ネネとチャアは今日、スペイン人の先生によるバレエの講習会に参加してきました。 バレエはもともと西洋のものなので、微妙なニュアンスを習得するためには、 ときおり本場からやってきた先生に教えを請う必要があるのですね。
「講習会どうだった?」と帰ってきたネネに尋ねると、
「うん、すごく楽しかった。でもときどき言葉が分からなくて困った」と笑いました。
「だって、通訳の方がついてたでしょ?」
「うん、でも"パ"(ステップのこと)の名前なんかはいちいち訳さないから。
"グリッサード"なんか、全然"グリッサード"に聞こえなかった。
先生がやってくれてはじめて『ああ、そこはグリッサードなのか』みたいな?
‥グランジュッテもねえ、"グランパドシャ"なんだか、"グランジュッテ"なんだか‥。
あたしには"グランジュッテ"って聞こえたんだけどね、
でもみんなグランパドシャで跳んでる」
「でもジュッテと聞こえたんなら、ジュッテだったんじゃないの?」とうさぎ。
「でもさあ、みんなパドシャで跳んでるんだよ。ユリちゃん以外はみんな」
「ユリちゃん以外は、ジュッテで跳んでるつもりで、いまいちパドシャになっちゃってたとか」
「え〜、さすがにそれは‥」
グランジュッテとグランパドシャの違いは微妙です。
どちらも大きく跳躍するパで、
しろうとのうさぎなんぞにはいまいち見分けがつかない程度の差。
跳ぶ方も、ある程度のレベルになればきちんと跳び分けられますが、
それができない人もいます。
「とにかく"グランジュッテ"と聞こえて、グランジュッテで跳んでる人がいたんなら、 やっぱりグランジュッテが正解なんじゃないの?」 とうさぎ。「‥で、結局アンタはどっちで跳んだわけ?」
「グランパドシャ」
「え〜! 何でよ?! アンタ、先生にジュッテとパドシャの跳び分けもできないのか、 って思われたかもよ」
「だって、みんなパドシャで跳んでたんだもん」
「でもユリちゃんはジュッテで跳んでたんでしょ?」
「だけど、ユリちゃんだけだったんだもん」
‥オイオイ、多数決の問題なのか?
でもなんかすごく分かる気がする。
ネネが変だなと思いつつ皆にあわせたというのも、
ユリちゃんが自分の耳の方を信じたというのも。
二人の性格の違いが如実に表れていますね。
二人は仲良しで、バレエのライバル同士なのだけれど、タイプは見事に正反対。
抑制がきいていておとなしいネネの踊り方に対し、
ユリちゃんの踊りは大胆で自由闊達です。
で、うさぎ自身は性格的に娘のネネよりユリちゃんに近いタイプ。
ネネを見ているとはがゆい気がすることもあります。
このときだって、うさぎならきっとジュッテで跳んだと思うの。
◆◆◆
夜遅く帰ってきたきりんにこの話をすると、
「‥で、その話には結局どういうオチがあったわけ?」ときりん。
「えっ、オチ? オチはネネがパドシャを選んだことじゃないの?」
「先生が見せてほしかったのはグランジュッテだったとか、そういうオチはないわけ?」
‥いや、だから、あのね‥。 うさぎが言いたいのは、結局どっちが正しかったとかそういうことじゃなくて、えーと‥。