ジョージアでグルジア語を話した経験を書きます。
覚えていったフレーズ
グルジア語は、ジョージア行きを決めた1か月半前に始めたばかり。言えるのは20くらいのフレーズに20くらいの単語だけでした。覚えたフレーズと単語の詳細は前回の記事に書きました。
現地で使ったフレーズ
入国審査
最初にジョージア人に会ったのは、経由地からトビリシに向かう飛行機の中。隣の席の女性がジョージア人で、向こうから英語で話しかけてくれました。少し話をしましたが、そのときはまだグルジア語を話す勇気は出ませんでした。
最初にグルジア語を使ったのは入国審査です。ガマルジョバ(こんにちは)から始め、「観光ですか」だか何だか英語で質問され、頑張って ディアフ(はい)とグルジア語で答えると、ハンサムな審査官がにっこり。そして審査が終わるとグルジア語でナフワンディス(さようなら)と返ってきたので、わたしもマドロバ、ナフワンディス(ありがとう、さようなら)と返答しました。覚えたてのグルジア語が通じて嬉しかったです。
この「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」の3点セットはその後もよく使いました。現地語のフレーズを3つだけ覚えていくとしたら、このセットが一番使うチャンスが多いと思う。尤も、これくらいの現地語を覚えていく旅行者は珍しくないのか、驚かれるとか喜ばれるということはなく、「あー、はいはい」という感じの反応は否めませんでした。
レストラン
次は翌朝小さなレストランでメニューを指さし、მინდა ეს და ეს.(これとこれが欲しいです)と言ってみました。あとで水が欲しくなったので、უკაცრავად.(すみません)と給仕さんを呼び止め、 წყალი თუ შეიძლება.(水をください)と言いました。「水」という単語は放出音の連続で難しい。ちゃんと水が出てきて嬉しくなりました。ანგარიში თუ შეიძლება.(お会計お願いします)もグルジア語で言いました。素朴な地元のレストランだったので、特別褒められもしなければ、ニッコリもされませんでしたが、ちゃんと通じて、用を足すことができました。
გემრიელია!(美味しいです)はレストランへ行くたびに言いましたが、いつも口が回りませんでした。ゲムリエリアの最初の「リ」は R、次の「リ」は L というところが難しいのです。でもこう言うと、ウェイターさんがたいていにっこりしてくれるので、頑張って言う甲斐は十分ありました。
レストランで食べきれなかったときは、კონტეინერი თუ შეიძლება.(持ち帰り用容器をください)と言い、容器に詰めてもらって持ち帰りました。持ち帰り用の容器を表す container という英語は、ロシア語で контейнер、グルジア語で კონტეინერი 。そのまんまの借用語で何の面白みもありませんが、実利的。ジョージアの先生にあらかじめ尋ねておいてよかったです。
フリーマーケット
グルジア語で一番長く会話できたのはフリーマーケットです。マグネットを一つ買い、მადლობა.(ありがとう)と言うと「カルトゥリなんちゃら~」と聞こえたので、「グルジア語が話せるの?」と言われているのかなと思い、 ქართული კარგად არ ვიცი.(グルジア語はあまりよく分かりません)ცოტა ვიცი.(ちょっとだけ分かります)と言うとめっちゃウケました。「あ~、ცოტა(ちょっぴり)なのね~」と復唱してくれたのが嬉しかった。そのあとまた何か聞かれ、分からなかったので ვერ გავიგე.(分かりません)と言うと、ロシア語でОткуда вы(どこから来たの?)と言い直してくれたので、იაპონელი ვარ.(日本人です)と言ったら、「あら、ロシア語も分かるの?!」とさらにウケました^^。
温泉
面白かったのが、温泉風呂で垢すりをしてもらったとき。カタコトの英語で「仰向けになって」などと指示されていたのですが、垢すりが終わってお金を渡すとき、ロシア語でスパシーバ(ありがとう)といったら、目を大きく見開き、驚いた様子。さらにチップを渡しながら ეს თქვენია(これ、あなたに)とグルジア語で言うと、ぎょっとした様子で、スパシーバ!と言うが早いか、逃げるようにササーーッと部屋から出て行ってしまいました。・・・なんだろ、「頑張って英語使う必要なかったじゃん!」と思ったのかなあ? そういうことってありますよね。日本語が通じないと思って外国人に一生懸命英語で話したら、実は日本語の話せる人だったと知り、頑張った自分が妙に恥ずかしくなる、みたいな。
観光スポット
観光スポットでは、ツアーを売るキャッチセールスがよく話しかけてきました。たいてい英語、たまにロシア語でしたが、არ მინდა(要りません)とグルジア語で断りました。
ムタツミンダ山でお掃除のおばさんに უკაცრავად, ტუალეტი სად არის?(すいません、トイレはどこですか?)と尋ねたときは、Прямо и налево(まっすぐ行って左)とロシア語で答えが返ってきました。こちらもつられてロシア語でお礼を言い、用を足して帰ってくると Нашли?(見つかった?)とまたロシア語。それから二言三言会話を交わしましたがすべてロシア語で、わたしが最初に尋ねたのがグルジア語だったとは、おばさんは最後まで全く気付いていない様子でした。
教会
日曜日の午前中に教会へ行くと、お説教が行われていました。耳を澄ますと、いくつか知っている単語が聞き取れました。ძალიან(とても)、შენ(あなた)、წმინდა(聖)などです。お説教の内容はさっぱり分かりませんが、聞き取れる単語が少しあるだけでも嬉しいものです。グルジア語はもう「全く知らない言語」ではない気がしました。
教会ではパンとワインが配られていて、わたしも頂いてみました。いつもより丁寧に、გმადლობთ.(ありがとうございます)とお礼を言いました。
使わなかったフレーズ
覚えていったフレーズの中には、残念ながら一度も出番がなかったフレーズもありました。
まずはボディシ(ごめんなさい)。これは謝る場面がなかったので使いませんでした。「お元気ですか?」「元気です」「初めまして」も使いませんでした。
借りたアパートの大家さんにもし会ったら言おうと思っていた რა კარგი ბინაა!(なんて素敵なアパートなのでしょう!)も、大家さんとは会わなかったので使いませんでした。
「乾杯!」は、スプラ(ジョージアの飲み会)に参加するチャンスがなかったので、自分でワインを飲むとき発していたのみ。
あと გაგიმარჯოს という、გამარჯობა(こんにちは)に対する返答があって、これも使いたかったのですが、向こうから「ガマルジョバ」と挨拶されることがあまりなく、一度しか使えませんでした。
覚えていった20くらいのうち、いまいち使うチャンスがなかったのが6~7。3分の1が使えなかったことになります。
覚えておけばよかったフレーズ
საიდან ხართ?(どこから来たの?)
何度も聞かれたので、自分では使わないかもしれませんが、覚えておけばよかったと思いました。
ინებეთ.(はい、どうぞ)
品物の代金やチップを渡すときにこれが言えると便利かなと思いました。
まとめ
不思議なもので、日本で覚えようしてもなかなかサッと出てこなかったフレーズが、現地で1,2度使っただけでパッと出てくるようになりました。
特にナフワンディス(さようなら)。同じアプリを使って覚えたからか、フィンランド語のナケミーン(さようなら)とチェコ語のナスフレダノウ(さようなら)と混同してしまい(どれもナ始まり)、オンラインレッスンでも咄嗟に出てこなかったのに、入国審査で一度使ったらもうそれだけで定着し、必要なときに言えるようになりました。不思議です。
あと、誰かが喋っているのを聞いて、それがグルジア語かどうか、あたりがつけられるようになったのは収穫でした。
グルジア語は「チャッ」とか「チッ」といった音が頻繁に聞こえます。あと კარგი(いいよ)と არა(いいえ)をよく言うみたいです。特に არა は2,3回続けて言うことも多く、よく耳にしました。日本語の「いやいや」とか「違う違う」って感じでしょうか。
滞在の途中からロシア語を使い始め、グルジア語を使う頻度は減りましたが、覚えていったフレーズの大半は一通り使えたので満足です。耳で聞いた通り、イントネーションもそのまま真似して言ったので、発音はイマイチでも、それなりにちゃんと通じたと思います。
ただ、外国人がジョージア語(グルジア語)をしゃべって、ジョージア人が喜ぶかどうかはちょっと微妙なところだと感じました。ロシア語を話したときの歓迎ぶりと比べると、ジョージア語は、面白がってはくれたと思うけれど、歓迎はどうかなあ、という気がするのです。ジョージア語って、ジョージア人のアイデンティティみたいなところがあるから、ジョージア人でもない人にやたらと喋ってほしくはないのかも・・・なーんて、考えすぎかなあ??
でもそんな感触を得られたのも、実際に喋ってみたから。いつも思いますが、本当に「少しだけ勉強したら勉強したで、それなりの収穫があるのが語学(by 舛添要一の6カ国語勉強法)」。語学って何十年もかかるイメージがありますが、文字を覚え、20程度のフレーズを覚えるだけなら1か月で済む。それでこんなに様々な体験ができるのだから、お得だと思います。
次回の記事では、ジョージアでロシア語をしゃべった経験について書きます。