ついにロシア語の文法書を買いました。「入門者および初級者のためのロシア語文法ハンドブック(三訂版)」です。(※新版はこちら:「四訂版」)
文法書にしては薄くて軽く、お値段もプチプラ。気楽に開き、気兼ねなく書き込み、早速大活躍です。
万華鏡のようにロシア語の世界が広がってきて、心がフルフルしてしまう。こういう本を読むと、ロシア語始めてよかったな、外国語やっててよかった!って思います。
今日はこの本について、そして文法書について、熱く、長ーく語ります。
驚きがいっぱい!
この本のどこがいいって、知りたいことが、知りたいような形で載っていることです。纏めて欲しいような形で纏まっている。
ロシア語文法がこんなにすっきりと簡潔に纏まっている本に今まで出会わなかったので、自分でノートに整理していましたが纏めきれず、アタマの中はもうごっちゃごちゃでした。
なーんだ、ここに全部きれいに纏まっていたんですね。もう感動するやら悔しいやら。もっと早くにこの本の存在を知りたかった。
動詞活用
たとえば動詞活用。好き勝手に変化するように見えていた動詞のほとんどが、実は二つの規則変化いずれかのバリエーションなんですね。それがたった見開き4ページにパッと目で見てわかるような形でパターン分けされて載っている。
一気に気が楽になりました。2億人以上もの人が喋っている言語だもの、きっと何かパターンがあるはずと思って探してはいたけれど、知ってる動詞の数が少なすぎてパターンが見えず、規則変化以外の動詞は個別に覚えなくちゃならないのかと途方に暮れていた。
ああよかった、ロシア語にもロシア語なりにパターンがあるんですね!
パターンが分かった=覚えられる、ってものではありませんが、頭の中がだいぶ整理された気がする。初めて見る動詞活用でも、パターンに当てはめ、「あ、これは第一変化C型(идти型)だな」とか「これは第二変化B型(видеть型)だー」とか、「すでに知ってる」感があるのが嬉しい。
格変化
格変化もそうです。変化パターンがやたら多い上に持ってきて、さらに不規則が追い討ちをかけてきて、何がなんだか分からなかった。
でもこの本を読んだら何が基本で、何が傍流なのかが分かってすっきり。不規則には不規則なりにパターンがあるってことがわかりました。
たとえば。
город(街)、дом(家)、поезд(汽車)の共通点はなーんだ?
・・・正解は「複数形の主格が-аで終わること」。そして「複数形の全ての格でアクセントが語尾に移動すること」。アクセントの移動と複数の語尾変化がセット! この場合のアクセントの移動は気まぐれじゃなかったんですね。感動しました。
アスペクト
不完了体と完了体の違いも、似た例文を二つ並べ、体感的に分かるようになっています。たとえば
Кто-то приходил. 誰かが来ていました。<もう帰って、その場にいない>
入門者および初級者のためのロシア語文法ハンドブック(三訂版) p.126
Кто-то пришёл. 誰かが来ています。<まだその場にいる>
こういう対比が、いくつもあって、読んでいるとなんとなく不完了体と完了体の雰囲気の違いが分かってくる。
こういう違いって、言葉で説明されるより、実例を見せてもらったほうが早い。сяがつく動詞とつかない動詞の違い、定動詞と不定動詞の違いなど、万事この調子。徹底的に違いを見せてくれます。
文法を知るということ
文法って、法則性自体も大事だけれど、
- その法則の適用範囲
- 他の法則との違い
が知りたい。だから、
- 仲間集め
- ペアの対比
が重要。それをきっちりやってくれているから、この本はすごく気持ちが良い。
自分で仲間集め・ペアの対比を一から見つけたかった気持ちもありますが、おそらく自分でやったら何年もかかり、発見に行き着く前に挫折していたと思うので、この本に出合えて本当によかったです。
この本が整理の指針を与えてくれたから、あとは更なる仲間集めを自分でやり、この本の余白に書き足していけばいい。
まさにハンドブック
「ハンドブック」(便覧)とは
ある分野において、使用頻度が高い内容を簡潔にまとめた書物の事とwikipediaにあります。まさにこの本は題名どおり、「ロシア語文法ハンドブック」だなあと思います。
薄くて軽い
まず、とっても薄手。171ページしかない。中学の教科書みたいな簡素な作りです。
適度な余白があり、日本語は小さめ、ロシア語の文字は大きめで読みやすい。
本が薄いことには、三つの効用があります。
- 威圧感がない
- ページが勝手に閉じない
- かさ張らず、携帯に便利
分厚い本は「こんなに覚えることがあるのか・・・」と気がめいりますが、本が薄いと気がラク。
それにこの本は無線とじなのに、薄いからか、机の上に開いておいても、勝手にページが閉じません。紙が分厚すぎないのもいいのかな。とにかく見たいページを開きっぱなしにしておけるのはすごく便利です。
かさばらず、軽量で、持ち運びにも便利です。
参照しやすい
見開きで一単元となっており、見開きの左肩に見出しと通し番号が振ってあるので、どこに何が書かれているかが分かりやすいです。
見出しの位置が決まっているのは、とても参照しやすくて便利。
文法書の選び方
わたしにとって文法書は、辞書、単語集に次いで、絶対手元に置きたい三種の神器の一つです。
今はネットでけっこう調べられますが、だからといって紙の文法書なしで済ませようとは思わない。気に入ったものが見つかるまで、辛抱強く探します。
わたしが選ぶ文法書の基準は以下の通りです。
網羅的
基本的な文法に関し、知りたいことがたいてい何でも分かる。
リファレンス性
参照すべきページが探しやすい。
読みやすさ
文字の大きさが適切で、なおかつメモを書き込む余白がある。
開きやすさ
本を広げたままにしておける工夫がある。(糸とじ製本、薄い、など)
薄い
威圧感がない。
軽い
携帯に便利。
今回の「ロシア語文法ハンドブック」はなんと、この条件を全て満たしています。こんな本はなかなかない。
他の言語で以上の条件を全て満たしているのは、
- フランス語のケータイ「万能」フランス語文法(駿河台出版社)
くらいかなあ。
- スペイン語のテーブル式 基礎スペイン語便覧(評論社)
は、4以外満たしています(開いたままにしておくのはちと難しい)。
そして今回の
- ロシア語の入門者および初級者のためのロシア語文法ハンドブック(アーバンプロ出版センター)
この三つ、出版社も著者も違うのに、使い勝手の良さがよく似てます。どれも印欧語族ですね。印欧語族以外の言語は基本的な発想からして全く違うから、薄い文法書には纏めにくいのかもしれません。
どんなニーズには向かないか
今のわたしにとってはこれがベストの選択ですが、何事も適所適材。向かない場合もあると思います。
文法表嫌いな人には向かない
文法書なので、文法アレルギーの人には向かないと思います。あと本のどこを開いても、見開きに最低一つは表があるので、表アレルギーの方にも向かないと思う。
「最初の一冊」向きではない
すでに少しはロシア語をかじってる人向き。たとえばこの本にはCDがついていないし、ルビもありません。よって、最初の一冊は普通の入門書のほうが無難な気がします。
中・上級者向けではない
はしがきに、
本書は、大学の第2外国語としてロシア語を学習されている方には1年半~2年ほど、ロシア語を専門に勉強されている方には、1年~1年半の使用に耐えるように編集されています。
とあります。たぶん中上級者になると、物足りなくなるのではないかと。
二年後
わたしはプレッシャーに弱く、最初から文法書が立派だと、気後れしてしまいます。一生ロシア語をやり続けなくてはならない気がして。
この本はそういうプレッシャーがないところがありがたいです。価格も安いので、1、2年で物足りなくなってもいいや、と思える。むしろ、早くこの文法書が物足りなくなるくらいうまくなりたい。
ややもすると永遠に思える外国語学習、一生モノの文法書。そこに「期限」という発想を取り入れたのは新しく、ありがたいです。
でも本当に、この本で物足りなくなる日が果たして来るのでしょうか。しかもたった2年で・・・?
もしそこまで行けたら大したもの。そんな日が自分に来るなんて、今はとても信じられません。
2年も使ったら、きっとボロボロになるでしょうね。それまでロシア語を続けられたらいいなあー。
そしていつか、「そろそろこの本では物足りなくなってきた」などと、うそぶいてみたいです。