多言語

多言語同時学習の効用

 前回に引き続き、今日は10ヶ国語同時学習をやって良かったことを書きます。

 10ヶ国語同時学習の効用、それは「他の言語と並べて比べることで、一つ一つの言語への理解が深まる」ことに尽きます。「へー、そうなんだ!」と思うことがたくさんあります。もう毎日が発見の連続。だからヒマさえあれば(いやヒマがなくても)次々とやってしまうのだと思います。

 元々「思い出す」ために始めた多言語同時学習でしたが、実際は「今まで知らなかったこと」もたくさん学んでいる気がします。それも「習熟度の低い言語が、習熟度の高い言語に引き上げられる」とは限らず、「習熟度が高い言語が習熟度が低い言語に教えられる」こともあるから面白い。

宵っ張りなのか朝寝坊なのか

 たとえば、この英文↓どういう意味だと思いますか?

He sleeps late.

mondly

 わたしは最初「彼は遅くに眠る」という意味だと思いました。彼は宵っ張りなんだと思った。

 ところがこれがとんだ勘違い。

 その間違いに気づかせてくれたのはロシア語とスペイン語とドイツ語でした。

 まず

Он спит допоздна.

mondly

このロシア語を見た時は「あれ、なんでпоздноじゃあないんだろう」と軽く思った程度でした。

 そのあと

Él duerme hasta tarde.
(彼は遅くまで眠る)

mondly

 このスペイン語を見た時は「なんでhasta?? このスペイン語訳変じゃない?」と思った。自分の理解よりもMondlyの翻訳を疑ったのです。

 しかし

Er schläft lange.
(彼は長いこと眠る)

mondly

このドイツ語訳を見て、やっと自分を疑い、英和を引きました。

 そして知ったことには

He sleeps late.

mondly

この英文の意味は「彼は遅くに眠る」ではなく「彼は遅くまで眠る」という意味なんですね!! 彼は宵っ張りじゃなく、朝寝坊だったというわけ。

 もう、があああん、って感じです。こんな簡単な英文の意味を取り違えるなんてね。しかも強固に思い込み、物証が三つ揃うまで信じなかったとは。

 英語を媒体に他の外国語を学んでいるつもりでしたが、実際には英語だってこんなもん、という好例でしょう。

タイヤって何?

 英語どころか、日本語の勉強になることもあります。

 たとえば、わたしは「タイヤ」という言葉の意味をすっかり勘違いしていたようです。「そのタイヤは黒い」にあたるアラビア語訳を見たとき、混乱しました。

إطارة العجلات سوداء

mondly

 おそらくアラビア語には「タイヤ」という単語がないのでしょう。なのでここで「タイヤ」は「車輪の枠」と表現されているのです。「車輪の枠」というのがどうもわたしの「タイヤ」のイメージに合わなかったものだから、混乱したのです。

 そのあとトルコ語訳を見て、やっと事態が呑み込めてきました。

Lastikler siyahtır.

mondly

 トルコ語では「タイヤ」を「lastik(ゴム)」。これを見て、タイヤというのは車輪の回りにつけるゴムの部分のことだったんだ、と知りました。

 これはけっこう衝撃的な事実でした。実はいままでタイヤというのは車輪全体を指すのだと思っていたからです。だから「自転車のタイヤのゴムを交換しなくちゃ」とか言ってた^^;。半世紀以上も日本語ネイティブをやっているにもかかわらず、タイヤのなんたるかを勘違いしていたわけです。どひゃあー!

 残念ながら、こういう母語における勘違いは通常、外国語を学んでも是正されません。

 むしろ、そもそもの概念が間違っていると、外国語にも波及し、間違いが増殖していきます。

タイヤ = tire(英) = neumático(西) = pneu(仏) = Reifen(独) = шина(露) = ・・・・

という具合に。大本の日本語を間違えて覚えていると、それに相当する他の言語の単語の意味も全部、連鎖して間違えるのです。

 でもアラビア語の「タイヤ」のように「そのものズバリ」の単語がなかったり、トルコ語の「タイヤ」のように、他の意味と共有されている単語を見ると、やっとその間違いの連鎖に歯止めがかかる。

 こういうのって本当に面白いと思いました。


 ところでこの10言語同時学習のベースに使っているのはMondlyですが、Mondly以外にもいろんなツールを使って補完しています。次回はそれらのツールについて書きます。

函館市熱帯植物園にて。温泉に浸かるおさるたち。めっちゃかわいいでござる~!
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