2017年10月7日、ロシア語能力検定4級を受検しました。 語学系検定の受検は、ロシア語が8言語目です。
結果は合格。 翌11月20日に公式サイトで合格者の受検番号が公表されました。 同日夕刻には、合格証と点数、当日の試験問題と朗読見本のCDが郵送されてきました。
得点は以下の通りでした:
- 文法 98/100点
- 露文和訳 49/50点
- 和文露訳 45/50点
- 朗読 40/50点
- 総合点 232/250点(得点率: 92.8%)
以下に、ロシア語を始めてから、検定に合格するまでの経緯を 他言語の受検経験と比較しつつ書きます。 露検4級の受検をお考えの方の参考になれば幸いです。
二つのロシア語検定
一般に「ロシア語検定」と呼ばれる検定試験は二つあるようです。
一つは、ロシア連邦教育・科学省が主催する ロシア語検定。 通称:ТРКИ。
もう一つは、東京ロシア語学院が主催する ロシア語能力検定。 通称:露検。 わたしが受けたのはこちらの和製検定のほうです。
わたしが受けた4級は、露検では一番下の入門級。 でもТРКИでは4級は一番上の級だそうです。 紛らわしいですね。
難易度について
すでに書いた通り、わたしが受けた4級は、露検では一番下の級です。 けれども他の語学系検定の下位級と比べると難しく感じました。
語学系の検定試験で一番下の級というと、 比較的容易に設定され、合格率も高いのが通常です。たとえば 独検の5級は合格率が85%~90%で、4級でも平均70%です。仏検も同様です。
一方、露検4級の合格率は、ここ7年、70%を超えることはなく、今回に至っては50%でした。しかもこの合格率は合格者数を受験者数で割って100をかけたものです。もし仏検のように出願者(当日欠席した人も含む)で割ると合格率は更に下がり、平年で50%~60%、今回は36%ということになります。
合格難易度が高い理由は
- 4科目のうち得点が60%に満たない科目が一つでもあると不合格になる
- 選択問題が少なく、和訳や露作文など、記述式がメイン
- 朗読が課される
などだと思います。
ただ4級にはリスニングがなく、聴き取りが苦手なわたしには朗報でした。
問題の傾向が例年よく似ているので、対策はしやすく、 下位級の割にはしっかり実力を判定されるものの、 やればやったなりの効果が見えやすい試験だと思います。
昔とった杵柄
実は、最初にロシア語を始めたのは、大学生、まだ10代の頃の話です。 今50代なので、なんと36年前(笑)。
といっても、1年半くらい教室に通っただけ。 予習も復習もろくにやらなかったので落ちこぼれ、 終了試験で中級に上がれなかったのを機会に辞めてしまいました。
覚えたのは簡単な挨拶と、「これは家です」レベルのフレーズをいくつか。 ただその1年半は全く無駄だったわけではありませんでした。 貴重なものを二つ得ました。
一つは、巻き舌ができるようになったこと。 先生に「巻き舌は練習すれば誰でも必ずできる。 その程度の努力も払わないような生徒は要らない」と脅され、 丸々2週間、ヒマさえあれば「トルルルル・・・」と言って必死に特訓した結果、できるようになりました。
もう一つは、キリル文字の読み書きができるようになったこと。 これも先生の勧めで、筆記体で書くように言われ、ロシア語ペン習字に励んだ結果、書けるようになりました。 ブロック体よりも筆記体のほうがはるかに速く書けるので、 これもよかったと思っています。
ロシア語文法は単語はすっかり忘れてしまいましたが、 巻き舌とキリル文字の筆記体は30年以上経っても体が覚えていました。
35年ぶりに再開
ロシア語を再開したのは、2017年6月のことです。 たまたま図書館で手にとった入門テキストをスキットだけ読んだのがきっかけです。
キリル文字を読めるのが嬉しくて、和訳を参照しながら最後の課まで読みました。 弾みがついて、次に借りたテキストも同様にスキットだけ最後まで読みました。
この二冊目のテキストがとても面白く、それでロシア語にハマりました。 黒田龍之助著『ニューエクスプレス ロシア語』です(当時は旧版でした)。wikipediaによれば、黒田先生のお父上は落語家だそうです。だからかな、落語みたいな課もありました。
会話スキットの内容も面白いのですが、実は練習問題にもサイドストーリーが掲載されており、 それが会話スキットのおさらいになっているだけでなく、 ストーリー的にも会話スキットに関わってくるのが面白かったです。
また、入門テキストといえども簡単なのは最初の1、2課だけで、あとは急に難しくなる場合も多いですが、 この本は最後のほうまで、難易度の変化が比較的ゆるやかなところが良かったです。
この本の他にも、入門書やフレーズ集、NHKテキストなどを10数種類、手に入るものから順に読みました。
検定試験対策
ロシア語をちょっと真面目にやってみようかと思ったのは、再開から1ヵ月後の7月です。 物書堂のロシア語辞書アプリを購入し、 検定の受検も考え始めました。
受検を迷い、結局申し込んだのは8月下旬でしたが、 受ける場合に備え、とにかく動詞活用と格変化を覚えようと思い、 エクセルで、格変化のテンプレートを作りました。
リンクの上で右クリック、「名前をつけてリンク先を保存」を選ぶと、ダウンロードできます。 もしよかったら、ご利用ください。
単語は『例文付き ロシア語能力検定試験によく出る基本単語』のほか『ロシア語能力検定試験 合格への手引き―3級・4級対策問題集』の巻末についていた単語集で、まだ覚えていない単語をチェックしました。
この二冊、いずれも絶版で現在手に入りにくくなっています。 わたしはたまたまあったので使いましたが、必須というほどではない気がします。
4級の単語チェックに使えるものは他にもあります。
一つは、先に挙げた 『ニューエクスプレス ロシア語』の 「単語力アップ」と練習問題のページに設けられた7つずつの単語。 4級で問われる単語とシンクロ度が高く、重宝しました。
もう一つは『入門者および初級者のためのロシア語文法ハンドブック』の 巻末についている単語集です。 露検4、3級とТРКИ入門・基礎レベルに共通する単語が800語ちょっと収められており、4級に出る単語にはマークがついています。
この本は、わたしのイチオシです。 巻末の単語集だけでなく、まるごと一冊、無駄なページがない。タイトル通り文法書ですが、普通の文法書のように重かったり分厚かったりせず、軽くてコンパクトなところが気に入っています。
「入門者・初級者のための」とありますが、副動詞や形動詞まで載っているので、露検2級くらいまではこれで充分なのでは、と思っています。 お値段は税込み1320円と控え目。 買ってソンはない一冊です。
過去問は露検の公式サイトから過去5回分を取り寄せ、1週間くらい間を置いて3回ずつやりました。 先に書いた検定問題集も 4級の部分だけやりました。 検定問題集は、あればあったで安心ですが、過去問さえやれば、それでも十分と思います。
過去問は一部550円、それに更に送料がかかり、決して安くはありませんが、 検定問題集も過去問も全くやらずに受けるのは無謀だと思います。一番下の級といえども、露検はそんなに楽勝な試験ではないからです。
当日の様子
会場は横浜。桜木町にあるロシア語教室でした。受験者は20数名。語学検定には珍しく、女性より男性のほうが多かったです。女性は若い方が多く、男性は60代くらいまで幅広い年齢層でした。
試験は筆記(文法、露文和訳、和文露訳)90分、休憩を挟んで朗読約10分でした。
筆記試験は問題用紙9ページ、解答用紙7ページ。けっこうなボリュームです。和訳・露訳など書かせる問題が多く、時間的余裕があるとはいえませんでした。過去問で時間配分を確かめておいて正解でした。
問題用紙と解答用紙は別々で、両方とも回収されました。(問題用紙は、結果通知の際、新しいのがもらえます)
朗読も筆記と同じ教室で行なわれましたが、2部交代制でした。あまり人が多いと朗読の録音に支障をきたすから、とのことでした。わたしは後の回だったので、別室で10分ほどの待ちがありました。
朗読はICレコーダーで録音し、受検番号を記入した小袋にSDカードを入れて提出しました。 大きくボタンが3つしかなく、機械モノが苦手な人にも操作がしやすいICレコーダーでした。OLYMPUS ICレコーダー VoiceTrek DP-301だと思います。
まずは受検番号と名前を録音して確認し、それから試験開始。
朗読録音の前に文をざっと読んで準備する時間が5分ありました。その間、筆記用具で文にメモを書き入れるのも自由でした。
朗読録音時間は3分間。「何回読んでも構わない。 言い直しても構わないし、どんどん読んでいって、最後まで読んでから、また最初から読み直してもいい。とにかく一番いいところをとって採点する」とのことでした。
朗読を開始するときは、録音ボタンの代わりに間違って停止ボタンを押してしまわないよう、気をつけました。 それだと録音できませんからね。
周りに人が大勢いる場での朗読。緊張のあまり読めなくなるのでは?と心配しましたが、5分間の準備期間にカタカナでルビ振りまくり、イントネーションの上げ下げなども書き入れまくったら、落ち着いて読むことができました。
前もって家で、時間を計りながら過去問を読み、どのくらいの速さで読むのが自分にとってちょうどいいか、確かめておいたのは正解でした。おかげさまで一度最後まで読み終えることができ、二度目も半分以上読むことができました。
試験官の開始の合図を聞くが速いか、すぐ読み始めましたが、これはうまい戦略でした。全部読みきれなかったらどうしようという不安から早く読み始めたのですが、他の人の朗読を聞かなくて済むという副効用がありました。ここで躊躇していたら、他の受験者の上手な朗読を聞いてしまい、圧倒されていたかも。自分の声で人の声が聞こえず、朗読に集中できたので、さっさと読み始めて正解でした。
録音後は、録音できているかどうか確認する時間がありました。 ちゃんと録音できていて安心しました。
まとめ
今回も楽しい検定試験でした。 たまたま当日、会場のロシア語教室が近くのイベントに出店しており、 ボルシチやピロシキを食べ、ロシアグッズをお土産に買って帰れたのが良い思い出となりました。
昔は検定試験というと「資格取得」の側面が強かったと思いますが、最近は自己のモチベーション維持のための一種のイベントとして活用している人が多いと思います。わたしもその一人です。履歴書には書けるような資格ではありませんが、合格してとても嬉しいです。励みになります。
出願者数が減少傾向にある語学検定もある中、 露検は出願者数は右肩上がりに増えており、今年は1400人を越しました。これからも徐々に増えていくことと思います。
4級の受験料が5000円というのは他の検定に比べると高めですが、記述が多く、朗読まであることを考えると妥当だと思います。級による料金差が少ないので、上位級のほうがお得感があります。
次回は3級を受けられたらいいな、と思っています。文法範囲も単語も増えるので大変ですが、頑張ります。