Palau  パラオ

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【 マクドナルドのない国 】

三種のおみやげ神器

「今日はもう疲れた。午後はこのままベッドで寝ている」 と主張する子どもたちを街に行く気にさせたのは、 「街に行けばトランプが買える」の一言だった。

なぜ外国へ行ってまでトランプをしなくてはならないのか。 それはうさぎにとっては永遠の疑問なのだが、 とにかくわが家では、外国に来たらトランプをすることになっている。 なのに今回は、そのトランプを忘れてきてしまった。 だからどうでもどこかで調達しなくてはならなかったのだ。

それにあと3つ、どうしても買わなくてはならないものがある。 スプーン、マグネット、キーホルダーの三種のおみやげ神器だ。 それぞれ、うさぎ、ネネ、チャアが集めていて、 海外へ行くたびに一つづつ増えていくコレクション、 これらを買わずに日本に帰るなんてありえない。

でも今回は、初日の午前中から早くも前途多難の予感がした。 はるばるパラオまでやってきたからには、 パラオでしか買えないようなキーホルダー、マグネット、スプーンが欲しいではないか。 ところがパラオパシフィックリゾートの売店にあったのは いずれもどこか別の国で見たことのあるものばかり。 チャア曰く、「これ、"グアム"ってところが"パラオ"になってるだけじゃん」。

そんなわけで街へやってきたわけだが、 「パラオ最大」であるはずのWCTCショッピングセンターで、 「これは個々の店の問題ではないらしい」と気づいた。 この孤島の小国を訪れる観光客は年間約6万人。 この数字はおみやげ産業を育てるのに充分ではないのだろう。 「フィジーはまだよかった」と思わずこぼす。 おみやげ探しはフィジーでも苦労したけれど、フィジーの年間観光客数は32万人。 パラオの5倍以上だ。

結論から言うと、町中の土産物屋をくまなく捜した結果、 幸い、皆はなんとか自分を納得させられる一品を手に入れた。 うさぎはWCTCショッピングセンターの2階で 「パラオ」というロゴの入ったものとしては おそらくこの国で唯一であろうスプーンを見つけたし、 ネネは「アイランダーギフトショップ」というなの小さなおみやげ屋で、 その店オリジナルの砂を固めて作ったというマグネットを見つけた。 チャアは半ば妥協して、木でできたイルカ型のキーホルダーを買った。

おみやげよりも難航したのが、トランプだった。 「もしやこの国にはトランプというものが売っていないのでは」という不安と戦いつつ、 食料品のスーパーやらスポーツ店やら薬屋やら、 トランプなんて置いてるはずのない店までくまなくチェックした。 そしてついに、デパートの二階レジの脇で外国製のトランプを見つけた。 それは小さな箱の中で埃をかぶっていた。 人口2万人規模の経済とはこういうことか。

今回初めて、マクドナルドのない国にやってきた。 アメリカ文化の影響を色濃く受けたこの国には、マクドナルドが一軒もない。

パラオにマックがないという事実は、最初、どうしても信じられなかった。 だから会う人ごとに尋ねて回った。 「やっぱりパラオにはないらしい」と納得できたのは、 一体何度目に「ない」という答えを聞いたときだったろう。

1億もの人口を抱える経済大国の、それも首都圏に住んでいると、 どんなものでも捜せばきっとあるはず、と思える。 見つからないのは、捜し方が足りないだけ。 根気よく捜せばどんなものでもたいてい見つかり、その上、色や柄や大きさが選べる。 必要を満たすことはもちろん、たいていのものに自分の趣味を反映できる。

でも、そんな場所はきっと、世界のうちのほんの一部なのだ。

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