スペイン語

規則と例外

  スペイン語不規則動詞の一覧を作りました。

スペイン語不規則動詞一覧(クリックすると大きく表示されます)

 スペイン語の動詞がどんなときに不規則になるかを図示したものです。「この動詞はこういうとき不規則だから、気をつけなさいよ」と自分に注意を促すために作りました。

 これを作るのはけっこう大変で、土日が丸々潰れました。何がそんなに大変だったかというと、どこまでが規則で、どこから不規則と考えればいいのかが分からなかったことです。

どこまでが規則で、どこからが不規則か

 たとえば以下のような例は不規則に分類されることがよくありますが、わたしは結果的に、どれも規則変化とみなし、不規則動詞にはカウントしませんでした。その理由を示します。

cogercojo

 活用語尾だけでなく、語末の子音が変わる動詞があります。たとえばcoger。この動詞の一人称現在は、規則変化であればcogoとなるはずのところ、cojo(コホ)となります。

 しかし、スペルが変わるのは正書法に基づく表記上の問題であって、発音は規則的なので、これは規則変化のうちと考えることにしました。

conocerconozco

 一人称現在のとき、子音を足す動詞があります。たとえば conocer。発音に従えば conozo、表記に従えば conoco となりそうなところ、そのどちらでもなく、conozco となります。

 しかし、母音+cer、母音+cirで終わる動詞のほとんどがそういう変化をするので(例外はdecirで終わる動詞)、不定詞のスペルを見れば一人称現在の活用が分かります。個別に覚えなくても活用できるのは規則動詞である証拠と考えました。

perderpierdo

 現在形のとき、短母音が二重母音に変わる動詞があります。たとえば perder。規則変化であれば、perdo になるところ、実際は pierdo と、単母音が二重母音に変わります。しかもこの現象は気まぐれで、どの動詞がそういう変化を起こすか、スペルからは予測不可能

 ただし、こういう動詞はたくさんあり、二重母音が出現するタイミングには完全な規則性があるので、「そういうタイプの規則変化」と判断しました。

残ったのは大物動詞ばかり

 以上のように整理していくと、純粋に不規則な活用を含む動詞は、この図に書かれたものだけになりました。

 結果的に、超がつくほど重要な動詞ばかりが不規則動詞として残りました。

 この中でも中心となるのは、たくさんの枠が絡み合った左側のあたりです。ir(行く)、ser(である)の二大巨頭がいるあたり。他の動詞は「不規則になる部分もある」程度で、枠に囲まれた活用形のときだけ気を付ければ、あとは規則変化で良いということになります。

 手元の文法書には不規則動詞活用表として56パターンも並んでいますが、こんなふうに整理してみると、ひとつひとつ個別に覚えるしかないパターンはそんなにたくさんはなく、しかも、一つ一つ活用を見ていくと、例外は例外同士、案外似ていることが分かってホッとしました。

例外か規則かは母集団によって決まる

 しかし文法って面白いですね。規則の中にも例外があって、例外の中にも規則がある。文法で「規則」と呼ぶのは、単に多数派という意味だから、例外つまり少数派ばかりを集めると、多数派が少数派、つまり「規則」が逆に「例外」となる。

 その入れ子現象は、名詞でも起こります。スペイン語には、最後がaで終わる名詞は女性名詞という規則がありますが、例外として、maで終わる名詞は男性名詞であるという規則があります。その中でも例外として、maで終わる女性名詞があります。さて、そういう名詞は規則的といえるでしょうか、それとも例外でしょうか。

 これは母集団を何にするかで、どちらともいえますね。aで終わる女性名詞という意味では規則的だし、maで終わるのに女性名詞という意味では例外と言えるでしょう。


 「これは例外か? それとも規則のうちか? その根拠は??」などと考えていたら、規則活用も不規則の形も、なんとなくイメージできるようになった気がします。時間はかかりましたが、かかったといってもたった二日。世界の大言語・スペイン語の動詞活用が、たった二日でおおよそ整理できたのだから、悪くない時間投資だったと言えるかもしれません。

 もしよかったら、画像をダウンロードしてお使いください。
 

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