ツアーデスクから帰ってくると、部屋のバルコニー脇の壁にドアがあるのをふと発見した。
ひょっとして、あのドアの向こうにはもう一部屋、リビングとかがあったりなんかして‥。
この部屋って普通のツインルームだと思っていたけれど、
実はスイートだった?!
しかも、この部屋の隣りは建物の角にあたる。このホテルで最も眺望の良い場所のはずだ。
うさぎはドアに近寄り、ドキドキしながらカギを開けた。――開いた! 鉄の扉が。
開いたドアの向こうには、扉がもう一枚あった。しかも、わずかに開いている。
うさぎの胸の鼓動はにわかに早くなった。
そのもう一枚の扉を押して、もっと開こうとすると――。誰かの話し声が聞こえてきた。
若い女性の声で、日本語だ。うさぎはびっくりして向こう側の扉から手を放し、こちら側の扉も閉めてしまった。
すると、話し声はその音にビクッとしたように一瞬止み、扉に誰かが近づいてくる気配がしたかと思うと、
扉を閉めてカギを掛ける音がした。
‥うーん、残念。結局、ドアの向こうは別の部屋だったのだ。 どうやらこの扉はただのコネクティングドアらしい。向こう側の扉を閉め忘れただけの。
ま、いいか。一瞬いい夢を見せてもらっただけでも。
よく夢で見るんだよねー、
「今まで気がつかなかったけど、実はわが家には屋根裏があった!」とかいう夢。
マンション住まいだから、実際には屋根裏なんてあるわけないんだけど。
そういう夢を、今回は目覚めていながらにして見たのだった。