プールの前のビーチで一日遊んだ後、捕まえた魚を放し(よかった、一応全員、海に生還!)、
さあそろそろブレに帰ろうかと思ったら、
子供たちときりんがビーチ沿いを西へ西へと歩いて冒険に行ってしまった。
セントラルエリアの前はきれいな砂地のビーチだが、西の方には大きな岩がゴロゴロしており、人もおらず、
なにやら秘境めいている。その雰囲気に誘われたのかもしれない。
すぐ帰ってくるかと思いきや、長旅に出てしまったらしく、姿も見えなくなってしまったので、
うさぎも後を追いかけた。
砂の上は足がズブズブ沈んで歩くのが大変。
それで、ビーチの上の草むらの中を歩いてみたが、ここはここで大変だった。
イガイガの小さな実を付けた草があり、そのイガイガがサンダル履きの足にいっぱい付き刺さって痛いのだ。
それでやっぱり砂の上を歩くことにした。
岩場の広がるエリアにさしかかると、ゴツゴツした黒い岩から岩へと飛び移るように歩くのが大変だった。 うっかりすると、そのおろし金のような岩肌で、肌を擦りむいてしまいそう。 用もないのに、こんなところまで歩いてくるなんて、物好きもいいところ。 けれど、ビーチ沿いにそそり立つ大きな岩にはライフラインとおぼしきパイプがずっと這わせてあり、 この向こうにも何かがあるに違いないという期待をさせた。
岩場を抜け、草むす山を登る。と、やっとここで皆に追いついた。なんと子供たちは裸足だ。
よくここまで裸足なんかで歩いて来れたな。
またもや足に引っついてくるイガイガの実に頭を悩ませながらのろのろ山を越えていると、
フィジアンの男性が追い抜いていった。
「一体こんなところに何の用だろう」と思いながら山を降りると、そこには小さな家が何軒か立っていた。 家の中からは大音響のラジオが流れており、家の回りの草の上に、人が何人も寝ころんでいる。 どうやら、ここはフィジアンの村らしい。 うさぎたちを追い抜いていった人は、どうやらリゾートでのお勤めからの帰宅途中だったようだ。
村の前はサンゴのかけらやら貝やらが瓦礫のように積まれた、雑然とした岩場であった。 うさぎたちの目には珍しい貝や珊瑚が、ここではゴミのように打ち捨てられているのを見ると、何だか不思議。 よく見ると、その中には動いているものがいる。ヤドカリだ。
と、その時、「ブラー」と突然どこからか話しかけられ、驚いた。
見れば、浜辺に打ち捨てられたサビサビのトラクターに二人、
フィジアンの男性が半分眠ったような恰好で座っている。
働き盛りの男たちが、家の前の草むらやトラクターの座席で昼間っから休んでいるだなんて、
随分とのんびりしたところだ。それとも、今日は土曜だから休みなのかな?
ネネとチャアが素足なので、うさぎは子供たちのサンダルを取りに、リゾート前のビーチまで戻った。
サンダルを取って戻ってくると、さっきのポンコツトラクターが遠くの方に移動していたので驚いた。
てっきり不法廃棄物だと思っていたら、現役だったのね。
そして、あの半分眠っていた人たちも、一応、労働の途中だったのだ。
ネネたちが砂の上にマルバツを書いて遊んでいると、 5つか6つくらいのフィジアンの男の子がバラバラッと4〜5人やってきて、 興味深々な様子でネネとチャアを取り囲んでしゃがんだ。 どうせ言葉が通じないと思っているのか、双方とも一言も発しない。 けれど、砂に描かれた一つのものを見つめて一緒にいる。子供って便利だ。 大人の場合、挨拶くらいは交わさなくちゃ、と思うから、却って気軽に人に近づけないのだけれど。