2021年10月、第78回ロシア語能力検定2級を受検し、合格しました。
得点は以下のとおりでした。
- 文法 79/100点
- 露文和訳 44/50点
- 和文露訳 42/50点
- 聴取 42/50点
- 口頭作文 35/50点
- 総合点 242/300点(得点率: 80.6%)
このページでは、 ロシア語能力検定試験2級に向けてやったことを書きます。 露検2級の受検をお考えの方の参考になれば幸いです。
受検を決心するまで
初めて2級受検を意識したのは、2018年の秋に3級を受けた日です。3級の試験で手ごたえを感じたので、「次は2級だ」と思い、もののついでに買ってあった2級の過去問をやってみました。
でも全く歯が立ちませんでした。なんとかすこし分かりそうな気がするのは露文和訳だけ。それ以外の科目はもう、自分の実力との乖離が激しすぎ、茫然とするばかりでした。
結局3級は300点満点中275点の高得点で受かりました。最高点とわずか3点差でしたが、それでも2級は、はるか彼方に思えました。何をどうしたら、こんな問題ができるようになるのか、さっぱり分かりませんでした。今すぐ大車輪で取り組み始めたとしても、翌年の秋に受かる気が全くしませんでした。
やる気を失い、翌年2019年秋の2級は受験を見送りました。
その翌年2020年秋の受検も、最初から諦めて見送りました。
そして3年目の2021年、「ダメ元」でやっと重い腰を上げました。2級と3級の差は、それくらい大きいものでした。
ロシア語フリートーク
2級受検を見送った2019年、2020年にロシア語に関してやっていたのは、以下の二つです。
- ネイティブとのフリートーク
- ロシア語で毎日一文書く
フリートークは、DMM英会話のオンラインレッスンで、週に1度くらいのペースで行っていました。 DMM英会話はその名の通り、英会話レッスンを提供するサービスですが、 世界中の講師が在籍していて、英語に限らず様々な言語で講師と会話することができるのです。
レッスンは一回25分。 お相手はロシア語圏(ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、中央アジア諸国)出身のロシア語ネイティブ。 話題は、その日にあったことや読んだ本の内容を話したり、 2020年にはコロナウィルスの状況の情報交換などをしていました。
ロシア語毎日一文
「毎日一文」の日課は、最初はMondlyという語学アプリに出てくる例文をノートに書き写していただけでした。
そのうち自分で考えた文を書くようになりました。一行日記というか、つぶやきのようなもので、思ったことをそのままロシア語にしていました。2級受検準備のつもりはなかったので、短くて簡単な文ばかりでした。
たとえばこんな感じ:
- Пора пить чай.(お茶の時間です)
- Вчера был длинный день.(昨日は長い一日だった)
- Сакура сейчас в полном цвету.(いま桜が満開です)
- Сегодня ветер сильный.(今日は風が強い)
- К счастью, я их не выбросила!(ああよかった、捨ててなくて)
- Может быть, куплю.(買っちゃうかも)
- На конец я купила.(結局買っちゃいました)
書くときには辞書や自動翻訳などを好きなだけ使い、 書き終えた文は、週に一度のレッスンでネイティブにまとめてチェックしてもらいました。
ロシア語インプット
こんな感じで、2年以上、ロシア語に乗り気ではない日々が続きました。
その風向きが変わったのは2021年の夏ごろです。たまたま興味を持った日本語教育で、日本語に限らず どんな外国語学習にも活かせそうな学習法を知ったのがきっかけで、それをロシア語に活かしてみたくなりました。
特に興味を惹かれたのは、スティーヴン・クラッシェンの「インプット仮説」。「理解可能なインプットを大量にすることにより、言語の習得が効果的に進む」という説です。今までロシア語が上達しなかったのはインプットが足りていなかったせいだと思い、ロシア語レッスンの頻度を、週に一度から毎日に上げました。また、できるだけロシア語の動画を見たり、ポッドキャストを聞くことにしました。
まあ結果から言えば、動画・ポッドキャストは7月の1か月で挫折しました。動画もポッドキャストもさっぱり分からなくて落胆し、8月以降は見る頻度が目に見えて落ちました。
Learn Russian
一方、ロシア語レッスンは楽しく、8月以降も毎日ロシア語で話しました。
ある日のこと、ある先生が良いサイトを見つけてきてくれました。「Learn Russian」というロシア語学習サイトです。試しにやってみたら面白く、すぐにハマりました。
このサイトには100課のレッスンがあり、すべてドリル形式になっています。最初は挨拶言葉から始まりますが、徐々に難しくなり、運動動詞の怒涛のようなドリルを経て、 最後のほうは様々な義務表現など、かなり難しかったです。気の利いたロシア語会話が全課にあり、筆記だけでなく、聞き取りの練習にもなりました。
最初のうちは簡単で量も少なかったですが、中盤から大変になってきて、全100レッスンやり終えるのに100時間近くかかりました。
ちなみにこのサイトには答えがついていませんが、 有志の方々が模範解答 をアップしてくださっています。
2級申し込みへ
Learn Russianを終えると、2級試験が気になり、受けたくなりました。でも試しに過去問をやってみると、相変わらずできませんでした。
それでも3年前よりは多少進歩していました。 聴解問題をいくつか聞いてみたところ、けっこう聞き取れました。 3年前はもう、一体何の話なのかすら分からなかったのに。
筆記問題も、Learn Russianで学んだ単語が過去問に出てきて、意味が分かって喜んだりしました。けれども相変わらず歯が立たないことに変わりはなく、特に文法の大問Ⅰは、こんな難しい文章が試験までのあと1か月や2か月で読めるようになるとはとても思えませんでした。
今回も見送ろうかとギリギリまで迷いましたが、申し込みの最終日、あと2時間で申し込み締め切りというときに、衝動的に申し込んでしまいました。
受からなくてもいい。とにかく受けてみたかったのです。
過去問
露検に申し込んでから試験まで、毎日のオンラインレッスン以外にやったのは過去問だけです。試験まであと1か月半。購入してあった13回分の過去問(2008年第52回~2020年第76回まで)をこなすだけで精一杯だろうと思い、他のことには一切手を出さないことにしました。
過去問一周目
過去問は8月の末からすでに解き始めていましたが、解き終えたのは9月末。丸々ひと月かかりました。
過去問を解くと、自分ができないという事実を突きつけられるので、非常に辛かったです。特に文法。文法は他の科目よりも出来不出来が分かりやすいため、億劫でたまりませんでした。
そこで、エクセルで進捗表を作り、 やり終えた単元のマスに日付を書き入れることにしました。 苦手なところは後に回し、まだしもやる気のする単元から先にやりました。
とにかく目を瞑ってでも一周目を終わらせなくてはと思ったので、やり方は極めていいかげん。文法の答え合わせはしましたが、講評は読まず、なぜ答えがそうなるかも考えませんでした。とにかく何でもいいから早く一周目を終えようと必死だったのです。
過去問二周目
二周目は主にノート作りをしました。
まず過去問の文章をOCRで読み込んで文字化した後、 RussianGram.comというサイトを使い、ウダレーニエ(力点)を自動的に打ってもらいました。力点の表示方法はアクセント記号、下線、赤字の三種類から選べ、わたしは赤字で表示してもらいました。それをワードに張り付け、B5の紙の片面に印刷しました。
印刷したものは、左ページに印刷面、右ページに白い裏面が来るように穴を開け、リヒトラブ・ツイストリングノートに綴じました。
そして、左ページのロシア語文に出てきた分からない単語・言い回しの意味を辞書で調べ、 右ページの白い面に手書きしました。
ロシア語は青、和訳は赤で書き、覚えたい単語は黄色いペンで囲みました。
印刷した文章は、以下の5つです。
- 文法大問Ⅰ(正答をはめ込んだもの)
- 露文和訳の問題文
- 和文露訳の解答例
- 聴解のスクリプト
- 口頭作文用の自分の作文(ネイティブチェック済み)
この中で、何と言っても一番難しいのは文法問題の最初の長文(大問Ⅰ)です。 知らない単語がこんなにあるか、っていうくらい知らない単語ばっかりでした。
一口に二級の試験問題といっても、文章の難易度は様々なのですね。 難しいほうから
難 文法問題Ⅰの長文 > 露文和訳 > 和文露訳 ≒ 聴解 易
という順番になると思います。 文法の大問1を13回分まとめてやり、次に露文和訳を13回分・・・というように、 縦割りで難しいほうから順にやっていったので、最初は大変でしたが、だんだん楽になりました。
最後に文法の大問Ⅱ~Ⅳをやり、二周目は終了。これも大問別に縦割りでやりました。大問Ⅱ13回分→大問Ⅲ13回分→大問Ⅳ13回分というように。
類似問題を立て続けにこなすほうが時間の効率が良く、また法則性が見えやすいことを発見しました。
過去問三周目
三周目を始めたのは試験の2週間前です。最初の二日はノートの音読に専念しました。正答をはめ込んだ文法大問Ⅰ、露文和訳の問題文、和文露訳の解答例、聴解のスクリプト、 口頭作文用の自分の作文(ネイティブチェック済み)を読みました。
その後3日は文法大問Ⅱ~Ⅳに専念しました。 同じ問題を何度やっても間違えるのはなぜだろうと考えたら、細かい規則がまだ呑み込めていないことに気づきました。 「なんとなく」でやっているから間違うのです。もっとシステマチックに考えなくては。
そこで、大問Ⅱの動詞の不完了・完了体の切り分け、大問Ⅲの数詞の格変化、 大問Ⅳ形動詞・副動詞の作り方をそれぞれ自分なりに整理して表に纏めました。
自分のために作った表なので、他の方にとって使いやすいかどうかは分かりませんが、 もしよかったらお使いください。画像の上で右クリックすると名前をつけて保存できます。
この表では自分が覚えたい・覚えやすい活用形のみ採用しました。 例えば、2~4までの数字がついた活動体が女性名詞である場合の主格や対格の形容詞は複数主格でも良い (むしろそっちが主流らしい)ですが、ややこしいので複数生格のみ載せました。
時間はすごくかかりましたが、これは作って良かったです。 曖昧な部分がすっきり分かり、正答率が上がりました。
最後に2日かけて文法大問Ⅰを終え、これで三周目が終わりました。
過去問四周目
当初、最後の一週間は、音読と、 覚えるべき単語・熟語の洗い出しをして過ごそうと思っていました。
それで一周目のとき片手間に作った単語帳をパソコンで清書し始めたのですが、やたらと時間を食うので途中でやめ、急遽4周目をやることにしました。
4周目に一番時間をかけたのは和文露訳です。3日かけて13回分を書き直しました。 和文露訳は、一周目で二度書いてネイティブにもチェックしてもらい、 二周目・三周目では模範解答を何度も音読したはずなのですが、いざ四週目でもう一度書いてみると、びっくりするほど時間はかかるわ、ミスは多いわで、ショックでした。あと試験まで数日なのにできない自分を見るのが嫌で嫌で、本当に辛かったです。
その後二日は文法問題を一気にやりました。 4周目はケアレスミス撲滅を心掛けました。
具体的には、
- 再帰動詞のсяの付け忘れ
- 複数造格の最後のиの付け忘れ
- 形容詞語尾-ы-と-и-の取り違え
- 前置詞のвをвоにし忘れ
- 文の最初を大文字にし忘れ
自分の犯しやすいミスを意識することで、ケアレスミスが減りました。
聴取はメモの取り方を練習、口頭作文は準備時間の10分間に3分で言うことを書く練習をしました。 露文和訳は音読をしました。
試験準備にかけた時間
過去問13回分を4周するのにかけた時間は300時間程度だと思います。受検を考え始めてから試験当日までの約60日、一日平均5時間勉強しました。
Learn Russianをやっていた8月の学習時間を足すと、約400時間ということになります。
以下は、文法問題の進捗表です。 青は満点、緑はまあまあだったところです。 これを見ると、 周を重ねるごとに進歩したりしなかったり、 時には後退していたりと、その悪戦苦闘ぶりがお分かりいただけると思います。
戦略
今回の2級受検は、わたしにとって完全な背伸びだったので、 どうしたら心に余裕を持って解答し、限られた実力を出し切れるだろうかと考え、 科目ごとに方針を決めました。
これは我ながら、なかなかうまい戦略でした。 作戦を練っておいたおかげで、試験中焦ったり迷ったりすることなく、 平常心で試験に臨むことができました。
文法
文法について事前に決めておいたのは、以下のことです。
- 文法にかける時間は40分
- 大問Ⅰの長文を全部読もうとしない
- 一瞬で答えが思い浮かばない問は飛ばす
- ケアレスミスは最後にまとめてチェック
文法で最も大事なのは必要以上に時間をかけないこと。 文法のあとに露文和訳、和文露訳が控えているからです。 露文和訳、和文露訳にしわ寄せが来ないよう、 出来ても出来なくても文法は40分で終えると決めました。
文法問題は40問以上あるので、これを40分で解くということは、 一問の割り当ては一分以下ということ。 でもいまさら急にロシア語を読むスピードを上げるのは無理なので、 切り捨てられるものは切り捨てることにしました。
一番手っ取り早く時間を切り詰められるのは、大問Ⅰの長文を読む時間です。 文法大問Ⅰの長文は年度によってはかなり難解で、 そもそも受検者が全部理解できることを想定して作られてはいるものではないように思います。 むしろ 知らない単語が沢山あっても、文の構造が掴めるかどうかが試されている気がします。 この難解な長文の内容を理解しようとすると果てしなく時間がかかるので、 文の構造さえ分かれば、内容は気にしないことにしました。
時間削減第二プランは、一瞬で答えが思い浮かばない問は飛ばすこと。 知らないものはいくら考えたところで知らないので、 パッと答えが思い浮かばなかったら次の問題へ行き、文法を全部やり終えてからまた戻ってきて考えることにしました。 これはいいアイデアでした。 時間を置いてから戻ってくると、最初は気づかなかった視点に気づき、あっさり解答できた問題がありました。
文法のケアレスミスには試験準備期間の最後まで悩まされました。 でも一問ごとにケアレスミスをチェックすると効率が悪い。 なので大問ごとにまとめてチェックすることにしました。
ちなみに、わたしがよくやるケアレスミスは以下です。
- 再帰動詞のсяの付け忘れ
- 複数造格の最後のиの付け忘れ
- 単数造格の形容詞語尾-ымを-омと書き間違う
- 形容詞語尾-ы-と-и-の取り違え
- 前置詞のвをвоにし忘れ
- 文の最初を大文字にし忘れ
露文和訳
露文和訳には30分を振り当てました。
2級の和文露訳は長く、休まず書いても20分かかります。自然な訳にこだわって書き直すと思った以上に時間のロスが大きいことが過去問をやってみてわかったので、多少訳が不自然でも気にせず、書き直さないことにしました。
和文露訳
和文露訳は40分と決めました。
最近の和文露訳問題文は以前と比べ、使用されている語彙は難しくないものの、訳しにくい日本語が多い気がします。新聞の投書欄への投稿が元になっているからかなと思います。
過去問ではそうした文をどう訳そうかと悩みに悩んで時間ばかり食い、あとで模範解答を見て「えっ、そんな意訳でいいの?」と何度も思った経験があるので、試験本番では元の表現に忠実でなくても、意訳でOKと思うことにしました。
あと、稚拙な文でもいいので、使い慣れた単語、表現を駆使して書こうと思いました。
聴解
聴解は、3回繰り返して聞いた内容を日本語でできるだけ詳しく再現するという、ロシア語能力検定二級ならではのユニークな問題です。
これは、とにかく落ち着いて聞くこと、分からなくてもパニックしないことを肝に銘じ、メモする目安を以下のように決めました。
- 一度目はメモよりも、大意を取ること優先
- 二度目はメモを詳しく取る
- 三度目はメモをチェック・書き足す
口頭作文
口頭作文は、与えられたお題に沿って10分で内容を考え、3分でボイスレコーダーに向かって話すという、 これまたロシア語能力検定二級ならではのユニークな課題です。
これに関しては公式サイトに以下のように書かれています。
準備時間は10分間です。露文を作って、そのまま録音の時に読んでも良いし、概要だけをメモしておいて、録音時に完全な文にしても構いません
http://www.tokyorus.ac.jp/kentei/grade.html
(下線はうさぎが追加)
つまり、以下の二通りの戦略が考えられるわけです。
- 準備時間に露文をきっちり書き、録音時はそれを丸読みする
- 準備時間に概略をメモし、録音時はメモを見ながら即興で話す
わたしは最初に2を試しました。ネイティブの先生の前で13回分の過去問のテーマについて話しました。けれどもこれは上がってしまい、格変化も動詞活用もメチャクチャになってしまいました。
そこで、1を採用しました。準備時間の10分間に3分間分のスピーチを書いておき、それをただ読むことにしたのです。
また、口頭作文が怖いのは、テーマによっては話す内容を何も思いつかない場合があること。 そんな時のためにあらかじめ、安全策を用意しておきました。
- 内容は創作でも構わない
- 内容を思いつかなければ、一般論から始める
- 対比を多用(過去と現在、利点と欠点、夏と冬、北と南など)
- メモには単語の格変化をしっかり書く
1は、本当の自分では語れないテーマの場合、 別人格になりきって内容をでっちあげる覚悟を決めました。
2は、何も話すことを思いつかなかったとき用に、どんな話題にも使える万能テンプレートを用意しました。
Отношение с 〇〇 зависит от человека. Один любит 〇〇, а другой нет.
(〇〇との付き合い方は、人によって様々です。〇〇が好きな人もいれば、嫌いな人もいます)
〇〇にテーマを入れ込めば、出だしの一文は完成! この一文で時間を稼ぎ、そのあとは「昔はこうだったが、今はこう」みたいな簡単な対比文をつなげて乗り切ることにしました。
試験を受けてみて
さて、戦略の成果やいかに。実際に試験を受けてみた感触と結果を書きます。
文法
40分かかると想定していた文法は30分で終えることができました。
大問Ⅰの長文は予定通り読みませんでしたが、 例年より難しい語彙が少なく、おおよその内容が分かりました。
問題も例年より易しい気がしましたが、合格発表後に採点してみたら大問Ⅰの20問中、 半分くらいしか正解できていませんでした。 22問ある大問Ⅱ~Ⅳも、ミスがあったのではないかと思います。
その割には79点という高い得点でした。 部分点がもらえたのか、もしくは問によって配点が異なり、 配点が大きい問の正答率が良かったのかもしれません。
露文和訳
露文和訳はだいたい書けましたが、一文だけ訳さずに飛ばした文がありました。知らない単語があって意味が分からなかったからです。 他にも知らない単語はちょこちょこありましたが、前後の文脈から意味を推測して書きました。送られてきた模範解答を見たら、おおよそ合っていたようです。得点は50点満点で44点でした。
和文露訳
文法、露文和訳がそれぞれ30分で終えられたので、和文露訳に入ったときにはまだ1時間残っており、落ち着いて取り組むことができました。
細かい表現は覚えていませんが、「苦手」という言葉を「得意ではない」と解釈するか「好きではない」と解釈するかで迷った記憶があります。結局、ロシア語で書くのがより簡単、という大人の都合で後者の解釈を選択しました。あとで送られてきた冊子を確認したら、模範解答でもそう解釈してありました。
意訳でも稚拙な表現でもいいので、最初から最後まで訳し漏れがないよう注意して書きました。スペルがうろ覚えの単語は極力避け、使い慣れた単語、表現を多用しました。
格変化や動詞活用にも気をつけましたが、それでもあちこち間違えるのがわたしの常。きっとあちこち難はあったと思います。得点は50点満点中42点でした。
聴解
聴解は落ち着いて聞きとることができ、メモもしっかり取れました。そこで、解答用紙にびっしり、全和訳くらいの勢いで書きました。解答を書いていると、周りから聞こえてくるエンピツの音がだんだん途絶えていきました。エンピツを置いたのは、教室でわたしが最後だったかもしれません。
あとで解答例を見たところ、大筋のところはちゃんと書けているようでした。ただ一番の大失敗は「地質学者」を「地理学者」にしてしまったこと。しかも3、4回出てきて、そのたびに間違えました。あと「笑い出した」を「笑った」と書くなど、細かい部分で減点されたのでしょう。得点は50点満点中42点でした。
口頭作文
口頭作文は5科目の中で一番出来なかった感じがしました。 得点も5科目中一番低い35点でした。
今回のテーマは「私と電話」。わたしとしては、過去14回の中で最も話しづらいテーマでした。「電話はほとんどかけません」以外、何を言えばいいのやら・・・。
そこで予め練っておいた戦略をここぞとばかり行使しました。
Отношение с телефоном зависит от человека. Один часто звонит по телефону, а другой предпочитает электронную почту.
И я не часто звоню по телефону, хотя у меня два телефона: обычный телефон и айфон. Айфон очень полезный. Я часто фотографирую на айфон, смотрю YouTube видео и делаю покупки в Интернете, но я редко использую его как телефон.
Раньше, когда я хотела сообщаться с кем-то, у меня был только телефон, а теперь у меня еще есть другие разные способы связи; например электронная почта, Line, Skype, и т.д. Это очень хорошо. Я довольна сегодняшней жизнью.
(訳)電話との付き合い方は人によって様々です。電話をよく掛ける人もいれば、Eメールを好む人もいます。 わたしはといえば、普通の電話とiPhone、電話を二台持っているにも関わらず、あまり電話をかけません。 iPhoneで写真を撮ったり、YouTube動画を見たり、インターネット上で買い物をしますが、 電話としては使うことは滅多にありません。 昔は誰かと連絡を取りたいときには、電話しかありませんでした。 でも今は、メールやラインやスカイプなど、他にも様々な通信手段があります。 これは大変良いことです。わたしは今の生活に満足しています。
だいたいこんな感じのことを準備時間に書きました。最初の7分でここまで書き、何か書き足すことはないかと残りの3分間、一生懸命考えましたが、何も思いつきませんでした。
録音時間にはこれを丸読みしました。短すぎて時間が余ると分かっていたので、できるだけゆっくり読みましたが、それでもちょうど2分で読み終えてしまいました。アドリブで何か言い足そうと思いましたが、何も思いつきませんでした。周囲からはまだ話し声が聞こえてくる中、試験終了まで無言で待つ1分間は、果てしなく長かったです。
ところで準備時間10分が始まる前「正しくロシア語の文が作れているか、発音やイントネーションはどうかを見る試験です」というような説明がありました。
ここから分かることは、「口頭作文」という試験は 必ずしも「スピーチ」の試験ではないということです。もちろん話すのが得意ならば「スピーチ」の試験ととらえ、即興で話すこともできますが、もしスピーチが苦手でも、諦めるのはまだ早い。
「口頭作文」は「準備の10分間で作文」をし「3分間でそれを朗読する」、 つまり「作文+朗読」の試験とみることもできます。作文は和文露訳の延長ですし、朗読は4級・3級試験でもやってきたことなので、やりようによっては、特にネイティブとの会話経験がなくても 対応可能ではないかという印象を受けました。
まとめ
いつもは「受かりそうな試験」を選んで受けるわたしですが、今回は合格の見込みが低い勝負に挑みました。一昨年も昨年も見送ったので、今年は挑戦くらいしてみたかったのです。
まだ申し込みのときは「これから試験当日までの1か月半で、もしかしたら実力がついて合格が掴めるかも」という淡い期待を抱いていましたが、試験が近づくにつれ「合格は無理そう」という諦めモードに変わりました。過去問を何度繰り返しても、もう一つ確かな手ごたえが感じられなかったからです。
それでも試験の前日まで学習を続け、少しでも実力が発揮できるよう戦略を立て、当日ちゃんと受けに行ったのは、我ながら偉かったと思います。どれが一つ欠けても、この結果はなかったでしょう。
たとえ合格という目に見える結果に結びつかなかったとしても、やったことは何一つ無駄にならないのが語学です。合格・不合格は0と1で分けられてしまいますが、実際には0.5もあれば、0.99もある。やればやっただけ、自分の身になるのです。
だから、安心して「ダメ元」で頑張ればいいのです。
それから、自分の環境に不平を言わないこと。実はわたしは、留学はおろか、まだロシア語圏に足を踏み入れたことすらありません。年齢も58歳で、決して若くはありません。
でも 「留学したことがないから無理」「学校や教室に通っていないから無理」「若くないから無理」というのは ただの言い訳。知恵を絞って工夫すれば、それしきのことはなんとかなるものです。
自分の弱みよりも、自分の「強み」を数え、それをうまく生かせばよいのです。たとえばわたしの場合、それは「これまでに培った人生経験」と 「自由になる時間が比較的多いこと」でした。
みなさまの参考になれば幸いです。