さて、フロントに鍵が出そろうと、部屋の番号で呼ばれ、方面別に部屋まで案内してもらうことになった。 なにしろ、ここでは部屋といっても一戸建ての小屋(ブレ)が大半だ。 広い敷地の木立の中に点在するブレにいくのに、 最初は誰かに案内してもらわなかったら迷子になってしまうかもしれない。
大柄なフィジアンのオバチャンのあとにくっついて、木立の中をぞろぞろ歩く。 すると間もなく、目指すブレに到着した。 うさぎたちのブレは22番と23番。同じ番号がブレの屋根の端にちゃんと書いてある。 二戸が背中あわせになった、トタン屋根の素朴なブレだ。
オバチャンから鍵を受取り、早速ブレの中へ。ドアを開けると、子供たちの様子がいつもと違った。 いつもなら「わーっ!!」と歓声を上げるのに、なんだかミョ〜に静か。でも、うさぎにはそれがどうしてか分かる。 子供たちは明らかに、がっかりしているのだ。
この部屋は、ぱっと見の印象が良くない。
テラコッタ色の床タイルにはところどころに白いシミがあり、白い塗り壁は黒ずみ、
ペラペラのベッドカバーやカーテンの色は褪めかけている。金具はサビサビで、窓はガタピシ。
石鹸の包み紙やシャンプーのラベルには虫食いみたいな穴があいているし、くずかごは壊れかけている。
そんなこんなで、どことな〜くうらぶれた印象を与えるのだ。
よくよくチェックしてみれば、天井を貼っていない三角の屋根裏には黒い梁が見えてオシャレだし、 壁に貼られたサイディング状の板も山小屋風でなかなか味がある。 テーブルの上には、色とりどりの南国の花が大きな貝を水盤にして生けられており、とても素敵なのだが、 そんな仔細に子供は気付かない。
クローゼットに衣類をしまおうとして、その棚があまりに汚いので躊躇し、
「荷物をどこに置こうかな」と言うと、チャアが言った。
「床にレジャーシートを敷いて、そこで荷物を広げたら」。
蓋し名案。早速そうすることにした。しかし部屋の中でレジャーシートとは。なんか寂しー‥。