モガンボ滝は広大なラグーンの一角にあり、ウォータースライダーの滑り落ちる先もラグーンだった。 実は、モガンボ滝はただの飾り物ではなく、海水を海からくみ上げてラグーンに流し込む役割があるのだそうだ。 ラグーンの水面は一見すると鏡のように静かだが、その水面下では水が絶えず循環し、淀むことがないのである。
単一ホテルが所有するラグーンとしては世界最大の広さというだけあって、 直径200メートルくらいの範囲にアルファベットのCの形に広がるラグーンは圧巻で、その端から端まで泳いだとしたら、 ちょっとした遠泳になりそうな距離であった。 もっとも、深さは場所によってまちまちなので、キッズラグーンなど浅い場所は泳ぎに向かないかもしれない。 ちなみに、最も深いのはダイブロックの下で、4メートルほどあるそうだ。
ラグーンでは泳ぐ以外にも、様々なことができた。カヤックを漕いだり、ダイビングの装備で水深く潜ったり。
ラグーンに浮かぶ小島のハンモックに寝そべって昼寝をすることできれば、
飛び石をピョンピョン渡って向こう岸に渡るのも楽しいし、小島の洞窟にこもって瞑想もよし。
ここに来る前は、〔カヤックと泳ぐ人とダイバーが同居していて、安全性が保たれるのだろうか〕と思ったものだが、
実際に見てその疑問は氷解した。なにしろ広いから、ぶつかる心配など無用なのである。
それでも最低限の住み分けはなされており、「ここは○○禁止」などという決まりこそないが、
段差を設けてカヤックがキッズラグーンに入って来れないようにするなど、さりげない配慮がしてあった。
ラグーンをいろんな人がいろんなことに使っているというのは面白いもので、ある日カヤックを漕いでいて、
突き出た岩に乗り上げて動けなくなっていたら、ダイバーがひょっこり水面に顔を出し、カヤックを押して助けてくれた。
人工的に造られたという点ではプールと同じだが、遊びの多様性という点では、海に近い感じがした。
ラグーンの周りはビーチとなっており、岩を砕いてつくったという真っ白な砂が敷かれていた。
人工の砂を使っているのは、環境への配慮のためという説明がなされていたが、
むしろラグーンを美しく保つためではないかとうさぎは思った。
この砂は「砂」というよりは「礫」と呼んだほうがいいくらいの粒の大きさだったから、
ラグーンに落ちても水を濁すことがないのである。
この礫のビーチは、ラグーンを囲んだ至る所に広がっていたが、中でもオリオンビーチと呼ばれる場所は広く、
ビーチバレーやら子供のサッカーなどのアクティビティが開かれていた。
ラグーンは様々な遊びが楽しめたが、それでもその一番の効用はなんといっても、美しいことであったと思う。 中でも、ペニンシュラビーチと呼ばれる中州の先端に立つと、360度どちらをむいてもラグーンに囲まれ、 それはそれは幸せな気分だった。
この美しいラグーン、ここに来る前までは、それが造られたことに感動していたのだが、 ここにやってきてちょっと考えが変わった。 確かにこんなに広大な、しかも泳げるラグーンを造ってしまおうという着想もすごい。 だけどもっとすごいのは、この広大なラグーンを、いつでも泳げる状態に整えておけることではなかろうか、と。 微生物にとって栄養たっぷりの塩水を、かように美しく清潔に保つのは容易なことではないだろう。 造るのもかなりの大事業であったと察せられるが、それを保つ日々の努力、それを考えると、 本当にこのリゾートには頭が下がるのであった。