家計簿ノススメ(其ノ壱)からのつづき
よく、家計簿を付け始めると、 その日からお金が溜まるような気がしている人を見かけますが、わたしに言わせれば それは間違いです。 家計簿にそんな即効性はありません。
記帳しただけで出費が減るなら、誰も苦労はしません。 むしろ、家計簿をつけ始めると、いままで気付かずに済んでいた浪費に気付いたりして、 なんだか逆に、出費が増えたような、重た〜い気分になること請けあいです。 で、「こんなはずじゃなかった」と挫折。 「わたしには節約なんてできないんだわ」と思い込むわけです。
でもこれ、節約向きかどうかには関係がなく、 そもそも家計簿に求めるものが間違っているだけなんだと思います。
家計簿をつけると節約に繋がるのは、
家計簿をつける
↓
自分の消費パターンが見えてくる
↓
自分なりの金銭感覚ができてくる
↓
同じだけの出費で、高い満足度が得られるようになる
↓
満足に繋がらない出費を排除できるようになる
・・・という経路を辿るからであって、時間もかかるし、 「賢い主婦」になるどころか、自分が「愚かな主婦」であることを思い知らされます。 でも、その"愚かさ"を一方で排除しつつ、他方で容認していくことで、 すこしづつ節約へと近づいていくわけです。
だから、これから家計簿をつける方にお勧めしたいのは、 家計簿に過度な期待を抱かないことです。 過度な期待を抱くと、挫折しやすいので、 節約効果が見えることはとりあえずあまり期待せずに、 長い目で見て、付け始められることをお勧めいたします。
それから、続けるためには、最初から完璧を目指さないこと。
たとえば、家計簿は"集計"することが大切だとよく言われます。 まあ確かに、わたしも集計が大事であることに異議はありません。 でも、集計はべつに今やらなくても、いつでもできるのです。 日々の出費が記帳されてさえいれば。 だから、最初は面倒だったら集計しなくてもよいと思うのです。
また、サイフの中の残金と家計簿の数字を照らし合わせて、 つけわすれがないかどうかチェックすることは大切です。 でも、これはけっこう面倒で、使途不明金が出るとイライラします。 だから、面倒なら現金と家計簿の照合はしなくてもよいと思います。 わたしも、結婚してからも最初の2〜3年は、照合していませんでした。
予算を決め、それを守っていくことも大切ですが、 自分の消費スタイルが分からないのに、予算を立てろと言われてもそれはムリ。 だから、予算も立てなくてよろしい。
反省も大切ですが、最初はわざわざ反省してガックリ落ち込む必要もナシ。
特にどういう形式の家計簿でなくてはならないということもありません。 普通のノートに線を引いて使ったっていいし、手帳に書き込んだっていい。 無料でいろいろ出ているスマホアプリから好きなのを選んで使ってもいいし、 わたしが配布しているエクセルシンプル家計簿を 使うもよし。 自分が使いやすいと思えば、なんだっていいと思います。
かく言うわたしも、社会人になったとき
「家庭経済の第一歩は、清らかな収入の道をはかり、 よい費目分けの予算をつくり、各費目の予算に照らし合わせて、 日々の支出を記帳してゆくことです。」(羽仁もと子)
という趣旨に感銘を受け、 婦人之友社から出ている羽仁もと子の家計簿を意気込んで買ったものです。 けれど、家に帰って記帳方法を読んだら、 すごくきっちりしていて自分には実践できそうにない気がしてきました。 それで結局、その家計簿は使わず、 代りに文房具屋さんで買ってきたもっと気楽な家計簿をつけ始めたのです。
その後、家計簿に関していろいろ試行錯誤するうちに、 だんだんと羽仁もと子先生の家計簿に近づいていくのが分かりましたが、 最初から婦人之友社の家計簿を使ってその理想を実践しようとしていたら おそらく挫折していたと思います。 この家計簿は明治時代に作られたものであり、 今なお抜群に優れた家計簿だとは思いますが、 それだけに、それなりの経験値もしくはそれに代わる努力や根気が必要とされるのです。
とにかく家計簿はまず一年つけてみることが大事。 一年つけてみれば、自ずといろんなことが分かってくるでしょう。 そして2年、3年するうちにだんだん自分なりの金銭感覚が見えてきて、 5年、10年すれば自分の消費傾向やライフスタイルを愛することができるようになるでしょう。 ――それが家計簿の本当の効用だと思います。
自分の満足の"ツボ"が分かれば効率良く満足が買えるようになるので、 出費が減る、もしくは同じ出費で満足が増えることになります。
わたしの節約は主に"我慢"や"努力"の賜物ではありません。 "効率化"の賜物です。 そして、それによってもたらされるものは、 "良い暮らし"や"正しい暮らし"ではなく"楽しい暮らし"です。
最後にわたしの座右の書をご紹介します。 そもそも羽仁もと子の家計簿をつけようと思ったのはこの本の影響です。 著者の町田貞子さんは明治生まれで、それはそれは立派な方なので、 すぐさまこの方のようになろうとも、なれるとも思いませんが、 究極の理想として、わたしの中にはいつもこの方の存在があります。 昔の日本人女性が、"耐える"ことだけを美徳としていると思ったら大間違い! やるべきことをきちんとやれば、こんなにも暮らしは楽しくなるんだと分かる、 わたしの大好きな本です。
初稿:2003年6月4日
最終更新日:2019年11月18日