【 バーチャル旅行 】
ここ数年間は海外旅行にハマっているが、
子どもたちがもっと小さかった頃には出かけるのがおっくうだったこともあって、
国内旅行にさえほとんど行かなかった。 プレイステーションがまだなかった5〜6年前は、スーパーファミコンの全盛期であった。 ドラクエ、FF(ファイナルファンタジー)、ゼルダ‥。 ロールプレイングの大作といわれるものは全てスーパーファミコン用として世に出た。 そして、その頃のわが家の楽しみと言えば、 何を置いてもスーパーファミコンのロールプレイングだった。 きりんが新作ソフトを買ってくると、一月ほど、 4人は夜な夜なテレビの前に集まり、旅に出かけた。 専業主婦のうさぎなんぞは、旅の続きが気になって気になって、 昼間からバーチャルな世界に意識を漂わせ、 きりんが会社から帰ってくると途端に生き生きとして、 ファミコンに電源が入るのを待つありさま。 そしてときどき、ふと思った。 本当の世界は一体どっちなのだろう――? って。 昼間単調な家事を淡々とこなす時間より、夜みんなで一つの画面を見つめ、 波乱万丈の冒険に乗り出している時の方が、ずっとリアルで生きている実感があった。 今から考えるとかなりアブナイ感じがするけれど、当時はそれで充分幸せだった。 プレステやロクヨンに乗り換えなかったわが家は、スーパーファミコンの衰退と共に、 だんだんゲームをする時間が減っていったが、今でも時々あのころの旅の話題で盛り上がる。 「最初ザーザー雨が降っててさあ」とか、 「まったくカインにはよく裏切られたよねー」とか、 「シレジアのペガサスナイト隊が全滅した時はホントに悲しくて、泣きそうになっちゃった」 とか。(全部分かる人、いる?) 「チャアはまだ小さかったから覚えてないかもしれないけど、 みんなで最後にチョコボに乗って草原を走ったんだよ」 だなんていうのをよその人が聞いたら、一体何の話だ?と思うに違いない。 でも、楽しかったその思い出が家族のきずなを深めるという点では、 現実の旅も、バーチャル旅行も、同じなのである。 2002年4月13日 うさぎ |
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