中米の小国グアテマラに行ってきました。グアテマラは十数年前から行きたいと思いつづけてきた悲願の行先。ついに夢が叶いました。
悲願のグアテマラ
グアテマラに興味を持ったきっかけは、十数年前、女優・片桐はいりさんのエッセイ「グアテマラの弟」を読んだこと。そこに描かれていたスペイン語学校の様子が魅力的で「いつかスペイン語を学ぶときは絶対グアテマラの古都アンティグアのスペイン語学校で学びたい」と思いました。
その後しばらくして本当にスペイン語を始めることになったとき、日本にいながらにしてアンティグアのスペイン語学校のレッスンがオンラインで受けられることを知り、スパニッシモに入会。1年4カ月在籍しました。
スパニッシモの先生方は二つのスペイン語学校で共に働く仲間たち。ある先生と話していると後ろから別の先生が手を振ってくれたり、今日お祭りがあると聞いた翌日、別の先生が睡眠不足になっていたりと、このスカイプの窓の向こうで日々進行するグアテマラの社会がリアルに感じられ、ますます行きたくなりました。
でもグアテマラは遠い。直行便なんてあるはずもなく、どこで飛行機を乗り換えればいいのか分からないし、そもそも治安が心配。「昨日バスジャックに遭って有り金全部取られた」と先生が泣いていたこともありましたから。なのに先生方は「どうしてグアテマラに来ないの? 他の生徒さんはみんな日本から来てるよ」ときょとん。「ええーー! みんななんでそんなに旅慣れているのー? わたしには無理!」と思ったものです。
スパニッシモを休会してからもグアテマラへの思いは募り、一昨年の暮れ、ついにグアテマラ旅行の計画を立て始めました。結局昨年は手配が間に合わず断念しましたが、今回は半年前からグアテマラ行きへの手配を始め、DMM英会話のレッスンもほぼスペイン語一色に。着々と準備を進め、一つ一つ旅の障害をクリアするも、行きたい気持ちが強すぎて、実際に行き着くまで、本当に行かれるのか不安でした。
でも案ずるより産むが易し。現地では怖い思いをすることもなく無事行って帰ってきました。そんな今でも、実は全部夢だったんじゃないかと思うことがあります。このブログを書くことで、グアテマラへ行った体験が自分の中でしっくりくるといいなと思います。
言葉が通じる素晴らしさ
今回の旅ではスペイン語をできるだけ使おうと、宿はホームステイを選びました。アンティグアとパナハッチェルのお宅にそれぞれ6泊、4泊し、特にアンティグアの宿のホストファミリーとはスペイン語でたくさん話をしました。
昨年のスイス(ドイツ語)や一昨年のギリシャ(ギリシャ語)は言語の習熟度が低く「ちょっと使ってみる」くらいの感じでしたが、今回は通訳案内士まで習得したスペイン語。ほとんど英語は使わず、スペイン語だけで現地の人々と意思の疎通を交わしました。そもそもグアテマラって、観光客相手のレストラン以外、英語はほとんど通じない。なのでスペイン語でなんとかするしかないのです。
海外でこんなに外国語を使ったのは初めての経験で、10日間どっぷりスペイン語に浸かり、常にスペイン語で思考している状態。だから上達もしたと思います。よく「留学したからといって、必ずしも語学が上達するとは限らない」と言う人がいますが、わたしの体感では現地にいたら、言葉の上達は避けようがない気がします。
それにしても、現地の言語が話せるっていいですね。現地の言語が話せると、まず単純に1. 情報収集がラク。そして2. 現地の人と触れ合える。気を許してもらえるんですね。言葉が通じると分かると途端にホッとし、興味や親しみを持ってもらえる。言葉ができる恩恵を今までで最も享受した旅でした。
情報収集がラク
グアテマラは日本から遠い小国。そのため情報があまりありません。渡航前に頑張って英語やスペイン語で検索をかけまくりましたが、分からないことは本当に分からない。
特に知りたかったのは四旬節のイベント情報についてです。
アンティグアのセマナサンタ(イースターの聖週間)の宗教イベントは世界的に有名。これが見たくて、最初はセマナサンタ中のアンティグア滞在を計画したのですが、その後、セマナサンタに向けたイベントはイースターの46日前に始まる四旬節中も見られると知り、混雑が避けられ、宿や航空券も安い2月に前倒ししました。
ところが、まー情報が少ない、少ない。世界中から観光客が訪れるセマナサンタ中の情報はそこそこあるのですが、その前の時期となると、本当ーーに情報がない。たとえば一番のメーンイベント・プロセシオン(聖体行列)が何時に始まってどういうルートを通るのかなど、渡航前に情報を見つけることはできませんでした。
そこで現地調達。宿のホストファミリーに聞きました。
まずは四旬節の始まる「灰の水曜日」。この日は教会に行くと額に灰で十字を描いてもらえるそうなのですが、どの教会に何時に行けばいいのか分からない。ちょうどこの日はパナハッチェルにいたので、パナのホストファミリーに尋ねたら、教会に電話で問い合わせてくれました。パナで「教会」といったら一つしかないようです。現地に着くまで、そんなことすら知らなかった💦
ホストファミリーが調べてくれた時間に教会へ行き、十字は無事描いてもらうことができました。でもこれ、描いてもらってどうするの? いつまで消さずにつけていればいいのか分からなかったので、同じ列に並んでいたお嬢さんに尋ねました。
¿Cuánto tiempo debo mantener la cruz?
どのくらい十字をつけておけばいいのかしら?
Uno o dos días, más o menos.
だいたい1日か2日くらいかしら
¿Puedo ducharme esta noche?
今晩シャワーを浴びてもいい?
Sí, si quiere, pero no se lave la frente.
浴びたければ浴びてもいいけど、額は洗わないで
Entiendo. ¡Muchas gracias!
分かりました。どうもありがとう
相手のお嬢さん、ヘンな外国人のおばちゃんに話しかけられて、なんだかすごく楽しそうでした。隣にいる彼氏と目を合わせて笑っていました。
パナハッチェルのプロセシオンは毎週金曜日。その時間とルートついても水曜の教会で人に尋ね、無事観覧することができました。その人もなんだか楽しそうでした。言葉の通じる外国人観光客に何か尋ねられて、面白がりこそすれ、嫌がる人ってまずいないのかもしれません。日本人だってそうですよね。外国人に英語で話しかけられるのは億劫な人もいるかもしれませんが、日本語で話しかけられる分には、むしろ楽しい。
アンティグアでは四旬節中、毎週日曜日にプロセシオンが行われます。そのルート情報も、アンティグアのホストファミリーに聞きました。
アンティグアのプロセシオンは聞きしに勝る素晴らしさ。この件に関しては別のブログにまとめましたので、もしよかったらご覧ください。
プロセシオン情報に限らず、ホストファミリーがくれる情報ほど正確で頼りになるものはなかったです。旅行直前にグアテマラシティ在住のDMMの先生にアンティグアやパナの旅行情報をもらったのですが、いまいち情報が古かったり不正確だったり。ま、そりゃそうだわな、たとえばわたしが鎌倉情報を聞かれても、鎌倉在住じゃないから正確なことは言えない。
たとえば先生に「溶岩流でマシュマロを焼いて食べられる」と聞き、それが魅力でパカヤ火山ツアーに申し込んだのですが、ツアーの日の朝ホストファミリーに「溶岩でマシュマロ焼いて食べるんだー💛」と言うと「最近大きな噴火がないから、あそこの溶岩はすでに固まっているらしいよ」。・・・がああん、ホストファミリーの意見を聞いてからツアーに申し込むんだったーーー!!
サンティアゴ・アティトランという村には「マシモン」もしくは「サンシモン」と呼ばれる神様を信仰する習慣があり、この神様も絶対に見てみたいと思っていました。
この神様、「地球の歩き方」にも載っているほどメジャーなのですが、村の家々が毎年持ち回りでお世話を仰せつかり、家々を渡り歩くので、地元の人に連れていってもらわないと、今いる家にたどり着けません。トゥクトゥクのドライバーをツアーガイドに任命し、連れて行ってもらいましたが、もしスペイン語で交渉できなかったらおそらくたどり着けなかった。やっててよかった、スペイン語!
自力でたどり着くのは無理
現地の人との触れ合い
ホストファミリーとは二軒ともよくスペイン語で話をしました。
パナハッチェルのホストファミリーと一番たくさん話したのは最後の夜、庭の落ち葉を焼く焚火に招待して頂いたときです。
このお宅は非常に裕福で、家も豪邸なら、お手伝いさんが何人もいました。部屋を貸しているのはおそらくお金のためではなく、ボランティア精神と、世界の各地から来る旅行者との会話を楽しむためでしょう。
ご主人は現役時代、国連にお勤めだったそうで、アフリカや中央アジアなど、様々な国に駐在されたのだそう。その周辺の国々もたくさん旅行で巡られたそうです。挙げられた国に中国がなかったので「中国に行かれたことは?」と尋ねると「ラサに行ったことはありますが、わたしたちにとってあそこは中国ではなく、チベットという認識です」とおっしゃっていたのが印象的でした。
焚火を囲みながらご夫婦とゆっくりお話ししたひと時は、忘れられない思い出となりました。
アンティグアの宿は朝食つきだったこともあり、ホストファミリーと顔を合わせる機会が多かったので、それはそれはたくさん話し、一緒に笑いました。たとえばこんな感じ:
(寝室に向かうご主人を見て)
Otra vez, Él va a hibernar.
あら、また夫が冬眠しに行くわ
¡¿Hibernar?!
冬眠て(笑)
Sí, siempre está hibernando en su cama viendo Netflix, como un oso en su cueva.
そう、まさしく冬眠よ。いつもベッドに寝そべってボケっとネットフリックス見てるんだから。洞穴の熊みたいに。
冬眠中の熊どころか、本当はすごく働き者のご主人なのですが。この家ではレモネードもオレンジジュースもご主人が手で絞ったもの。グラノーラもご主人の手作りでした。
(アボカドを切りながら)
¿Hay aguacates en Japón?
アボカドって日本にもある?
Sí hay. …¡Ay no! ¡Mi aguacate!
ええ、あるわよ・・・あっ!わたしのアボカド!
¿Que te pasa con tu aguacate?
アボカドがどうかしたの?
Ahora recuerdo. ¡Olvidé mi aguacate en mi frigo en Japón! ¡Lo compré y estaba esperando que madure, pero me olvidé de comerlo! Cuando regreso a Japón, ya estará mal a lo mejor… ¡Qué pena!
今思い出した。日本の冷蔵庫にアボカドを忘れてきた! 買って、熟すまで待ってたのに、食べるの忘れちゃった。日本に帰る頃にはもうダメになってるかも・・・。残念!
これが印象的だったらしく、以来アボカドを見るたびに「¿Cómo está tu aguacate?(あなたのアボカド、どうしてるかしらね?)」。幸い日本に帰ってきたらまだ傷んでいなかったので、元気なアボカドの姿を写真に撮り、送りました。アボカドってずいぶん持つのねえ。
アンティグアのすぐ近くには「fuego(火)」というそのものズバリの名の活火山があり、ほとんど毎日噴火しているのですが、40年アンティグアに住んでいる奥さんはまだその噴火に慣れないらしい。「昨夜の噴火はすごかったね。夜勤中の夫に『フエゴが噴火してるーー!』って電話したけど、夫は『tranquila, tranquila(まあまあ、落ち着いて)』って言うばかり。そんな、落ち着けないわよー」
でも地震国から来た我々は慣れ切ってしまっているのか、噴火の地響きを感知できず、毎日のように「昨夜の噴火はすごかったね」と言われるも、毎日「え、全然気づかなかった」と答える日々。そのうち「さすがは日本人!」と妙に感心され、家に来る友達や家族に話すネタにされました。「この人たちは昨日の噴火にも気づかなかった」と。一度くらい噴火の振動を感じてみたかったのですが、鈍感なわたしには無理でした。
片桐はいりさんの弟のマコトさんが運営するスペイン語学校アタバル近くの手作りアイス屋さんでは、マコトさんの噂話をひとしきり。この方の噂話は実は二度目。日本人というとアンティグアの人はマコトさんを思い出すようです。
ちなみに、一度買ってすごく美味しかったので、このアイス屋さんには同じ日にもう一度行きました。最初に行ったときはアイスの代金を全部細かい硬貨で支払いましたが、二度目に行ったときは普通に紙幣で支払い、
Mire, esta vez tengo un billete.
ほら、今回は紙幣を持ってきた
と言うとアイス屋の女将さんは爆笑。笑いって共通理解から生まれるんですね。さっきは細かい硬貨で支払ったことをお互い覚えているから、紙幣で支払うだけで笑いのネタになる。
ホストファミリーとの会話もそうですね。「El oso va a su cueva(熊が洞穴に行く)」と聞いただけで「ご主人が寝室に行く」という意味だと分かるから可笑しい。「tu aguacate(あなたのアボカド)」というだけで、日本に残してきたアボカドのことだと分かるから笑える。
滞在中ずっとウィピル(マヤの伝統衣装)を着ていたからか、見知らぬ人からしばしば話しかけられました。
で、初対面の人の最初の質問は、ほぼ決まってこれ:
¿De dónde es?
お国はどちらですか?
De Japón.
日本です
9割以上の確率で、最初の質問はこれ。そして多くの場合、会話はここで終わる。スペイン語初心者が一番最初に覚えるべきは、このやり取りでありましょう。
変わったところでは、物売りの男の子が突然こう話しかけてきたことがありました。
¿Cuánto costó su huipil?
そのウィピル、いくらした?
全く同じ質問を民族衣装店の売り子さんからも受けました。値段を答えると、商品を売るのを諦めた模様。「この人相手はいい商売になりそうもないな」と思ったのかもしれません。ウィピル、値切って安く買ったもんなあ。
しかしこういう会話が成立するのも、スペイン語が話せるからこそ。こんな短い会話であっても、言葉が交わせるって幸せだなあ、と思います。
虫の息でもスペイン語
グアテマラに行ったことで、ちょっとスペイン語に自信がつきました。いつでもどこでも気軽に人に話しかけられたし、話しかけられればすぐ反応を返せたからです。コンディションが悪く、心身に余裕がないときでもスペイン語で返せました。終始スペイン語で考えていたせいで、脳がスペイン語モードになっていたからだと思います。
火山ハイキングに行った時のこと。軽いハイキングだと聞いて舐めていたのですが、実際はかなり過酷でした。まず登山口までの車移動が一時間半くらいあり、道が急カーブの繰り返しで、乗り物酔いでもうヘロヘロ。その上ハイキングは参加者の大半が馬に乗って山を登るものだから、徒歩組も馬のペースに合わせ、急な山道を駆け足で登らなくてはならない。しかも道は馬のフンだらけ。なんなら目の前の馬のお尻からホカホカのが繰り出されてくる。そんなフンを巧みにかわしながら馬と同じペースで山を登るのだから、ターイヘン!
この時は本当ーーーにこのツアーに参加したことを後悔しました。本当に、なぜホストファミリーに相談してから申し込まなかったのか・・・。
他の参加者は皆若い人ばかり。当然わたしはしんがり。若い女性のガイドさんが一緒にしんがりを務めてくれる。一方、わたしと大して年齢が変わらなさそうな男性のガイドさんは今ここにいたと思ったら、一気に馬々を追い越し、先頭へ。あの人なんなん? すごい馬力。実は意外と若いとか?
¿Cuántos años tiene él? ¿Por qué está tan joven?
あの人一体何歳? なんであんなに若いの?
「そっか、joven に estar を使うのって、こういうときか」と思いながら女性のガイドさんに尋ねる。
Él es sin edad.
あの人は年齢知らずよ
なんだ、聞いて損した。口を開くのも億劫なのに。
青息吐息で山を登るわたしを見て、ガイドさんは「馬に乗る?」「杖を使う?」などとスペイン語で始終話しかけてくる。どちらももちろん別料金が発生するので、まあ半分営業トーク。
それに対して、切れ切れな息で「No gracias. Los caballos me marean.(馬に乗ると酔うからいい)」とか「No gracias. Es demasiado pesado para mi(杖は重たいから要らない)」などとスペイン語で返し続けたのは我ながらすごいと思いました。
「Puedes descansar(疲れたら休んでもいいよ)」とガイドさんが言うので、石の上に腰を下ろそうとすると「No te sientes(座らないで)」とピシャリ。一度座ってしまうと立ち上がれなくなるので、立って休めということのようです。なんだよ、座れねえのかよ。「Es mejor seguir caminando.(そんなら歩き続けたほうがマシだわ)」と言い、また歩き出す。こんなにヘロヘロなのに、よくスペイン語で頭が回るもんだ、と自分に感心しました。
帰りは帰りで、馬が砂ぼこりをモウモウに巻き上げながら山を下るなか、どんどん日が暮れてきて、闇の帳で道のフンが判別できなくなるのが恐怖で、少しでも明るいうちに踏破すべく、わたしも爆走。すると隣の馬に乗ったカッコいい、でもチャラそうな兄ちゃんが英語で話しかけてきました。
あなたのウィピル素敵だね。そんないい品質のは滅多にないよ。うちは母親がウィピルの目利きで、僕もウィピルを収集しているので分かるんだ。いい買い物をしたね。どこで買ったの?
ありがとう。パナで買ったのよ。
そのうちだんだん会話は英語からスペイン語になり、
国はどこ?
日本よ
おお、富士山がある国だね! ねえ、日本に帰ったら。そのウィピル着て富士山の頂上からグアテマラに向かって叫んでくれない? 「65ーーー!」って
いいけど、何で「65」なの?
・・・・・・。うちの母親が65歳なんだ
ほんとかなあ? なんかちょっと怪しい。
じゃあ来年は66になるのかな?
・・・。ねえ、ほんとに富士山の頂上から叫んでくれる?
いいよ、叫ぶよ。今年なら65、来年なら66って叫べばいいの? このウィピル着て、グアテマラに向かって
ほんとにぃ? ほんとに叫んでくれる?
・・・一体この会話は何だったんだろう? 65って何か他の意味があるんだろうか?? ・・・でもまあとにかく、馬と一緒に下り坂を爆走しながら(しかも馬のフンを避けながら)、こんな会話ができたのは我ながらすごいと思いました。
この火山ツアー、溶岩原でマシュマロを食べたときは報われた気分でしたが、砂埃で髪はギシギシ、口の中も砂でジャリジャリ。きっとこの砂埃にも馬のフンが含まれているんだろうと思うと恐怖で、宿に帰りつくと速攻シャワーを浴び、うがいをしました。着て行ったものは下着から靴から何から全部洗濯。二度と行きたいとは思わないけど、スペイン語の良い思い出にはなりましたかね。
溶岩の中に炉が作ってあり、一応マシュマロは焼けました
現地で求められる語学力
グアテマラでスペイン語をしゃべったことで、「語学力」のイメージが少し変わった気がします。
語学力というとなんとなく、単語をたくさん知っていることや文法の正確さのことのように思っていましたが、現地で会話する上で一番役に立ったのは、何か言われたら即座に理解し、すぐ反応する機敏性でした。
何か質問されたら、すぐに意味を把握し、返答する。
ジョークを聞いたら即座に理解し、すぐに笑う。
いくら正確な理解であろうと、理解に何分もかかっているようでは、コミュニケーションは成立しない。相手の言っていることが分からなかったらすぐに聞き返し、会話に空白を作らない。
そこで重要なのは、たくさん単語を知っていることよりも、知っている単語を瞬時に思い出す機動力。試験、特にマークシートでは、縦に長い語学力が有利ですが、現地で会話するには、横に太い語学力が役に立つ。言葉を「知っている」ことより「使い慣れている」ことが大事。試験と実地とでは、求められる「語学力」の質が真逆くらいに違うんですね。
あと、面と向かって人と話すのってラクですね。オンラインレッスンで話すのに比べ、面と向かって話すほうが全然ラク。それはおそらく、しぐさなどの非言語コミュニケーションが伝わりやすいからだと思います。やはり画面越しだと伝わる範囲が限られてしまう。それにレッスンで話す内容って意外と難しいテーマが多い。特に同じ先生と何度も話していると簡単に話せる話題が尽きてどんどんテーマが難化していきがち。一方、通常の会話って、ここが痛いとか、何をするのが面倒とか、これが嫌とか、どーでもいいような呟きが話のネタになる。そんなに難しいことを話さないんですよね。
今までなんとなく、オンラインレッスンは講師が相手だからラクで、一般の人と話すほうが難易度が高いのでは、と思っていましたが、どうやら違うようです。
また、会話のみに集中できるレッスンとは違い、通常の会話って、食事をしながらとか、皿を洗いながらとか、何かしらやりながら片手間に交わされることが多いので、それも難しいかなと思っていたのですが、そういうこともありませんでした。
これからはオンラインレッスンでそこそこ喋れたら、実地の会話はもっとラクと思って自信を持とうと思います。