昨日フィリピンの若い先生を相手に、宗教と戦争について、とうとうと語ってしまいました。
「世の中の戦争のほとんどは、宗教間の争い。それがいやだ」という先生の一言がきっかけで、スイッチが入っちゃって・・・^^;。「確かに一見そう見えるけれど、実際その多くは神の名を語った経済紛争もしくは領土問題で・・・云々」と語りだしたら止まらなくなってしまった。あら、英語でこんなことまで語れちゃうんだ、と自分でも驚きました。
これも英語モードのおかげ。英語モードになると、思ったことがそのまま口から出てしまう。口火を切った後になって、あ、しまった、ちゃんと最後まで説明し終えられるのか?と一瞬不安になるのだけれど、もうあとの祭り。こうなった以上、落とし前は自分でつけるしかない。
だから必死に、考えながら喋り、喋りながら考えるわけです。日本語で喋るときほど余裕がないものだから、頭に浮かんだ内容をそのまま口に出していく。そして気づけば、案外、言いたいことがあらかた言えてしまっているのです。たぶん細かい不備はいっぱいあるのでしょうけれど。
そういうときの自分は、通常の能力の限界以上の力を発揮していると思います。火事場の馬鹿力、もしくはリポD的瞬発力っていうか。「ファイトーーーー! 一発ーーー!!」みたいな。たぶん、体中から青白い炎を発してると思います。もしかしたら、龍の一匹や二匹、背中に背負っているかも。
でもそういう火事場の馬鹿力を借りてでも、一度できてしまったことというのは、次からもできる。ウソから出たマコト。ただのまぐれが実力のうちになるわけです。
そうしてどんどん言えることの範囲が広がっていく。その場限りのラッキーではなく、次に繋がる。そこが外国語モードの一番美味しいところです。
ただし、前回も書いたように、わたしの外国語脳は決して完全ではありません。いつでも好きなときに好きな言語モードになれるわけではないし、途中でよく落ちる。出来の悪いサーバみたいなもんです(トホホ)。
ではどんなときに回路が発動し、どんなときはダメなのでしょうか。(お、これはけっこう新しい視点だぞ。こういうことを体系立てて書くのは、わたしが初めてかも?)
とりあえず会話に限定し、これまでの経験を整理してみます。
外国語モードが発動する条件
相手の言っていることが聞き取れること
外国語回路発動のカギは、相手の話についていかれるかどうかだと思う。100%きっちり分かる必要はないが、話の流れがおおよそ分かることは必須。相手の発話の難易度が自分の理解力からかけ離れていると、耳が聞くのを諦めて閉じてしまう。これは日本語の場合も同様。
他に日本人がいないこと
日本人の目があるところでは、いいところを見せたいとか、間違えてはならないなど、肩に余計な力が入ってしまい、会話に集中できない。特に、日本人同士で外国語で会話するとか、わたしは絶対無理。検定試験も、二次の面接官が日本人って、マジ勘弁してほしい。
なりきれる環境であること
外国語で話すという行為は、一種の言語コスプレ。なので舞台はエキゾチックなほうが、テンションが上がり、外国人の仮面がラクにかぶれる。具体的には、場所は国内より海外の現地、相手はなるべく日本人とかけ離れた風貌であることが望ましい。
他に言語の選択肢がないこと
外国語モードは、日本語も含め、よりラクな言語に降臨しやすい。したがって、日本語を話せる相手には、外国語回路は発動しづらい。同様に、たとえば英語が通じるアラブ人が相手だと英語モードが降臨しがちで、アラビア語脳になるのは難しい。
最低限のボキャが揃っていること
語彙が足りないと、まず相手の言うことが分からないし、リアクションが起こせない。但し会話の場合、「分からなければ相手に聞く」という手があるので、そのハードルはそれほど高くはない。たとえば、「首の長い動物」と言えさえすれば、「キリン」という単語は相手から引き出せる。
細かいことにこだわらないこと
会話において何より一番大事なのは、会話の流れを止めないこと。そのためには「通じればいいや」くらいの気構えで、文法や発音の正確さなどにこだわりすぎないほうがいい。相手の話も、逐一逐次分かろうとせず、大意をつかむことが大事。
今のところ、思いついたのはこんなところでしょうか。
つまり、外国語回路発動を発動させたければ、以下のような条件を揃えればいいわけです。
- 聴解スキルに加え、良好な音環境・相手を選ぶ
- 日本人の目の届かない場で話す
- 最高の舞台でガイジンの仮面をかぶる
- 話したい言語以外通じない相手と話す
- 最低限のボキャと文の構成力を身につける
- 細かいことにこだわらない
意外にも外的要因が多いですね。2~4は完全に状況の問題、1も状況次第で改善はできる。
唯一5番目だけが、純粋に外国語スキルの問題。そのスキルが1の条件を支えているともいえる。しかしそのスキルのハードルはめちゃくちゃ高いわけではなく、2000語程度のボキャがあれば、なんとかなる。
その数字の根拠は英英辞典。基本語2000語のみを使って見出し語を説明する英英辞書があるからです。たとえば「Oxford Essential Dictionary」とか「Longman Wordwise Dictionary」とか。こういうのを読むと、たいていの語彙は基本の2000語でけっこう説明できるんだな、と分かる。
数が多いことより、基本語を充分に使いこなせるかが大事かも。自分で書いてて耳が痛いですが^^;。
6番目は気構えの問題。たぶんこれを乗り越えるのが一番難しい。どうしたらこだわらずにいられるのか、わたしも知りたい。いまトルコ語脳になかなかなれない・持続しない理由も、一番の障害はたぶん6だと思う。
1の聴解の問題も大きいけれど、これに関してはゆるーい進歩を感じてはいて、たまにうまいこと聞き取れて、一瞬スルッとトルコ語脳になるので、このままでもいいと思う。
5のボキャについても、まだまだ整理が必要なものの、基本語彙がおおよそ出揃いはじめてはいる。
でも6の細かいことにこだわりすぎ、これだけはいかんともしがたい。発音、母音調和、子音交替、人称語尾、語末の付属語、格変化、動詞活用・・・。トルコ語には気にするポイントがたっくさん。こういうのがいちいち気になってしまい、それだけでいっぱいいっぱい。一つの文を言い終えるのにすごい時間がかかり、ときどき自分が何を言おうとしていたのかすら、途中で忘れてしまう。会話の流れどころの騒ぎではない。
こういうの、一体どうすればいいんだろう。
気になることを気にしないようにする。そういう意識転換ほど難しいものはない。
・・・まあなんとか工夫してみます。