Fiji  マナ島とフィジアン

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【 雨の中のメケショー 】

植物

部屋への帰り道、小雨が降りだした。屋根付きの廊下はところどころ途切れているので、雨だと濡れる。 屋根のあるところでも壁はないから、風があると少しは濡れる。それでみんなは小走りで部屋に帰った。

だが、うさぎはというと、茂みのずっと向こうから聞こえてくる人の歌声を聞きつけ、その声に誘われるまま、 雨の中を走りだした。こんな雨の中、辺鄙な場所で、一体誰が何のために歌っているのだろう‥?

声のする方へとしばらく走っていくと、植え込みの影から忽然と屋外ステージが姿を現した。 数十人のフィジアンの男女が幾何学模様のタパクロスを身につけ、強まってきた雨が降りしきる中で歌っている。 その回りにはテントが並び、その下に所狭しと料理が置いてある。テーブルには談笑するゲストたち。 ――なんだ、なんだ? どっかの団体のピクニックかなにか?

呆気にとられてそこに突っ立っていると、シェフ姿の男性がうさぎに気づき、近づいてきて言った。
「ロボビュッフェに参加なさいますか? 今日はメケショー付きですよ」と。ロボビュッフェ? メケショー? ――そういえば、火曜日の晩にはどこかでメケショーをやると案内で読んだような気がする。 でも、それって、こんなところでやるんだったのか。 リゾートの中央からだいぶ離れた、わざわざ探さなければ見つからないような、こんな場所で。

「今夜はお腹が空いていないからまた今度ね」と断ると、彼は言った。
「では金曜の夜においでなさい。金曜はメケショーだけでなく、火渡りの儀式も見られますよ」。火渡りの儀式。 それは是非見てみたいものだ。木曜の朝にはもう日本に帰るから、無理だけど。 それでも一応「分かったわ、ありがと」と言い、うさぎは部屋へと帰った。 こんな辺鄙なところにもイベントが隠されているとは、フィジアンって奥が深いなあと思いながら。

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