マナ島は東西に長い。その東半分は聖地となっていており、外国人の立ち入りは禁止されている。 で、残りの西半分がリゾートとなっているのだが、この3日、うさぎたちのリゾート舞台は、 その中でも島の北側(つまりお日様に近い側)のノースビーチだった。 ノースビーチは何しろうさぎたちのブレから近いし、レストランやプールにも近くて便利だ。 それに、桟橋のある方のサウスビーチはモーターアクティビティが盛んなので、子供を遊ばせるには危険だし、 マリンスポーツへのやる気満々の大人たちが沢山いてせわしない感じなので、わざわざ来る気がしなかったのだ。
けれど、サウスビーチ沿いのレストランに来たついでに、ちょっとビーチを歩いてみると、 ノースビーチよりもたくさん貝殻が落ちていた。それに、ヤドカリや小さなカニも多い。
こうした砂の中の宝物に感激しているうちに、うさぎたちの足は、どんどん西へ西へと向かっていった。 西へ行くにつれて、人影はなくなり、ビーチの整備状態は悪くなっていったが、かまわず歩きつづけた。 貝や珊瑚のかけらを寄せ集めたゴミ捨て場(?)を越え、大きな岩をぐるりと回って歩きつづけた。 岩場には、手の平ほどもある大きなカニや、生きている貝など、ビーチにはいなかった生き物がたくさんいた。
「マナはそんなに大きな島じゃないから、ビーチ沿いに歩きつづければ、
ぐるっとまわってノースビーチに帰ってくるよ」ときりん。
「たぶんね。でも、マナの大きさってどれくらいだと思う? ハミルトン島(1周10キロ)ぐらい?」とうさぎ。
「えっ、まさか! グリーン島(1周1キロ)よりちょっと大きいくらいかな」ときりん。そうだといいけど。
西に向かうにつれて、足や手が蚊に食われだした。不思議。さっきまでは全然蚊なんていなかったのに。
夕方のせい? それとも、この辺は蚊が多いんだろうか。
それでも構わずうさぎたちは歩きつづけた。
おそらくここまで来たら、来た道を戻るよりも、先へ行った方が、近いだろうと思ったのだ。
大きな岩の回りの岩場をぐるりと回りきってしまうと、そこには砂の美しいビーチが広がっていた。
砂も海も夕日でオレンジ色に染まり、とてもきれい。金色に光る海を眺めていたら、ふと思い出した。
「分かった。ここがサンセットビーチだよ。なんでも、マナ島の穴場のビーチらしいよ」とうさぎ。
歩きながら海を眺めていると、突然、ザザッという音がして、海の一部が割れたように見えた。
なんだ、なんだ?? 今のは?!
目の錯覚かと思いながら、歩きつづける――と、また同じ付近が水しぶきを上げて盛り上がり、銀色に光った。
――分かった。魚だ。魚の大群。たまたまエサでも浮いていたのだろう。
それで大群がひしめき合って、静かな水面を騒がしたのだ。まったくすごいよね。ここの魚の数といったら‥!
しばらくサンセットビーチを横切っていると、ビーチ沿いの草地に家が建っていた。
「おや、こんなところに家が。犬もいるぞ」と、引き寄せられるように近づいていくと、
一人の男に「どこへいくのだ?」と声をかけられた。
「リゾートに帰るのだ」と言うと、「それならあっちだ」と男は林の中の道を指さした。
ちょうどビーチを歩くのにも飽きてきたところだったので、その指示に素直に従って歩いていくと、 道の脇に美しい村が現れた。村と言っても、家の数は10軒もないのだが、とにかくその家の回りの庭が美しい。 そここちらに色とりどりの花が咲き乱れ、芝がきれいに整えられ、リゾート顔負けの美しさだ。 ああ、こんなに美しい庭に、一年中住んでいる人がいるんだな。やっぱりフィジーってこの世の楽園なんだ‥。
尚も道なりに歩きつづけると、三叉路があり、別の道から若い白人の女性がやってきた。 彼女はピクニックポイントに行ってきた様子。となると、残る道がリゾートへ帰る道だ。 ここからは彼女と一緒に歩いた。
道は飛行場の滑走路に沿って延々と続いた。歩きながらきりんが言った。
「やっぱりマナって、ハミルトンと同じくらい広いかも‥」。
やれやれ、そのうち「やっぱり淡路島(1周100キロ)くらいかも」なんて言い出すんじゃあるまいな。
そうこうするうちに、ようやくうさぎたちは見たことのある場所にたどりついた。
が、そこはサウスビーチの西の方、ハネムーン・ブレと呼ばれるバギー付きの豪華なブレの前、
行きに通ってきた道だった。
なんのことはない、島を半周してノースビーチにたどりつくはずが、
結局サウスビーチにもどってきてしまったのだ。
あー、やれやれ‥。でも、日没の前に戻ってこられただけでもラッキーだったかな。
後に正確な地図を見たら、ノースビーチは大変長く、サンセットビーチからそこまでは、 まだまだ島をぐるっと大回りする必要があった。 南側から西側を通って北側まで、ビーチ沿いに歩いていかれるはずだと勝手に思い込んでいたけれど、 実際には断崖絶壁に阻まれなかったとも限らない。 今から考えると、随分無謀なことをしようとしていたものだと思う。 もしあそこで男の人が声を掛けてくれなかったら‥と思うと結構コワイ。
何はともあれ、生還できて、よかったー。