昨年12月に台湾に一週間滞在しました。台湾華語で喋った経験について書きます。
とはいえ、実際に使ったのは、台湾華語というより限りなく普通話(中国の中国語)です。何しろ台湾華語に関しては一冊入門書読んだのみ。ほとんど学んだことがないので( ̄▽ ̄;)
普通話との違いも分からず、唯一台湾華語として発したのは「早安(おはようございます)」のみ(;^_^A 最初は「早上好」と挨拶していたのですが「台湾では『おはよう』は『早安』を使うんですよ」と教えていただいたので、それからは「早安」と言うようにしたのです。
現地の人が使っている単語をそのまま借用すれば台湾華語っぽくなると思い、聞いた単語をそのまま使うようにもしていました。たとえばカフェで他のお客さんが店員さんに「廁所在哪裡?(トイレはどこかしら?)」と尋ねているのを聞き、半分独り言のような感じで「有廁所嗎?(トイレがあるのね)」と口に出したら「有。但裡面有人。(あるけど、いま人が入ってます)」という返事が返ってきました。
自動翻訳をかけるときは繁体字で検索結果を表示していたので、頭の中でもなんとなく繁体字をイメージしながら喋っていたと思います。これがわたしの「なんちゃって台湾華語」です^^。
台湾華語と普通話の違い
そもそも台湾華語と普通話はどれくらい、どこが違うのでしょうか。話によると「普通話(中国の中国語)」と「台湾華語」の違いはアメリカ英語とイギリス英語の違い程度で、相互理解が十分可能だそうです。実際、現地で話してみた感じでも、普通話でも通じましたし、相手の言っていることも分かりました。
繁体字
ただし、台湾と中国では、使う文字が異なります。普通話は日本の漢字よりも簡略化された簡体字を使って記されますが、台湾華語は日本の旧字体のような、字画数の多い繁体字で記されます。
繁体字は現在の日本の漢字と同一か、画数は多くても割と似ていますが(「学」と「學」、「国」と「國」など)、たまにハテ?と思うものもあります。たとえば台湾の首都「台北」は「臺北」と書かれている場合があります。「臺」と「台」がまさか同じだとは思わず、駅で「台北行き」を探して見つからず、不安になりました。これ、日本人が台湾に行ったとき、最初にぶち当たる繁体字の壁なんじゃないでしょうか。
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注音符号
台湾華語の本には繁体字の右脇に見慣れない記号が書かれていることがあります。
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これはカフェに置いてあった絵本の一部です。各漢字の右側にカタカナに似た象形文字のようなものが書かれていて(赤丸内)、これは何?!とビックリしました。
あとで調べたところ、これは「注音符号」といって、発音記号の一種のようです。中国では発音を表すのに拼音(ピンイン)を使いますが(アルファベットと上げ下げ記号)、台湾ではこういうのを使うのですね。日本語のふりがなのようなもので、小学生低学年の子供向けの絵本によく書かれていました。
句読点
個人的に面白いなあと思うのが、句読点です。日本語だと句読点って、マス目の隅に書くじゃないですか。中国の簡体字もそこは同じ。ところが台湾では句読点をマス目の真ん中に書く。最初は見慣れなくて、ものすごくヘンな感じがしました。でもどの本もそういう書き方なので、そうか、台湾ではそう書くんだと納得しました。
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世界一の親日国
台湾は世界一の親日国と言われます。確かに現地でも肌で感じました。まず日本ブランドの進出がすごい。ユニクロ、セカンドストリート、吉野家、ファミリーマート・・・etc。台北の駅前なんて「一体ここはどこ? 東京?」と錯覚するほど日本企業の看板ばかり。日本のアニメソング(特にジブリ)をバックミュージックに流しているお店も多く、日本の商品・文化が共に台湾の生活に根付いているのだなあと感じました。
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日本語からの翻訳本
書店に並ぶ本も、日本語からの翻訳本が多いこと、多いこと・・・。特に子供向けの絵本やビジュアル関連の本は、台湾オリジナルのものが少なく翻訳が主流。特に日本語からの翻訳本の数は、英語からの翻訳本をもはるかに凌駕していました。
特に絵本は日本語からの翻訳本が圧倒的に多かったです。台湾の子どもたちは、日本の子どもと同じ絵本を読んで育つのですね。だから感覚や価値感が似てくるのかも。
元の日本語を表紙などに一部残している本も。向こうの人からすると、ひらがなやカタカナって見慣れなくて、なにやらかっこいい感じがするのかもしれませんね。日本人にとっての英語と同じかしらと思いました。
ちなみに、簡体字の本は全く見かけませんでした。文字の違いはあれど同じ中国語。簡体字だって読もうと思えば読めなくはないと思うのですが、同じ中華圏であっても、そこはきっちり分けているのですね。
中国といえば、こんな看板を見てギョッとしました。
日本にもよくある災害時の避難経路地図のようなものですが、「空襲」?! 台湾の人々にとって、台湾有事は、日本人が考える以上にリアルに感じられるシナリオなのかもしれません。
台湾の日本語事情
台湾ではけっこう日本語が通じました。英語よりも通じるくらいでした。・・・というか、英語、あんまり通じない。
台湾は戦前日本の植民地だったから年配の人は日本語が話せる、と聞いたことがありますが、若い世代でも話せる人がけっこういました。日本以外で日本語がこれだけ通じる国は台湾以外にはないでしょう。
下の写真は書店の語学棚です。日本語テキストが棚二つ分にギッシリ(左と真ん中)。真ん中の棚は棚の名前こそ「韓語学習/日語学習」となっていますが、実際は全て日本語学習本でした。
九份の宿のオーナーご夫妻は、奥様は英語がお得意、ご主人は英語よりも日本語がお得意。前述の廃屋カフェは、日本人のお客さんは滅多に来ないそうですが、オーナーの奥様は日本の音楽がお好きだそうで、日本語がペラペラでした。
電車が揺れた拍子に持ち物を落とした際、拾ってくれた学生さんも日本語学習者でした。「謝謝」と言ったら「いえいえ」と日本語で返ってきたので、「日本語が分かるのですか?」と日本語で尋ねると、「少しだけ。勉強していますが、まだまだです」とのことでした。
わたしの行動範囲が日本人に人気の観光スポット周辺だったからというのもありますが、お店に日本語メニューが置いてあることもありました。
街中や駅でも日本語の案内はよく見かけました。でも時々ヘンな和訳も・・・。
台湾華語で喋ってみた
九份にて
今回は千と千尋の世界観に似ていることで有名な観光地・九份に5泊しました。初日に食べた九份名物の芋圓が気に入り、滞在中、同じ店に計6回通いました。だいたいいつも同じ時間に買いに行っていたからか、店にはいつも同じおじさんがいました。毎日通ううち、おじさんとすっかり顔見知りになり「明天見(また明日)」と挨拶し合う中になりました。
ある日、おじさんの隣にいた店の若者に「你什麼時候回日本?(いつ日本に帰るの?)」と聞かれました。どうやら他のスタッフにも顔を覚えられていたようです。「後天(あさって)」と答えました。
そして最後の日、店に寄ると、お店の人々が次々と出てきて、皆でワーッと歓声を上げました。どうやら「毎日通ってくる日本人がいる」という情報がお店のスタッフの間で共有されていたようです。お土産に絵葉書を頂きました。わざわざ用意して、わたしが来るのを待っていてくれていたんですね。嬉しかったです。
十分にて
十分も九份と肩を並べる観光スポットです。ここは現役の線路の上から空に天燈を飛ばせることで有名です。線路の両脇にはびっしりと天燈屋さんが軒を連ね、1000円~1250円ほどで天燈を買い、願い事を書いて空に飛ばすことができます。
ここですごいのは、天燈屋さんの写真サービスです。カメラやスマホを渡すと、天燈を飛ばす様子を動画や写真に撮ってくれるのです。わたしたちは特に腕のいい人に当たったようで、一眼レフとスマホを渡したらなんと、ポーズを変え向きを変え、電車が来れば電車と一緒にと、なんと50枚以上の写真と動画を撮ってくれました! しかも写真のモードまで変えて、とても鮮やかに仕上げてくれていました。
こんな手頃な値段でなかなかできない体験をすることができ、しかもそれを写真に残すことができて、大~満足! これは人にもぜひオススメしなきゃ、と思い「哪家是你的商店?(あなたのお店はどれですか?)」と尋ねました(正しくは「你的商店是哪家?」かも??)。お店の前に立ってポーズを取ってくれたのが下の写真です。
どのお店も写真を撮ってはくれますが、写真の腕前や枚数はお店によっても人によっても違うようですので、十分で天燈揚げをたくさん写真に残したい方は参考になさってください。小広い空き地(駐車場?)の隣にあるお店です。
台湾華語の落とし穴
台湾は日本人にとってメジャーな渡航先。外国と意識することなく、気軽に訪れることができるので、わざわざ台湾華語を学んでから台湾へ行く人はおそらく一握りでしょう。
でも一つだけ、台湾華語に関してやっておいたほうがよいことがあります。
それは、行きたい場所の名前を音で覚えることです。
日本人は漢字が読める(但し日本語の読み方で)ので、目で地名を覚えるとつい安心してしまいますが、発音を確認しておかないと、英語でも道を尋ねることができません。
たとえば台北駅周辺で「空港はどこですか?」と英語で尋ねたとします。すると必ずこう聞き返されるはずです。「どちらの空港ですか? Sōngshān(ソンシャン)ですか、Táoyuán(タオユエン)ですか?」と。ここで「桃園です」と答えたくても、「桃園」の発音を知らないと、質問に答えることができません。筆談する時間があればいいですが、急いでいるときは困ってしまいます。
あとよくあるのが「九份」と「十分」。どちらも日本人がほぼ必ず訪れる人気観光スポットですが、この二つの発音が紛らわしい。日本ではそれぞれ「キュウフン」「ジュウフン」と呼びますが、これが台湾華語だと「Jiǔ fèn(ジウフェン)」と「Shífēn(シーフェン)」。つまり日本語で「十分」と言うと、台湾人の耳には「九份」に聞こえてしまうのです。実際、十分(ジュウフン)への道を聞いたつもりが、九份(Jiǔ fèn)に案内されてしまった人もいるようです。
なので、行きたい場所の名前は、ぜひ台湾華語での読み方を覚えていきたいところです。
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最後に
張り切ってこの記事を書き始めたのですが、気づけば旅行から一か月以上が経過。どこで何を喋ったか、すっかり忘れてしまっていました・・・( ̄▽ ̄;) もし後日ひょこっと思い出した会話があれば、その都度書き足します。
追記
なんと、一番中国語が役だった(とその時は思った)場面を書き忘れていましたので追記します。
九份から40分ほど歩いたところに黄金瀑布という美しい滝があるというので、Google Mapを頼りに向かったときのこと。九份から10分ほど歩いたところに三叉路があり、Google Mapが示す方向はどうも行き止まりっぽい様子。そこでちょうどゴミを収集していたおじさんたちに道を尋ねました。
請問,到黃金瀑布怎么走?
(すいません、黄金の滝へはどう行くのですか?)
走路嗎?(えっ、歩いて?)
坐巴士去(バスで行った方がいいよ)
沒有巴士(バスはないんです)
沒關係,可以跑步(走路)(大丈夫、歩けますから)
需要兩個小時
(二時間かかるよ)
行,沒關係(構いません,大丈夫です)
我們喜歡跑步(走路)(歩くのが好きなので)
那往這邊走
(それならこの道をお行きなさい)
実際はもっと長い会話で、バスで行くことを何度も力説されました。でもバスは3時間に一本しかなく、当分来ないと知っていたので「沒有巴士(バスはない)」と「沒關係(大丈夫)」を繰り返しました。
おじさんたちが教えてくれた道はバス通りで、Google Mapが指し示す行き止まりっぽい道とは違い、見るからに正しそうでした。
・・・ふう、中国語で道を聞けて良かった。もしこのままGoogle Mapを信じて進んでいたら迷子になっていたかもしれません。やっててよかった中国語!と胸を撫で下ろしました。
ちなみに「歩く」と言うつもりで「跑步(走る)」と連呼してしまったのはご愛敬(笑)。中国語って日本語と「歩く」と「走る」が逆。「歩く」は「走路」、「走る」は「跑步」、しかも pǎobù と zǒulù と音の上げ下げが同じなので間違えた( ̄▽ ̄;)
とてもランナーには見えない初老の二人組が「跑步(走る)」と力説するのを聞いておじさんたち、「一体この人たち何なん?」と内心面食らっていたでありましょう。「今日面白かったこと」として家族団らんの話のネタになったかもしれません。
教えていただいたバス通りを歩いていると、ゴミを回収し終えたおじさんたちのトラックがわたしたちを追い抜いて行きました。「往這邊一直走!(この道をまっすぐだよー!)」とわたしたちに向かって大声で叫びながら。親切~!
でもしばらく行くと、どうもまた不安になってきました。そこで町工場のようなところで軽トラを修理しているおじさんたちにまた道を尋ねました。すると先ほどとほぼ同じ話の展開になり、また「歩く」と言うつもりで「跑步(走る)」を使い、「バスで行け」と説得されたあと、結局同じ道を指示されました。
でも少し行くうちに気づきました。確かにおじさんたちは正しい。この道を2時間行けば、きっと黄金瀑布に着くでしょう。でもそれはわたしたちが求めている答えとは違うのだ、と。
どちらのおじさんたちも基本、車で移動する人々。そしてこの界隈で働いてはいるが、住んではいないかもしれない。とすると車の道はご存じでも、徒歩の道はご存じないかもしれない、と気づいたのです。一方わたしたちは徒歩で行きたい。できれば、つまらないバス通りじゃなく、景色を楽しみながら。
そこで決めました。もう最悪、黄金瀑布に着かなくてもいい、迷子になってもいい。それより散策の過程を楽しもうと。そしてGoogle Mapの指示に従い、元の場所に戻って行き止まりに見える道を行くことにしました。
結果的にはそれが大正解でした。林に分け入り、初めのほうは道とも思えないような道でしたが、しばらく行くと素敵に整備された散策路に出て、結局Google Mapの予測通り、そこから30分で無事、黄金瀑布に着いたのでした。
だから結果的には、黄金瀑布にたどり着けたのはひとえにGoogle Mapのおかげ。現地人の道案内が役立ったわけではないのですが、でも目的地よりも過程を大事にしようと腹がくくれたのは、あそこで道を尋ねたからだと思います。だからやっぱり「やっててよかった、中国語!」なのであります。
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その水は海までも二色に染め分け「陰陽海」を形成します。