うさぎが「ホワイトヘブンビーチ」というビーチの名を知ったのは、 夫のきりんがどこかからかプリントしてきた一枚の紙の上でのことだった。
真っ白な砂と海の濃い青が絶妙なハーモニーを奏でる。
その砂は肉眼では確認が困難なほどキメ細かく、足で踏みしめると鳴くのだ。
「砂が鳴く」‥それを想像した瞬間、うさぎの頭の中で何かがはじけた。
行ってみたい!
行ってその砂を踏みしめてみたい!
熱情のような憧れが胸を焦がし、名前を頼りに、その写真を夢中で探した。
「ホワイトヘブン」――白い天国――そのネーミングが一層憧れを駆り立てた。
それはうさぎの勘違いで、
実は「ホワイトヘブンビーチ」の「ヘブン」は"heaven"(天国)ではなく"haven"(入り江)、
つまり「白い入り江」の意味であったのだが。
そして、ついに見つけた写真で見たホワイトヘブンビーチは、まさに天国だった。
大きな雑誌の見開きページ一面に広がるその上空写真は、
この世のものとは思えないくらい美しかった。
真っ白な砂が形作る広大な三角州に、海の青が川のようにたゆたう。
青と白が混ざり合い、なんとも言いようのない色を出している。
どうしたらこのビーチに降りたつことができるだろう?
どうしたらこの砂を踏みしめることができるだろう?
次の課題はそれだった。が、それは案外簡単に分かった。
ホワイトヘブンビーチは無人島にあり、
そこへアクセスするには「ハミルトン」という島に泊る必要があること。
そしてその島は、オーストラリアきっての大型複合リゾートであること――。
複合リゾート!
その言葉を目にしたうさぎは小躍りした。
それはまさに我が家にうってつけではないか。
複合リゾートがいかに快適な滞在を約束してくれるかということを、
プーケットですでに学んでいたうさぎは、
ハミルトン島行きのチャンスを虎視眈々と狙いはじめた。
そして今年(2000年)。格安ツアーに身をやつし、ついにそのチャンスは訪れたのである。