2カ月ほど前からスパニッシモ(spanisimo)でスペイン語のオンラインレッスンを受講しています。 一回50分のレッスンをほぼ毎日、これまで60回以上のレッスンを体験してきました。
入会の動機
入会するずっと前から、スカイプレッスンというものを一度やってみたいと思っていました。 でもこういうレッスンってたいてい自動更新制で、辞め時がわからないというか、一度入会してしまったら最後、なんとなく辞めにくいような気がして、 それでなかなか踏み切れずにいたのです。 つまり、卒業や進級のないエンドレスな感じがちょっと怖かった。
スパニッシモにも卒業や終了はありませんが、 全10回の「旅行会話コース」と、全140課の「スパニッシモアカデミー」というコースがあって、その「区切りがある感じ」が気に入りました。 とりあえず今は全140課の「スパニッシモアカデミー」終了まで、と考えていて、その後のことはまたそのとき考えるつもりでいます。
また、料金が安いのも魅力でした。 一ヶ月30回のコースにすると、50分のレッスンがなんと一回あたり500円で受けられるんです。 どうせやるなら、なるべく頻繁に、と思っていたので、この価格設定に飛びつきました。
けれどそれより何より気に入ったのは、グアテマラの語学学校と提携していることでした。 片桐はいりの「グアテマラの弟」を読んで以来、グアテマラという国に憧れていたからです。
グアテマラは、中米の小国ながら、知る人ぞ知るスペイン語教育のメッカ。 世界遺産の街アンティグアや同国第二の都市ケツアルテナンゴ(通称シエラxela)には、それぞれ数十もの語学学校があるといいます。 片桐はいりの弟さんも語学学校を経営しているのだそうで、その様子が本に描かれていました。 それでスペイン語を始めるより前から、わたしもいつかグアテマラでスペイン語を習ってみたいとひそかに夢見ていたのです。
今、日本にいながらにして夢が叶い、毎日グアテマラのスペイン語学校に通う日々です。 オンラインレッスンを「お茶の間留学」とはよく言ったものですね。スカイプというのはまるで、どらえもんの「どこでもドア」。 毎日地球の裏側の人とおしゃべりができる。 思い切って始めてみて、本当によかったと思っています。
時間について
グアテマラと日本では時差が15時間あり、夜と昼がほぼ逆です。 こっちが昼なら向こうは夜。 なので、レッスンがあるのは向こうの昼間の時間帯、つまり日本では朝か夜のみです。
わたしはたいてい朝、レッスンを受けています。 理由は二つ。 夜のほうが人気で予約がとりにくいから。 そして朝のほうが自分の予定が変わりにくいからです。
やってみると、朝からスペイン語って、けっこういいですよ^^。 起きたばかりでまだ頭が寝ていたりしますが、レッスンを受けているうちにだんだん起きてきます(笑)。 まさに「スペイン語で目覚める朝」^^。
昼間、あれやこれやしながら、朝のレッスンの余韻に浸れるところも嬉しい^^。 家事の合間に宿題や予復習をタラタラやりながら、 「あそこでこう言えばよかったなあ」とか「明日はこう言ってみよう」と考えたりして、 一日中、なんとなくスペイン語を身近に感じていられます。
スパニッシモアカデミーについて
スパニッシモでは、一回ごとに、フリーセッション(自由会話)、トラベル会話、スパニッシモアカデミーの3種類から授業を選べるようになっています。
わたしはこれまでずっと「スパニッシモアカデミー」をチョイスしてきました。 文法に沿って進んでいくタイプの授業です。
すでにスペイン語文法は一通り学んでいましたが、スペイン語で学ぶスペイン語文法は、 日本語で学ぶのとは少し趣が違い、新鮮です。 最初の頃はpretérito、condiccionalといった文法用語に戸惑いましたが、今はもうすっかり慣れました。 「名は体を表す」というのか、名前から、その時制の性格がわかるようなところもあります。
現在、60回のレッスンで、全140回のスパニッシモアカデミーの半分くらいまできたところ。 直説法の現在・再起動詞・点過去・線過去・未来・過去未来・完了形・進行形・受動態と進んできて、 現在は命令法をやっています。
目安としては1レッスンで1課進む感じですが、きっちり1レッスン1課と決まっているわけではなく、 1レッスンで2課進むこともあれば、1課を2レッスンかけてやることもあります。
また、先生との会話が楽しく、途中で脱線してしまうことも。 そもそもテキストの例文が突っ込みどころ満載なので、つい余計なチャチャを入れてしまい、 先生もそれに反応して、文法そっちのけで盛り上がり、気づいたら授業時間が終わっていた、なんてこともしょっちゅうです。
わたしはよっぽど雑談好きだと思われているのか、 どの先生も本題に入るとき、「ではほんのちょこっとだけ、文法もやりましょうねー」となだめるようにおっしゃいます(笑)。 実は文法も好きで、だからこそアカデミーを選んでいるんですけどね。 でも時間の半分は文法、半分は雑談、という今のペースが気に入っています。
テキストについて
スパニッシモアカデミーにはテキストがあります。 テキストは、進度に合わせて、先生がチャットで送ってくれたり、マイページからダウンロードできるようになっています。
このテキストが、わたしは大好き! 全140課が、30課~40課ごとに4つの級に分かれているのですが、 級によって色が違うんです^^。 一課終わらないと、次の課のテキストがもらえないのですが、 級があがるときなど、次は何色だろう?とワクワクします。
一課につき2ページ~5ページあるテキストは、割り付け印刷でA4の紙に2ページづつ印刷し、ある程度たまったら製本、という形で保管しています。
テキストにはけっこうヘンな課題があって、 たとえば次の休みに何をしますかという質問集の中に、「昆虫料理やゲテモノを食べてみたいですか?」とか「バンジージャンプをやってみたいですか?」とか(怖)。 ゲテモノは先生もゴメンだそうですが、バンジージャンプはやったことがあって、これはけっこうオススメだそうです^^。
「遅刻の言い訳を考えなさい」、っていうのもあったな。 「電車が遅れて・・・って言うと思う。でもほんとに電車が遅れたときは、みんなも一斉に遅刻するのよね」って言ったら、 「そういうときは、『わたし』の電車が遅れた、って言えばいいのよ」と先生(笑)。
「『マヤの人々は忽然と、一体どこに消えたのか?』という問いにもっともらしく答えなさい」とか。 「ジャングルが手狭になったので、南下して、今はケツアルテナンゴで農業やってます」と答えたらウケました(笑)。
こういう課題があるときは自習に時間がかかって大変なのですが、わたしは根が受け狙いのため、けっこう張り切ってしまいます。 まあ、そうしょっちゅうではないので、普段はラクですが。
例題文にもちょくちょく突っ込みどころがあり(最近では、命令法にしなさいという動詞の中に「苦しむ」があった(怖))、 話がはずむきっかけを作ってくれる、いいテキストだと思います^^。
先生について
スパニッシモでは、1回ごとに先生が選べます。 いろんな先生を試してみたかったので、最初のうちは現在活躍中の先生約20人全員のレッスンを受けました。 同じ先生をリピートしたほうがお互いラクなので、最近は10人くらいの先生に絞って授業を受けていますが (え? 絞り込んでるうちに入らないって?(笑))、予約を入れるとき、どの先生を指名するかで迷います。
ちなみに先生がたとは基本「tú」で話しています。 最初から「tú」の先生がほとんど。 でも一人、「わたしは誰に対してもustedを使う」という主義の先生がいて、この先生とはずっと「usted」です。 決して他人行儀なわけではなく、授業はいつも大盛り上がり。 「usted」で話すいい練習になるので、よくお願いしています。
先生方のタイプはさまざま。 女性も男性もいるし、二十歳そこそこの先生もいれば、50代の先生もいます。 性格もライフスタイルも趣味もさまざまですが、みな時間に正確で、熱心で、親切です。
あと素晴らしいのは、どの先生の発音も聞き取りやすいこと。 語学CDが聞き取れないことはしょっちゅうですが、 先生方のおっしゃることが何度聞いても聞き取れなくて困った、という経験はありません。 スピードから言ったら、入門書についているCDより、スパニッシモの先生方が話すスピードのほうが絶対速いはず。 でもなぜか意外と聞き取れます。
「聞き取れる」って偉大ですよー。なぜって、聞き取りやすい相手には、こっちも言葉が出てきやすいからです。
どうやら「どれだけスペイン語が喋れるかは、相手の言葉がどれだけ聞き取れるかにかかっている」みたい。 これはこれはスパニッシモで発見したことです。 相手の言うことがすんなりわかると、それに対する返答もすんなり口から出てくる。
回線の調子が悪かったりして、先生の声が聞き取りづらかったりすると、途端に自分も喋れなくなります。 それまでいい感じにスペイン語で思考していても、「あ、ダメ、聞き取れない!」と焦った瞬間、フッと思考が日本語になり、 それまでの世界がガタガタ崩れていくのが自分でわかる。
ずっと聞き取れていると、それがない。 頭の中はずーっとスペイン語モードのまま。スペイン語の思考をそのまま口に出すだけだからラクなのだと思います。
でもおそらく実際にスペイン語圏に行って町の人と喋ったら、こんなにやすやすと聞き取れたり喋れたりしないのでは、と思います。 やはりこれは、相手がスペイン語教育のプロだから。 これまで生徒を受け持った経験から、外国人に分かりやすいように、聞き取りやすいように、いろいろ工夫してくれているのではないかな、と。
あと助かるのが、先生方はみなカンが良いこと。 相当ヘンなスペイン語でも、こちらが何をいわんとしているか、ちゃんと分かってくれる。 わたしは言い間違えの天才で、「hoja(葉)」を「hija(娘)」と言ってしまったり、 「humano(人間)」を「hermano(兄弟)」、 「Guatemala(グアテマラ)」を「Granada(グラナダ)」と言ってしまったりがしょっちゅうですが、 先生方は大笑いしながら、あるいは「なんでグラナダなんだよー」と泣きまねをしながら、「それを言うなら○○ね」といつもちゃんと直してくれます^^。
「zanahoria(ニンジン)」を「horaria(時刻の)」と言ってしまったときはさすがに通じなかったけど(笑)、あとからニンジンだと分かると、 「うん、ま、似てなくもないかな」といって爆笑してました。
「ロミオはジュリエットが死んでいるのを発見した」という文を読んだとき、なぜか「ジュリエット(スペイン語ではフリエット)」を「フアニータ」と言ってしまい、 「あら、別の女がいたんだ」という先生の一言に爆笑したことも。
言い間違えに限らず、とにかく授業では爆笑してばかり。 年齢や性別、あるいは趣味が違っていても、人間て案外、なんらかの接点があるものですね。 アウトドア派の先生とは、ランニングの話で盛り上がれるし、読書が好きな先生とは、本の話で盛り上がれる。 子供を持つ先生とは子育ての話で盛り上がれるし、料理好きな先生と、料理のレシピを教えあったりも。
また、いろんな先生と話すと、先生がた同士の人間関係が見えて面白いです。 先生同士、同僚である上に、親友同士だったり、いとこ同士だったりすることもあり、 スカイプのうしろのほうで別の先生が手を振ってくれたりすることもあります。 スカイプで繋がる時間・狭い画面の中だけでなく、それ以外の時間、周囲の空間で、本当にグアテマラの社会が進行しているんだなあ、というのが実感できて面白いです。
グアテマラの独立記念日に「今日はお祭りなの。このレッスンが終わったら、わたしも踊りに行くんだー」という先生のうしろから、 通りを歩く楽隊のにぎやかな太鼓の音が聞こえてきたことも。 その翌日、別の先生が真っ赤な目をしていたので、どうしたのかたずねたら、 「夕べは一晩中、楽隊が隣の公園で音楽をかき鳴らしていて、こっちは寝不足だー」ですと。 まるで連続ドラマを見ているようです。
そうかと思えば、急に寒くなった10月半ば、「ちょっと風邪を引いちゃって」と言ったら、 「風邪をひいてる日本人は今日あなたで3人目」と言われ、 翌日別の先生にもまた同じことを言われました。 「一体日本はどうしちゃったの?」と先生も不思議がっておられましたが、 地球の裏側にあるグアテマラを中継して自国の状況を知るこっちもなんだか可笑しかったです。
たまにはまじめな話をすることもあります。 宗教や社会問題の話。 少子化が問題の日本、栄養失調の子供があふれているグアテマラ。 お互いの国が抱えている問題について話し合ったり。
たとえばノーベル平和賞を受賞したグアテマラ女性リゴベルタ・メンチュウ。 さぞかしグアテマラの誇りかと思いきや、 大学教育を受けてもいないのにイギリスの大学から名誉博士号を授与された彼女に、ヨーロッパ諸国の傀儡として利用される危険性を感じる人もいるようです。
「大事なのは肩書きではなく、真の教育」。 スパニシモは雇用の創出のみならず、教師の育成に力を入れている。 その姿勢に共感した、と、複数の先生が異口同音に言っていました。
わたしが感じるのは、先生方が、自分の将来だけでなく、国、あるいは社会の未来をもあわせて考えているということです。 「どうしたら、みんながもっと幸せに、豊かになれるんだろう」って。 他愛のない楽しい話題がほとんどだけれど、ときおりふとこうした話になります。
上達について
実は、スペイン語で喋ったのは、スパニッシモの体験レッスンで喋ったのが生まれて初めて。 最初は日本語で考えて、それをいちいちスペイン語に直して・・・という感じで、「はじめまして」の挨拶さえ、うまく言えませんでした。
でも2ヶ月毎日喋ってきた今は、自分の言いたいことのアウトラインはだいたい伝えられているかな、と思います。 たまたま最近娘が一ヶ月、家を留守にして帰ってきたのですが、 「行く前は、エートエート言いながら喋ってたママが、帰ってきたらオールスペイン語で喋ってたから、びっくりした」と言っていました。
まあ、これにはちょっとしたからくりがありまして、 日本語で「エート、エート」言うのをやめて、スペイン語で「Vamos a ver…」って言うようにしたのです。 「あれ、なんだっけ?」を「No lo recuerdo ahora」、 「あれどこやったっけ? ・・・あ、ここだ」を「A dónde va? …ah sí, está aquí」、 「えーーー? どうだろう??」を「No sé, no sé, pero…」とか。
先生の言うこともおおよそのところは分かります。 まあ一度聞いて分からなければ、何度でも聞き返せるし、 どうしても聞き取れなければ、書いてもらうこともできますからね。 一度でスパッと分かる、という意味ではないです。
知らない単語は、別の単語に置き換えてもらったり、簡単な言葉で説明してもらったり。 料理や地名は説明を聞いてもイメージがいまいち思い浮かばず、写真や画像検索のURLが送られてきて、それを見て「ああこんな感じか」と分かることもあります。
最初のころはスペイン語ではどうしても分からなくて英語で言ってもらうことがよくありましたが、最近は英語の出番も減りました。
こちらが何か言うときも、知らない単語はスペイン語で説明すれば、正しい単語を教えてもらえます。 「布を作る機械」と言えば、「機織り機」、「hacerの点過去」と言えば「hize」とか。 先生を辞書代わりに使っちゃっています。
あと、抽象名詞が分からなければ、英単語をスペイン語っぽく言ってみる。 形容詞が分からなければ、名詞の語尾に-osoをつけて言ってみる(笑)。 これらはあんがい成功率が高いです^^。 たとえそんな単語がなかったとしても、こちらが何をいわんとしているのかは伝わり、先生は笑いながら正しい単語を教えてくれます。
この手が効かず、最近、お手上げだった単語は「下剤」くらいですかね。 読んだ本の内容の説明にどうしても必要で、 「錠剤・薬・トイレに急行する」とかいろいろ言ってみたけど通じなかったので、辞書で引きました^^;。 そういうときのために一応辞書は手元に置いていますが、まあほぼお守りのようなものです。ほとんど使いません。
読んだ本の内容の説明を聞かれることがよくあるのですが、これはまだわたしには難しい。 「主人公は誰?」「舞台はどこ?」のような質問にひとつひとつ答えるのはできるのですが、 いきなり「あらすじを言ってみて」といわれると、考えることが多すぎて、もう何がなにやら・・・。 悲しいほど無茶苦茶になってしまいます。
先日なんか、「その下世話な話の内容を、上品な言葉で語りなおしてみて」と言われ、 出だしこそ「Érase una vez・・・(昔昔あるところに)」と上品に始めたのですが、 「下剤を間違って飲み、トイレに間に合わなくて・・・」って、一体どこが上品なんだか・・・^^;。
ただ、こういう課題を無理にでもやると、自分の問題点がよく分かりますね。 このときも、点過去の活用がまったくダメだな、と気づいたので、それからはなるべく点過去に親しむようにしています。
外国語の上達って、なかなか自分の目には見えません。先生方は徹底して「褒めて伸ばす」方針で、 「エクセレンテ~!」「ペルフェークトー!」「アプレンデス・ムイ・ラピドー!(aprendes muy rápido)」 などと言葉を尽くして褒めてくれますが、 褒めてくれる気持ちは嬉しいものの、 自分で体感しないことには、その言葉を信じていいものかどうか分からない。
なのでわたしは、普段よく話す先生方のほかに 「一ヶ月おきに話す先生」を二人決め、 「3ヶ月くらいしたらまた話そう」と決めている先生も別に何人か決めています。 毎日毎週、同じ先生とばかり話していると進歩が見えませんが、 いつもとは違った先生と話すと「あれ、前回よりちょっと会話がスムーズになったかな?」と実感できるからです。
その他の効用
スパニシモを始めて毎日グアテマラと繋がるようになってからというもの、わたしの生活にはスペイン語以外にもさまざまな変化がありました。
「最近走ってる?」という先生の問いに「sí」と答えたい一心で、サボリぎみのランニングを再開してみたり、 サルサが好きという先生に触発されて、夫にラテンダンスを教えてもらったり。 体のリズムがラテンに近づいたのでしょうか、 なんと不思議なことに、以前は絶対無理っと思っていたチャチャやジャイブのステップが踏めるようになりました!(驚)
また、本好きな先生から紹介された作家の本を探して読んだり、マヤ文明やグアテマラに関する本を読んだり。 グアテマラは中南米の中でもマヤ系先住民の文化が色濃く残る稀有な国。 知れば知るほど面白くて、もう夢中。 スペイン語の本に限らず、日本語の本も最近たくさん読んでいます。
人と話すと、やはりいろいろ影響されますね。 生活全般において、良い刺激になっています。