遅ればせながら、アナ雪にハマりました。夏のさなか、Let it goの雪嵐が吹き荒れています。
ハマりやすい体質とはいえ、今回のハマりは久々にでかいぞ。ここ3日間でLet it goの再生回数のべ数百回。動画の見すぎでしまいにはパソコンがハングるほど。もうビョーキ^^;。
ふだん、あんまり音楽って聴かないんですけどね。静寂を愛する女(?)なので。
でももうダメだ。Let it goを聴かないと生きてけない・・・。
「なんで今になって?」というのが、下の娘の言い分。「公式マルチ言語バージョンが公開されたとき、これはママが絶対ハマるだろうと思って教えてやったのに、そんときは全然ハマらなかったクセして」と憤懣やるかたなき表情。・・・ごめんちゃい><。
マルチ言語バージョンに限らず、歌だけならいろんな言語で以前から見ていたんですけどね。でもたまに見る程度で、ハマる、ってほどでもなかった。
ドーハで娘に買ってやった英語のノベライズも読みましたが、それでもハマるほどではなかった。
そして今回、DVDを購入。娘たちが欲しがっていたので。それに楽天ブックスで2割引だったし。しかもちょうど楽天ポイントが溜まってて、持ち出しなしで買えたし^^。
・・・で、これも最初日本語で見たときは、特にハマるほどでもなかった。
でも二度目、英語で見たら、ほぼ瞬殺でした。突如としてLet it goライフが始まってしまった。
たぶん物語を知ったことで、この歌を歌うエルサ(雪の女王)に深く共感を覚えたからだと思う。
実はノベライズを読んだときには、アナの視点で読んでいました。
Of course, none of this would have happened if she’d just told me her secret
(エルサもエルサよね、前もって話しておいてくれてれば、こんなことにはならなかったのに)
というアナのぼやき(p.54)に、「そうだー、そうだー」と共感していたよーな・・・。
でも映画は、気づけばエルサの視点で観ていました。一度ならず二度までも無邪気にエルサを追い詰めるアナにイラッとした。なんだよ、この暴力的なまでに無神経な脳天気さはっ!! これだから天然ポジティブなヤツって嫌いっ!
なんの根拠もなく
Sure you can (エルサなら出来るって)
とか言うなし!!
文字は理性に訴えますが、映像は理屈ヌキに直接感情に語りかけてくる。映画はエルサの気持ちが分かりすぎ、その痛みとシンクロした上で聞いた英語のLet it goの衝撃は大きかったです。
日本語の「ありのままで」は、エルサの痛み、追い詰められた者の「窮鼠ネコを噛む」感じが全く伝わってこない。
なんていうかな、歌詞がきれいすぎる気がする。ジレンマや葛藤など、後ろ暗い部分をすっかり洗い流し、あー、すっきり~!って感じ。ちょっと考え方を変えたら、すっかり解決しちゃったわ、みたいな。
でも元の英語の歌詞はそうじゃない。追い詰められた末のギリギリの開き直り。その突き刺すような冷たさが伝わってくる。
だから英語で見て初めて、この歌に夢中になったのだと思います。ただありのままでいるだけなら、文科省ご推薦のいい子とどこも変わらない。わたしは英語の歌詞のいい子じゃない部分に共感したのです。
No right, no wrong, no rules for me
(善悪もルールも、わたしには関係ない)
Turn away and slam the door. I don’t care what they’re going to say
(きびすを返してピシャリとドアを閉じ、誰が何を言おうが、気にしない)
すべてのものと引き換えに唯一その手に残った自由。そこに共感した。ダークな部分があるからこそ、自由が持つ明るさ、強さがよけいにまばゆく感じられた。
それでもまだ、英語だけ聞いていたときは、理解が到らなかった部分がたくさんあります。他の言語で聴いて始めて気づいたことがたくさんある。
たとえば
It’s funny how some distance makes everything seem small
(遠くから見ると、すべてが小さく見える)
という部分、わたし最初、これはただの情景描写だと思っていました。山の上から遠くに小さく見えるアレンデールの街を頭に思い描いていた。
ところがアラビア語の歌詞だと、ここは
المشكلات ستصغر لو نراها من بعيد
(遠くから見ると、悩みは瑣末になる)
と、エルサの心境描写になっている。それで英語もただ情景描写ではなく、エルサの心境とシンクロしているんだ、と気づきました。
英語の原義を曖昧にぼかす方向の日本語訳とは逆に、アラビア語は全体的に、英語の歌詞よりもさらにはっきり歌い上げる。英語がただ「they(彼ら)」と呼ぶものも、アラビア語では「شعبك (汝(エルサ)の統べる民)」とはっきり示されています。
ها أنا الآن أقف أمام الناس
(わたしはここに人々と対峙する)
これは英語の歌詞にはない部分。アラビア語の歌詞からは孤高の女王の威厳が感じられる。
また、最後の
The cold never bother me anyway
(寒さなど、わたしにはちっとも苦にならない)
という部分は各言語、翻訳者の腕の見せ所のよう。
トルコ語:
Soğuk neyse benı hiç üzmedi
(寒さなど、わたしにはちっとも苦にならない)
アラビア語:
الثلج لا يشعرني باكتئاب
(雪はわたしに苦痛を感じさせない)
この辺は英語版に忠実。
中南米スペイン語:
El frio es parte también de mí
(寒さもわたしの一部)
わたしは雪の女王。だから寒くない、ってか?
フランス語:
Le froid est pour moi le prix de la liberté
(この寒さは自由の代償)
フランス語のこの部分はいくらなんでも長すぎ、音的には詰め込みすぎな感じを受けるんですが、この歌詞はとても好き。このフランス語の歌詞を知って初めて、この歌が全体的に理解できたような気がします。
日本語:
少しも寒くないわ
これ、最初は本当に、彼女は寒くないんだと思っていたんです。なにしろ雪の女王だもの、たぶん物理的な寒さなど感じないんだろう、と単純に。
でもフランス語訳を知ってからというもの、「ああ、これは強がりなんだ」と気づいた。確かに物理的な寒さは感じないかもしれない。でも孤独の圧倒的な寂しさ、寒さばかりは、雪の女王といえども、いかんともしがたい。孤独と引き換えに得た自由。だからこそこの歌にはこんなにものすごいパワーを感じるんだ、って。
ちなみに、よく聞いている6言語(日本語、英語、フランス語、中南米スペイン語、トルコ語、アラビア語)のうちで一番気に入っているのはフランス語版です。まず音が美しい。フランス語っていうのは、もともと音楽に乗せるのに適した言語なのかなあ、と思う。
またサビの部分で
Let it go let it go
のように同じ言葉を繰り返す言語が多い中、
Libérée Délivrée
と言い換えるのもフランス語らしい。
歌詞も好き。特に
J’ai laissée mon enfance en été Perdue dans l’hiver
(幼き日々を夏に残し、わたしは冬に紛れ込む)
というところ。韻を踏む関係か、けっこう歌詞が英語と違います。
トルコ語は他の言語に比べ英語に忠実。語順的に韻を踏むのがラクだからでしょう。人称さえ揃えればトルコ語はおのずと語尾が揃う。また三人称命令形の簡便さがすがすがしい。英語の「Don’t let them see」はトルコ語なら「Görmesinler」とたったの一語。ま、音節の数は同じですが。
アラビア語はまるでテキストの音読みたいに生真面目なフスハで、教材としてはもってこい。ただこれ、ネイティブが聴いて感情移入できるんだろうか?と思わないでもない。
南米スペイン語は日本語版同様、物語中の歌(Carmen Sarahi)とエンドソング(Martina Stoessel)と二種類あるんですが(※Libre soyの部分は同じだけど、少し歌詞も違う)、わたしは劇中の歌のほうがスペイン語らしくはっきりしてて好きです。
いろんな言語で聞くことで、ますますこの曲が好きになると同時に、この曲を聞くことで、それぞれの言語がますます好きになっていく。ここしばらく英語にハマっていて、それ以外は完全放置でしたが、Let it goで一気に多言語に戻ってきました。
現在この曲は公式バージョンだけでも42言語でカバーされていて、数だけ見るとすごい感じがしますが、内訳を見ると、西洋言語に極端に偏っていて、言うても西洋文化だなあ、と思います。
西洋言語は、カタルーニャ語、フラマン語、スロバキヤ語など、他の言語でも鑑賞可能じゃなかろうか?と思える言語でもカバーされている一方、アジアの言語では、話者が一億を超える大言語ですらカバーされていない。ヒンディ語やベンガル語、タミル語などインドの大言語が一つもないし、ウルドゥー語、インドネシア語もない(※マレー語はある)。
でもその分、自作の翻訳で歌い、youtubeなどで発表している人がたくさんいるのが素敵。たとえばインドネシア語。
また、わたしが気に入っているのが、日本のご当地バージョンです。
- 生まれてはじめてリプライズ 大阪弁ver アナと雪の女王
- とびら開けて in 博多 博多弁ver アナと雪の女王 完全版 Love Is An Open Door
- 【青森・八戸】雪だるまつくろう 八戸弁(南部弁)ver 【アナと雪の女王】
- 【沖縄方言】生まれてはじめてリプライズ【アナ雪】
特に最後のウチナーグチにビックリ。これ、字幕がなかったらたぶん全く理解できない。日本語であるということに気づけるかどうか、というライン。共通語と同じなのは漢語だけ。基本語彙がまるで違う。
しかし、みんな歌うまいなあ~~!!
あと、気に入っているのが、コレ↓
「嵐に激怒してみましょう」て・・・。何度見ても可笑しい。これだけでももう10回以上見てます(笑)。
・・・というわけで、めくるめく多言語の世界が、ここ数日一気に戻ってきたわけですが、やはり総合的に見れば英語で見るのが一番好きです。特にFor The First Time in Foreverは、もう絶対英語が一番! アナのふっくらとして明るい声が好き。特にFとRの発音。この歌のサビがFで頭韻を踏んでいることに気づいたのはこのふっくらとしたFの発音のおかげです。
あと、Let it goは、映画本編の歌よりも気に入っているものがあります。
- Let It Go – Frozen – Alex Boyé (Africanized Tribal Cover) Ft. One Voice Children’s Choir (with Lexi Walker in the Ice Castles in Midway, Utah)
- Let It Go – Male Vocal Cover – Frozen (Soundtrack)
どちらも本当ーーーーーーに、好き!! 魂を丸ごとぶつけてくるようなそのパワー。背筋が思わずゾクッとするようなその歌声は、片足を踏み出すだけで大地を凍らせる雪の女王の強大な力とシンクロし、猛烈な勢いで心に迫ってくる。この歌を聴いていると、自分にも氷の城を立ち上げられる力があるような、そんな気がしてくる。
ここに上げた動画はすべてすでに定番のようで、見つけて大喜びして娘たちに見せたら、下の娘は全部知っていて「何をいまさら」って感じでハナで笑われてしまった;;
でもわたしの中で、アナ雪はまだ始まったばかり。まだしばらくこの雪嵐は続きそうです。
8/23追記:
男の子(Anson)の王子さま度がすごい!! 大好き♪