしまうと、買ったことに満足してしまい、結局使わないということになりがちだからです。

 語学だって、まだ軌道に乗っていない言語の教材に先行投資し、何年も押し入れにしまいっぱなし、という失敗を何度繰り返してきたことか。ドイツ語・・・韓国語・・・💦

 道具を揃えるのは、ある程度軌道に乗ってから

 でも道具を持たずして、どうやって軌道に乗せるのか。

 そこで、オイルパステルに似た手持ちの画材で描いてみることにしました。クレヨンです。クレヨンとオイルパステルの違いは硬さだけ。扱い方はほぼ同じだからです。

クレヨン画:木とリンゴ

 いずれも柴崎春通先生のYouTubeチャンネルの描き方動画を見ながら描きました。先生が描くのと同じペース・手順で描いたら、不安も迷いもなく、気分的にとても楽で、楽しく描くことができました。

 ついでに手持ちの画材で水彩とパステルも試してみました。

 他の画材も試してみたことで、やはりわたしはクレヨン(≒オイルパステル)が好き、と確認できました。

はじめの一歩が踏み出せた!

 最後に「はじめの一歩」の卒業制作として、自由制作をしてみました(自由といっても模写)。

クレヨン画:サルデーニャ島のCapo Ferro灯台

 パソコンのスリープ画面(Windows spotlight)を見ながら描きました。4時間くらいかかりました。

 描いているときは、不安でいっぱいでした。一体いつ描き上がるのか。そもそも完成するのか。どこを描けばいいのか。雲ってどう描くの? 海って? 岩って?? 本当ーーーーに不安! 分からないことだらけ。リンゴと木しか描いたことないのに、いきなりこんな景色とか、無謀だったかも?と後悔しつつ、とにかく途中で投げ出さないことだけを目標に頑張りました。

 出来はともかく、最後まで描き切り、無事「はじめの一歩」を踏み出すことができて、今は達成感でいっぱいです。

ハマれない ≠ 向いていない

 新しい言語を始めるときはいつもいとも簡単にホイッとハマれるので、新しい趣味も簡単に始められるかと思いきや、意外と大変でした。

 でも考えてみたら言語学習だって、子どもの頃から多大な興味があったのに、ハマったのは40代になってから。実に20年以上の歳月を要しているわけです。オンライン外国語会話だって、興味を持ち始めてからお試しレッスンを受けるまで1~2年かかりました。「始める」って意外に大変なことなのですね。

 過去の事例を見て分かることは、「ハマれない」からといって「向いていない」わけではない。外国語学習はもう20年近く続いていますし、オンライン英会話も10年以上続いていますから。

 ただ、新しいことを始めるには、不安や恐怖を乗り越える多大なエネルギーが必要。だから「長年温めてきた夢」に加え、一時的な「熱意のほとばしり」があると波に乗りやすい。今回は「描きたい!」という気持ちがうわーーっと盛り上がったので、今がチャンス!と思い一念発起しました。

 今回は外国語学習で培った経験が、お絵描きを始めることに役立ちました。いつか逆に、お絵描きで培った経験が、外国語学習に役立つ日が来るかもしれません。

 

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