ここのセキュリティチェックは厳しく、上着までを脱いでX線にかけるように指示された。
上着のポケットには高感度フィルムが入れてあったのでちょっと抵抗してみたのだが、
「しのごの言わずにここに置きなさい!」とコワ〜イ目つきの女性係員に叱られてしまった。
この強気さ、うさぎを外人と間違えたくらいで恐縮していた成田のお姉さんとはえらい違いだ。
さすがはアメリカ大陸!、と妙なところで感心してみたりして。
セキュリティチェックを抜けて出国すると、ムースやグリズリー、 それに馬に乗ったカウボーイの剥製が飾ってあった。ホンモノそっくりなだけでなく、なんと動く。 その動きがまたリアルで面白く、しばらく見とれてしまった。
ゲート近くで、いいもの発見!!
キャンディワゴンだ。キラキラした甘いお菓子が満載の。
100グラム1.88ドルの量り売りで、好きなものを好きなだけ袋に詰めて買う形式。
ついフラフラと引き寄せられるようにうさぎが近づくと、売り子がすかさず
「キャンディはいかが〜?」と声を掛けてきた。
「あ、いえ。甘いものは好きじゃないから」と、口の中でモゴモゴ言いながら、後じさるうさぎ。
本当は、お金を持っていないのだ。日本にカナダドルを持ち帰ってもしょうがないからと、
さっきのラーメンで使い果たし、あとはきりんがほんの数ドル持っているかどうか――っていうところ。
そこにきりんと子供たちがやってきた。 ああ、こんなのを見せられちゃあ、子供たちが欲しがらないわけがないよなあ‥。ゴメン、買ってあげられないの。
と、きりんが子供たちにゴーサインを出した。
「一人100グラムづつ、買っていいから」と。うさぎはきりんに近づき、
「そんなにお金があるの?」と小声で尋ねた。きりんは
「4ドルちょっとあるから、何とか買えるだろう」と言った。
そんな‥。
ヘタすりゃ15パーセントの税金だってとられるかもしれないというのに、
そんなギリギリのお金で大丈夫?
うさぎの心配をよそに、ネネとチャアは吟味に吟味を重ね、キャンディを一つ袋に入れては量り、
また一つ入れては量り、ワゴンのまわりを何度も回って、キャンディを選びはじめた。
たった100グラムのキャンディしか買わない客も珍しければ、
その100グラムにこれだけ時間をかける客も珍しいのではないかと思う。
後からやってきたおじさんは、袋にキャンディをザザッと入れると、すぐに買って行ってしまった。
うちの子供たちは100グラムという制限があるからこそキャンディ選びにこれだけ熱中できるともいえるが、
その姿を見ていたうさぎは、何だか情けなくなってしまった。
延々と子供たちがキャンディを選んでいるうちに、なんと搭乗予定時刻を過ぎてしまった。 出発まであと30分しかない! まだゲートの位置を確認してもいないのに――。 うさぎは子供たちをせきたて、急いで会計を済ませると、皆でゲートまで走った。 幸いゲートはすぐそばで、搭乗も遅れていて、まだ始まっていなかった。 あー、よかった。空港でキャンディを選んでいて飛行機に乗り遅れましたなんて、シャレにもならないものね‥。