2003年11月25日 バリ旅行記(その4) アラムジワ

【 バリ旅行記4 アラムジワ 】

22日の続き

アラムジワはまるで普通の民家みたいだった。 狭い路地のつきあたり、こじんまりとした木戸、 テーブルが4つしかないオープンエアのレストラン‥。 これまで泊った何百もの部屋を擁する大規模ホテルとは、まるっきり違っていた。

「今日はもう遅いので、チェックインは明日にしましょう」とスタッフの一人が言い、 部屋に案内してくれた。 うっそうとした緑の中、石段を何段か降りるとこれまた狭い小道があり、 その脇を小川がコトコト音を立てて流れている。 黄色い腰布を巻いた石像が、闇の中でこちらの様子を伺っている。 うさぎは、怖がりの子供たちが怯えるのではないかと心配した。 でも彼女たちは「この雰囲気、トトロで見た」などと言いながら、 わりあい平気な顔で石畳の道にキャリーケースを転がしていった。

確かにそこは、なんともいえず懐かしいかんじがした。 エキゾチックなのに懐かしい。 闇の暗さ加減も、石像のおどろおどろしさも懐かしい。
「まるで田舎のおばあちゃんちみたいね」と自分で言って、うさぎは「あれ?」と思った。 うさぎの両親は共に東京出身で、 実際には「田舎のおばあちゃんち」になんて行ったことはないのだから。

うさぎたちが泊るその家は、路地のつきあたりにあった。 小さな木戸をくぐると、装飾を施した木製の立派な玄関扉があり、 かんぬきがかかっていた。

かんぬきを開けて中に入ると、家の中はどこからどこまで凝っていた。 頼り甲斐のあるどっしりとした太い石の柱、びっしりと彫り物を施された木の扉、 そこかしこに飾られた珍しい装飾品の数々。 どうやってカギをかけるのかと玄関扉を振り返って見ると、 ドアには大きな木の掛けがねがついていた。

部屋についてきてくれたスタッフは、自分の家を自慢するみたいに、 この立派な家を案内して回った。 玄関の正面には、クレオパトラに似合いそうな素敵なバスタブのある広いバスルームがあり、 左手側の立派な階段を登っていくと、上にも大きな寝室、 右手側の階段を下ると、ダイニングキッチン。
「広〜い!」とか「うわー!」と皆が声をあげるそのたび、 彼はニコニコと嬉しそうにほほえんだ。

スタッフが引き上げると、 きりんは部屋の中に置いてあるフルーツの籠を目ざとく見つけ、 マンゴスチンを剥き始めた。 うさぎはマクドナルドのチキンをテーブルの上に広げた。 広い部屋の中、みなで一箇所に固まってそれを食べた。

食事が済むと、こんどは皆で一斉に上の寝室に上がった。 玄関階にも大きなベッドがあるけれど、皆で固まっていないとなんだか寂しい。 ネネとうさぎが上階の大きなベッドを占領すると、 チャアときりんは自然と同じ部屋の隅にある小さなベッドに居を定めた。

4人で一部屋に固まっても、それでもまだまだ部屋は広かった。 チャアときりんははるか彼方の部屋の隅。 広い空間、高い天井。 ベッドの蚊帳を下ろすと、やっとそこはうさぎたちが眠りにつくのに ちょうどいい大きさの空間になった。

つづく