先日、また公募で落選しました。 それで、昨日ともだちが残念パーティだと言ってランチをおごってくれました。 持つべきものは友達ですね。 公募に落ちた悔しさはそれで消えてしまいました。
中学生を対象としたアンケートのなかで、 「学校に行きたくない日ってどんな日?」という設問に対し、 「雨の日」「風の日」「英語のある日」「数学のある日」などの答えに混じって、
「行きたくない日はない。友達がいれば、どんなときでも何とかなるから」
という答えがありました。
――うん、そうよね。 わたしも友達がいるから、公募に落ちてもどうってことはない。 友達がいて、家族がいるから、公募に落ちても何があっても、すぐ立ち直れる。 「友は喜びを倍にし、悲しみを半分にする」というのは本当です。
でも、「友達がいれば」というその前提が満たせないことだってあります。 わたしにも経験がある。 子供の頃、クラスのなかに「友達」と呼べる人がいなかった年がありました。
特に何かしでかしたわけでもない。
すべきことを怠ったわけでもない。
ただ普通に、いつもの年と同じようにしていたのだけれど、
その年はたまたまクラスに気の合う子がいなかったのだと思います。
だけど友達のいない日々は、ただ学校に行くだけで辛かった。 友達がいるのは当たり前だと思っていたから、よけい辛かった。 当たり前なことを満たすことのできない自分が情けなかった。
でも今は分かる。 人生は長い。 友達がいない時期があって当たり前だと。
友達がいなくて当たり前、いたらラッキー。
だからこそ、そのラッキーを大事にしたいと思います。
◆◆◆
【 バリ旅行記19 ラカレケ料理教室 】
ウブドからモンキーフォレストを南に抜けたところに、ラカレケ・レストランはある。 カフェワヤン同様、ここもアラムジワと同じオーナーの店だが、 カジュアルな雰囲気のカフェワヤンとは違い、こちらはどこか料亭を思わせる。
ここラカレケでは料理教室も開催される。 広い庭を抜けた菜園のそのまた奥にある専用のキッチンで。 その料理教室には、きのうのうちに予約を入れておいた。 今日ここでインドネシア料理に挑戦するのは、ネネである。
午後5時、約束の時間に少し遅れてラカレケに到着すると、 男性の先生二人に紹介された。 一人は日本語英語の達者なお若い先生、 もう一人は、日本語英語はできないようだが、包丁さばきの見事な、中年の先生。
「料理に挑戦するのはどなたですか?」と若い先生が尋ねた。 はい、とネネがほんのちょっと手を挙げた。
すると、チャアが「いいなあ」と一言もらした。
彼女は大きなテーブルの上に置かれた色とりどりの材料に心惹かれ、
にわかに自分も料理をやってみたくなった様子である。
「じゃあ、あなたもやる?」とエプロンをチャアにエプロンを差し出す先生。
けれどもチャアは「いい、いい。やらない」とうさぎの後ろに隠れた。
ネネはトッケイ柄のエプロンを貰い、それを身につけた。
「いいなあ」とまたチャア。
「だったらあなたも参加すればいいのに」とうさぎ。
「いい、やらない。できないもん」とチャア。
「そんなことはないよ。今日は他の生徒さんもいないし、
先生だって、チャアにもできると思うから勧めてくれるんだよ」ときりん。
「いいの。チャアはやらない」とチャアはもう一度言った。
ネネは白く高いコックの帽子を被った。
「いいなあ」と、またまたチャア。
「それじゃあ、やるやらないは別として、エプロンと帽子だけでも着てみたら?」とうさぎ。
‥そんなこんなで、結局チャアもインドネシア料理に挑戦することになった。 今日のメニューはこんな感じだ。
バリニーズ・チキンサラダ
サテ・アヤム(ヤキトリ)
バルグデ・ル・ウダン
アヤム・ゴレン・サンバル・バラド(鶏の串揚げ サンバルバラドソース添え)
ほうれん草の炒め物
大きなテーブルの上には、色とりどりのスパイスが並んでいた。 ニンニク、トウガラシ、コショウ、パプリカなど、おなじみのスパイス、 ウコン、コリアンダーなど、名前くらいは知っているけれど使ったことのないもの、 それに初めて見るものもあった。
こうしたスパイス類はたいてい、石の皿の上で砕いて使われた。 勾玉の頭の先を平たくしたような形の石のすりこぎですりつぶすように砕くのだ。 石という素朴な素材は、陶器と違って気兼ねが要らないところがいい。 壊れる心配もなければ、汚れる心配もない。
鶏肉は、屋根の外に置いてあるヤキトリ屋さんの焼き台のようなところで焼いた。 余計な油が下に落ち、さっぱりと焼けた。 煙は広い外に流れていき、部屋のなかがすすけることもない。 もしかしたら料理というものは、屋外でするものなのかもしれない。
出来上がった料理は、高い台座つきの白い大皿に敷いたバナナの葉の上に盛られていった。 飾り切りのトマトやニンジンがあしらわれ、赤と緑のコントラストが一層料理を引き立てる。 料理を食べ終わったあとは、バナナの葉を捨てるだけでいいから、後片付けもラクそうだ。
料理ができあがると、すっかりあたりは夜になっていた。 出来上がった料理は、えもいわず豪華で、 更に「サービスです」といって2品が追加された大ご馳走がうさぎたち4人に 振舞われた。 図らずも憧れのラカレケで、 テーブルの上のキャンドルの灯りだけでとるロマンチックディナーが実現するとは。
けれど、この贅沢なディナーの内容よりも、うさぎを喜ばせたものがある。
それは、うら若き女性スタッフが言ったセリフだった。
「アラムジワを気に入って泊ってくださったあなたが、
ラカレケレストランまでも気に入ってくださって本当に嬉しい」
その美しい顔を輝かせ、
胸の前で手を合わせて、彼女は静かな声でそう言った。
きっとそういう彼女も、アラムジワのために働くことが気に入っているのだろう。
明日はチェックアウトの日。
こんな風にスタッフから愛されるホテルに泊れてよかった。
アラムジワまでの夜道を歩きながら、うさぎは感傷的な気分になっていた。