カメラはすべて相似形である
というイメージが浮かんだのは、12月31日のことでした。 つまり、同じ画角、同じ明るさで考えた場合、
受光面が大きなカメラには、大きいレンズ、長い焦点距離が必要
受光面が小さなカメラは、小さなレンズ、短い焦点距離でこと足りる
ということが、大晦日にイメージできるようになったのです (受光面というのは、フィルム、CCDセンサーなどのこと)。
これは、カメラの原理が分かっている人にとってはごく当たり前のことかもしれません。 わたしにしても、あとほんの数週間してこの事実に馴染んだら、 当たり前のことだと感じるかもしれない。 だけど12月31日の時点では、これはわたしにとってまさに大発見でした。
右の図は単に左の図を拡大しただけ。
つまり、受光面と焦点距離、レンズの大きさの間には一定の因果関係やバランスがあり、 どんなにすごい最新技術をもってしても、 これを無視してカメラを設計するわけにはいかないのですね。
たとえば、小さいレンズからは、形状がどうあれ、その大きさなりの光しか取り込めません。 よく「明るいレンズ」などという言い方をしますが、 それはレンズの"性能"の話ではなく、レンズの"大きさ"の話です。 ライカブランドだろうがカールツァイスだろうが、 大きさ(有効口径)と焦点距離が同じなら、明るいも暗いもない。 レンズの明るさを示すF値は、
レンズの明るさ(F値) =焦点距離(f) / レンズの有効口径(D)
という計算式で算出され、値が小さいほうが"明るい"レンズということになります。 まあ実際には、レンズの性能部分が入り込む余地が全くないわけではないようですが、 それは二次的な話であり、 基本的には、レンズの明るさというのは、 レンズの相対的な大きさ(焦点距離との兼ね合い)で決まるのです。
また、焦点距離が同じならば、どんなカメラで撮っても、同じ距離に置いた同じ大きさの被写体は、 受光面に同じ大きさに投影されます。
受光面が大きくても小さくても、焦点距離が同じなら、被写体は同じ大きさに投影される。
そしてそれをある一定の大きさに引き伸ばしてプリントした場合、その被写体の大きさは、 受光面の大きさによってまちまちになります。 受光面が大きければ、拡大率が小さいから被写体は小さく見え、 受光面が小さければ、拡大率が大きいから被写体も大きくなります。
受光面の大きさによって、プリント時の拡大率が異なるので、
焦点距離が同じでも、ズームアップ感が変わる。
遠くのものをズームアップするには、焦点距離を長くすることが必要ですが、 受光面が小さければ小さいほど、 焦点距離が短くても、ズームアップ感を得られるということになります。
これが、デジカメがコンパクトなレンズでも遠くのものを近くに引き寄せられるからくりです。 なぜなら、デジカメの受光面は一般に35ミリフィルムよりも小さいからです。
受光面が小さいから、焦点距離が短くても遠くのものをズームアップできる
受光面が小さいから、レンズも小さくて済む
受光面が小さいから、デジカメは35ミリフィルム用カメラに比べ、 すべてをコンパクトにすることができるのです。
この仕組みは、これまでにあまりカメラをいじったことのない人の方が、 すんなり理解できるかもしれません。 長年、35ミリフィルムの世界でモノを見てきたわたしのような人間は 焦点距離の差は画角の差であると思い込みがちで、
焦点距離28ミリといったら、それは広角レンズである
焦点距離280ミリといったら、それは望遠レンズである
などと固定的な数値で焦点距離のイメージを捉えがちです。 だから、「焦点距離が28ミリの望遠レンズ」だなんてものに出くわすと、頭が混乱して、 一体それはどういうものなのか、さっぱりイメージできなくなってしまうのです。 実際、焦点距離と画角を切り離して考えるのに、わたしは丸々一月かかりました。 焦点距離と画角の関係にこだわりすぎて、 焦点距離と受光面との関係がイメージできなかった。 いままでの経験が、新しいことへの理解を邪魔していたのですね。