海外旅行は、2年半前ハワイに行ったのが最後だった。 子どもの受験やら進学やらで忙かったのも理由の一つだが、 原油高に伴い、航空運賃に高額の航空燃料加算税が課されることが 大きな精神的ブレーキとなっていた。
その航空燃料加算税が安くなり始め、一般航空券に先駆けて、 マイルの特典航空券にはかからなくなった11月、いよいよ海外旅行へ行くチャンス到来! と思った。
でも、どこへ行こう? ノースウェスト航空で貯めた2万マイルで飛べる渡航先は、 ソウル、北京、香港、上海、マニラ、バンコク、シンガポール、サイパン、 グアムなど。
行き先は、誰と行くかでも変わってくる。 一家四人で行くか、夫婦二人で行くか。 みなそれぞれ忙しく、四人のスケジュールを合わせるのは非常に難しい。 結局、夫婦でいくことにした。
子ども抜きということになれば、行き先はおのずと決まってくる。 南国リゾートより、風情のある街歩き。 行ったことのあるバンコク、シンガポール、香港をまず候補からはずし、 時期を考えて、比較的温暖な上海にまずは白羽の矢を立てた。 だが上海はどうも広すぎる。 もう少しコンパクトな街はないものかと考えていたら、 ふときりんが「蘇州なんて行けたらいいなあ」とつぶやいた。
「蘇州」と聞いた瞬間、うさぎの脳裏に甘やかでロマンチックなイメージが広がった。 狭い水路に差し掛かる柳のイメージだ。 「え? 蘇州ってどんな街だっけ?」と思い、調べてみた。
蘇州は古くから栄えた街で、杭州と共に「上有天堂、下有蘇杭――上に天堂あり、下に蘇杭あり」 (空の上には天国があるが、地上にも蘇州と杭州がある)と謳われた美しい街であるという。 さらに、元代にこの街を訪れたマルコポーロは「東洋のヴェニス」と呼んだ。 街中に運河が張り巡らされた水の都だからである。
日中戦争当時には李香蘭が「蘇州夜曲」を歌った。 水郷蘇州の風景描写をちりばめた、甘く切ないラブソングである。 街中には美しい江南庭園が点在し、そのうちの八カ所は世界遺産に登録されているという。 蘇州は狭い街中に世界遺産が8箇所もあるという、世界でも珍しい街なのだそうだ。
これだけ役者が揃えば、蘇州に行かない理由はない。 しかも、調べてみたら、上海の目と鼻の先ではないか。 新幹線を使えば1時間とかからない。
決めた! 今回は蘇州に決まり。 世界遺産に指定された八つの庭園を見て回ることにした。