ドイツ語

独検2級体験記

2011年11月、ドイツ語技能検定2級を受け、合格しました。 得点率は、82.14%でした。 これからドイツ語検定を受けようと思っていらっしゃる方、 昔学んだドイツ語をまたやり直そうと思っている方の参考にしていただければ幸いです。

0からのやり直し

 5年前にドイツ語検定4級を修得しましたが、その後、全くドイツ語に触れていませんでした。

 3級の問題集を買ってあったので、毎年検定試験の季節がめぐってくるたび「今年こそ3級を受けよう」と思いつつ、 いつも後回し。 今年の9月、やっと重い腰を上げ、当初は3級を目指すつもりでドイツ語を再開しました。

 5年ぶりにドイツ語を読んだ感想は、「何にも覚えていない!」でした。 見事なまでにサッパリ覚えていませんでした。単語も、文法も。 最初に読んだ本に過去形が出てきて驚いたものです。 「ドイツ語って、過去形があるんだ!」と。 そのくらい忘れていました。

 ただ、何も覚えていなくても、とりあえずやったことがあるのとないのとでは違うのかもしれません。 いきなりドイツ語を読み始めましたが、それでもなんとか読め、ドイツ語の世界にスルッと入っていかれました。 最初に読んだのは 『絵で見るドイツ語』という、 日本語なし、ドイツ語のみの本でしたが、イラストを見ながら読み進めることができました。

Das grosse Buch von Frosch und Kroete

 ほぼ同時にドイツ語の物語も読み始めました。 『Das grosse Buch von Frosch und Kroete』というものです。 「がまくんとかえるくん」ってご存知ですか? それのドイツ語訳です。 もともと大好きな童話で、英語とフランス語で読んだことがありました。 よく知っている話なので、分からない箇所があっても推測できてラクでした。

 自分にとってラクな本から入ったことで弾みがつき、 その後もドイツ語の入門書を図書館で借りてきては片っ端から読みました。 読めそうなもの、簡単そうなものから順番に。 「入門書」といっても、本によって内容のレベルはさまざま。 中にはとても入門書と思えないくらい難しいテキストもあるので、 そういうのは後回しにしました。

 入門書ばかり、二十冊近く読みました(読んだ本一覧参照)。 とはいえ、読んだのはドイツ語部分だけ。 日本語部分はとばしました。 練習問題もとばしました。 ドイツ語テキストといっても、たいてい4分の3は日本語。 ドイツ語だけ拾って読む分には、そんなに時間は食わず、 薄い本なら1時間、分厚い本でも、丸一日あれば読み終わりました。

 付属CDも、聞いたのはドイツ語の部分だけ。 読めば簡単に分かる文章でも、聞くのでは大違い。 一度や二度聞いたくらいでは意味がとれないので、iPodに取り込んで何度も聞きました。

CDブック はじめてのドイツ語

 本は、最初は図書館で借りましたが、特に気に入った本は購入したり、コピーをとったりして、繰り返し読んだり聞いたりしました。

 どの本にもそれぞれ個性や長所があって、読んだ本はどれも良かったですが、 もしこれからドイツ語を始める友達に「どれか一冊」と言われたら、迷わず ナツメ社の『はじめてのドイツ語』をお薦めします。 ボリュームがちょうどよく、紙面の読みやすさ、会話文の面白さ、CDの聴き取りやすさなど、 入門書に必要な要素がすべて揃った本だからです。

NHK新ドイツ語入門―Mit Pipo Deutsch lernen!

あと、個人的に大好きなのが、『NHKの新ドイツ語入門』。 内容は、火星の王子ピポとティナというドイツ人の女の子の会話が続き物のお話になっていて、文化の違う二人のトンチンカンな会話が面白い。 CDも、ピポとティナの声は子供の声。とってもかわいいので、毎日のように聞いていました。

 ハードカバーの立派な本で、糸とじ製本なので、本を開いたままにしておけるところも気に入っています。 NHKで一年に渡り放映されたシリーズの総集編だそうで、全部で50課。 本の名前は「入門」ですが、文法が詳しく、かなり読み応えがあるので、初心者にはきついと思います。 4級か3級をお持ちの方にお勧めします。

大好きな『Das grosse Buch von Frosch und Kroete』(がまくんとかえるくん)

2級申し込み

 独検に申し込んだのは、10月初旬です。 最初は3級に申し込むつもりだったのですが、試験時間を見たら、3級は午前。 朝が弱いわたしには午後試験の2級が魅力的に思えました。

 そこで、ダメ元で、本屋さんで2級の過去問題集を立ち読みしながら一部やってみました。 そしたらなんと、半分くらいできた・・・!

 当時まだドイツ語を再開してから3週間くらい。 検定試験まであと1か月半ありましたから、 「3週間で5割とれるなら、残り1か月半あれば、もう2、3割取れるんじゃ・・・?」と思い、 気が変わらないうちに急いで2級に申し込んでしまいました。

自作の動詞活用集

検定問題集

 検定試験に申し込んでからも、入門書や、ドイツ語の本を読み続け、 1カ月前になって、やっと検定問題集に取りかかり始めました。

 まず最初に取りかかったのは4級の問題集です。 5年前、4級を受けたときに使ったもの。 「もしこれができなかったらどうしよう~~?」とすごく心配でしたが、これは難なくできました。

 次に、いつか受けようと思って購入してあった3級問題集をやりました。これは難しかった。4級とは全然違う難しさにショックを受けました。 特にリスニング。 ディクテーションみたいなのがあって、これが全然できない・・・!! 3級でこんなに難しいんじゃ、2級は一体どれだけ難しいのか、と思い、2級に申し込んだことを後悔しました。

 次は2級問題集。 これは持っていなかったので、新たに購入しました。 過去問題集を買うか、問題集を買うか、迷いましたが、過去問題集よりも問題集のほうがだいぶ安かったので、ケチって問題集を買ったのです。

 解説が丁寧で、そういう意味では良い問題集でした。 問題も難しすぎず、ホッとしました。

 ただ残念ながら、これには模試がついていなかった。 わたしはどのくらいできるか知りたいのと、 問題ごとの時間配分を決めたかったので、 本番と同じ形式の模試がついていないのはネックでした。

 本番の予行演習がどうしてもしたい。 なので結局、過去問題集も買いました。 ところがショーック!! 先に買った検定問題集の半分以上が最近出た過去問題だったので、かなりの問題をすでにそこでやってしまっていたのです!!

 なので、過去問題集でもちゃんとした予行演習ができませんでした。 これでは正確な時間配分が決められない。 不安になり、一つ古い過去問題集を更に購入しました。

 でもこれも、先の2級問題集につまみ食いされている点では同じ。 過去問は8割以上取れましたが、一度やったことのある問題が多数含まれていたため、本当に本番で8割取れるのか、また、時間配分がうまくいくのかどうか分からず、不安でした。

 まったくもう、最初からケチらず素直に過去問題集を買えばよかったのに・・・! 安物買いの銭失いとはこのことです。

 これから問題集や過去問を買われるみなさまには、わたしの二の舞を踏まぬよう、 まずは過去問集の購入をお勧めします。独検の過去問題集は、級ごとに出ず、なぜか縦割りになっていて効率が悪いのですが、過去問を解かずして本番にチャレンジするのは無謀だと思います。

動詞活用表

リーディング

 ドイツ語を読むのが楽しくなってきたので、検定問題集を始めてからも、本は読み続けていました。 入門書にだいぶ慣れてきてからは、ドイツの出版社が外国人学習者向けに出版している「グレーデッドリーダーズ」も読みました。

 これはレベルごとに分けられているものです。わたしはA1、A2というレベルのものを探して読みました。 A1は、ドイツ語でよくつかわれる単語400語、A2は600語を使って書かれたものです。 その範囲を超える難しめの単語は欄外に注釈があり、易しい言葉で説明があります。

 特に面白かったのは「ハイジ」(A1)、 ミヒャエル・エンデの「レンヒェンのひみつ」(A2)、 ケストナーの「ふたごのロッテ」(A2)です。 少し易しくしてあるものだったとはいえ、ドイツの本がドイツ語で読める! 嬉しかったです。

ドイツ語のグレーデッドリーダーズ

文法

 文法法則は、本を読みながら自分で推測したり発見したりしたほうが楽しいので、 最初のうちはテキストの文法説明はなるべく読まないようにしていました。

 でもたまたま手にとった『素朴なぎもんからわかるドイツ文法』という本が 初心者向けでとても読みやすくて気に入ったので、これは最初から最後まで読みました。 自分では気付かなかった規則もわかって、よかったと思います。

 その後は、本を読んでいて文法的に気になる部分があると、文法書を読んで、 疑問を解決するようになりました。

 でも、なかなか疑問って解決できないものですね。 文法書のどこに書いてあるのかがなかなか見つからず、イライラ~~。 どんな疑問でも解決できるようにと、最初は欲張って7冊くらい文法書を机の端に積み上げていたのですが、 いろんな本をあちこち見ているから、却って効率が悪いのかもと思い、 メインを一冊に絞ることにしました。

必携ドイツ文法総まとめ

3週間くらいたっぷり迷ったのち、 結局それまでわたしの疑問に一番よく答えてくれたのは、 『必携ドイツ文法総まとめ』という 薄くて小さな本だという結論に達しました。

 この本には無駄がない。 説明が簡潔で、くどすぎないから却って分かりやすい。 見た目はコンパクトなのに、細かいことまでちゃんと載っている。 それに、知りたいことがとても探しやすいんです。 品詞ごとにページがまとまっているのと、 関連ページへの誘導があるからです。

 ただこの本、老眼のわたしにはちょっと文字が小さすぎました。 それが唯一のネック。 なので拡大コピーをとりました。 しょっちゅう開いているのでますますどこに何が書いてあるかが探しやすくなり、 自分なりの補足も余白に書き込んで、今ではすっかり「マイ・文法書」です^^。

リスニング

 リスニングは、 入門書についているCDを聞いたほか、 東京外国語大学 言語モジュールドイツ語の会話編をやりました。 言語モジュールのドイツ語は速い・・・!! でも、映像なので雰囲気があり、楽しめました。 ここに出てくるドイツ人女性のカーディガンがとても素敵だったので、検定からの帰り、デパートで 同じ色のカーディガンを真似っこして買っちゃいました^^。

ドイツ語聴き取りトレーニング

 市販のテキストでリスニングの練習に役だったのは『ドイツ語聴き取りトレーニング』と『CDで学ぶドイツ語入門』の2冊です。 簡単な問題もあれば、全くお手上げな問題もありましたが、どちらもゲーム感覚で楽しくやりました。『CDで学ぶ・・・』のほうは、文法あり、話す練習ありとバラエティに富んだ内容、『聴き取りトレーニング』はひたすら聴き取りに特化したワークブックです。

 数字の聴き取りなど、瞬時に聴き取る必要があるものは、何度も繰り返してやりました。数字はまだまだ苦手ですが、すこーし、反射的に聞きとれるようになったかな、と思います。

NHK CDブック―からだで覚える実践ドイツ語

 あと『NHKからだで覚える実践ドイツ語』の聴き取りトレーニングも良かったです。 抑揚の効いた女性の声がまず聴いていて楽しい。 扱う話の内容もウィットに富んでいて面白いし、比較的難しくなく、話の流れの中から自分の知りたい情報をキャッチする練習が楽しみながらできました。

 ついでに言うと、この本はめちゃくちゃ中身が濃いです。これで2100円なんて信じられない。ドイツ語テキストの中で、コスパフォ度ナンバーワン。 中身が濃すぎて入門書としては難しすぎますが、2級を目指すなら買ってソンはない一冊だと思います。

 ドイツ人と話したことがあるのは、十数年前、ドイツに1週間旅行したときだけ。 なのでリスニングなんて無理っ!と思っていましたが、 当日の試験では9問中、8問できました。 あの手この手でなるべくドイツ語を聞くチャンスを増やしたおかげかな、と思っています。

村の教会

単語・熟語

 単語は、覚えようと思ってもなかなか覚えられるものではないので、「この単語を覚えよう」などと意気込まず、 なるべく出会う回数を増やして、「一つでも頭に残ればラッキー♪」と思うことにしました。

 たくさんの本を繰り返し読んだのに加え、単語集や辞書をよく眺めていました。

例文活用 ドイツ重要単語4000

 超愛用の『ドイツ重要単語4000』(アルファベット順・カテゴリ別)を中心に、 シチュエーション別の『ドイツ語表現ファイル』や 『英語から覚えるドイツ語単語』(英語対比・品詞別)、 あとは入門書の巻末についたイラスト単語集など、纏め方や配列が異なる単語集を眺めては、 本で出会った単語を見つけて喜んでいました。

 市販のもの以外に、自分でも、基本動詞ファミリー別とか、名詞の複数形タイプ別、前綴り別などなど、 いろんな仲間集め単語集を作っていました。

 一つの単語をいろんな単語集でよくチェックしていました。 同じ単語を違ったくくり方の単語集で眺めると、違った仲間がいることがわかって面白いからです。

 たとえばankommen(到着する)という分離動詞は、アルファベット順の単語集で見ると、 anfangen(始める)やannehmen(受け取る)など、anという前綴りを持つほかの動詞とご近所です。

 基本動詞別にくくると、bekommen(得る)やumkommen(死ぬ)といったkommenファミリーの一員。

 更にkommen一家にはKunft家という名詞形の分家があって、 ジャンル別にくくると、分家のAnkunft(到着)君はAbfahrt(出発)君と犬猿の仲(対義語)、 Verkehr(交通)君はどっちの味方にもなれず、立ち往生・・・な~んて。

 こんな風に人間関係もとい単語関係をたどって行くのが面白くて、 何時間も飽きずに、あっちの単語集、こっちの単語集を見比べていました。

 熟語も、動詞別に分けたり、前置詞ごとに分けたり。 動詞ごとに分けると、たとえば sich über etw4 freuen(~で喜ぶ)、sich auf etw4 freuen(~を楽しみにする)が並び、 嬉しい気持ちは同じでも、前置詞によって、喜ぶ対象がすでに起きたことなのか、これから起こることなのかが違うんだなあ、とか。

 前置詞分けにすると、anの項にはan etw3 sterben(~で死ぬ)とかan etw3 erkranken(~に罹る)、an etw3 leiden(~を患う)などが並び、 こういうのを「病気のアン」って呼んでました(笑)。

 他にも、「考えるのはan」、「話すのはvon」、「尋ねるのはnach」、「返答はauf」なーんて分けていました。 例外もあるでしょうが、気にしなーい。 前置詞のイメージがざっくりつかめればいいので。

 こういうのは好きでやっていたことで、莫大な時間を食うので、あまり効率はよくないかもしれませんが、 とにかく楽しかったし、結果的にもこれでよかったと思っています。 検定試験に出てきた単語はほとんど見たことがあり、なんとなく意味がとれました。

自作単語帳

動詞活用

 動詞活用についても、単語同様、仲間分けばかりやっていました。

 実は不規則動詞にもタイプがあるんですよ。 たとえばziehenとかfliegenなど、主母音がieの動詞の大半は、過去形・過去分詞になったとき、ieoに変化します。 こういうタイプの動詞をわたしは「fliegen型」と呼んでいて、単語帳で見かけると、前にちっちゃな羽マークを赤ペンで書きいれていました。

 同様に、主母音がeiの動詞は、ほとんどがei-i-iまたはei-ie-ieという変化をします。 前者には「schneiden型」を示すハサミのマーク、 後者には「scheinen型」のお日様マークをつけました。 例外はheißenで、これはわたしが「fallen型」と呼ぶタイプのもの。 落下マークです。

 他にも、singen型マーク、swimmen型のお魚マークlesen型の本マークなどなど、 10数種類に分け、それぞれマークをつけました。

 けっこうこれ、楽しくって気に入ってます^^。

動詞活用タイプ分け

検定当日

 試験会場は、慶応大学の日吉キャンパスでした。 いつも検定試験は空席が目立ちますが、今回は出席率が良かったです。 受験者は若い方が多かったものの、3分の一ほどは、白髪混じりの男性や中年女性でした。

 試験は、筆記が先で、リスニングがあと。 筆記試験が終わったあと、休み時間があり、そのあとリスニング試験でした。 リスニングは、答えの選択肢を読む時間が、予め、問1で3分、問2で2分与えられました。

 リスニング試験の前にトイレ休憩があること、 リスニングの答えの選択肢を読む時間があること、 それを事前に知らされていなかったので不安でした。 事前に分かっていたら、もう少し気楽に受けられたかな、と思います。

まとめ

 独検の試験概要によれば2級は「ドイツ語授業を約180時間以上受講しているか,これと同じ程度の学習経験のある人」とのこと。 なので2級受験を決めた際、最低180時間はドイツ語に触れようと思いました。

 実際には200時間以上ドイツ語に触れたと思います。 ドイツ語検定を受けようと思い立ったのがきっかけで、ドイツ語にハマり、 とても楽しかった!! ドイツ語の本をたくさん読み、朗読をたくさん聴いたこの2か月間は、ちょっぴりドイツにいるような気分でした。

 200時間という時間はけっこう長いです。 楽しかったからこそ、続いたのだと思います。 楽しくなかったら続けられなかったと思います。

 なんとなく「検定試験」とか「学習」というと「=つまらない」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。 でも本来、新しいことを学ぶのは楽しいことのはず。 わたしは今回、独検受験をきっかけに、本当に楽しくドイツ語に触れることができました。

 学習方法は人それぞれだと思いますが、 この体験記が、ドイツ語をやり直そうと思っていらっしゃる方、独検2級受験をお考えの方の参考になれば、幸いです。

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