ビーチに出ると、ビーズ三つ編みのおばちゃんや、ビーチボーイズがすかさず声を掛けてきた。
おばちゃんは、頭全部にビーズを編み込んだ細かい三つ編みにして600バーツだと言った。
だが、うさぎが「左右一本づつで20バーツではどうか」と言うと、首を振って行ってしまった。
ビーチボーイズも、きりんが"NO!!"ときっぱり言うと、それっきり近寄ってこなくなった。
だが、今度はココナツジュースを買った掘っ立て小屋のおばちゃんが、チャアにお砂場道具はどうだ、と迫ってきた。
そのうるさいことうるさいこと!! 「ああ、ここは外の世界だ」とうさぎは思った。
つくづく「ここは守られたサンクチュアリの外なのだ」と思い知らされた。
いつの間にか「ラグナエリア」から外の世界に足を踏み出してしまったらしい。
ビーチは白い砂がとても綺麗で、白い貝殻が沢山落ちていた。 貝を拾い集め、砂をよく見てみると、なんとここの砂は細かい貝の破片や、 水晶のように透き通った石の粒でできているのだった。 しかも、波の来るところは粉のように細かくなめらかな砂、 もう少し上の方は直径が2〜3ミリほどもある大きな砂利状の砂と、粒の大きさが違っていて、 しかもそれぞれの粒の大きさがきれいに揃っている。
砂利状の砂はシェラトンのプールの砂浜のと同じものだった。あの砂はここで調達したというわけだ。 目が粗く、一粒一粒が重いのでプールに入れても水が濁らず、すぐに沈んでしまう。見た目も白く美しい。 こんな砂がそばにあるから、あんなプールが作れるのだろう。
大自然のもたらした天然のビーチ。 それは申し分なく美しい景色だったが、計算し尽くされた人工のラグーンの圧倒的な美しさには敵わないと思った。 自然といえば、外国から大金を持ってやってくる観光客に、現地の人々が群がるのも自然の成り行きと言えようが、 その「自然」が煩わしく、宿泊客しか入って来られない、ホテルという人為的な環境の方がうさぎには有り難かった。 第一、日陰のない南国の砂浜がいかに熱いかを初めて思い知り、うさぎたちは、 木陰の多いプールサイドにそそくさと逃げ戻ったのであった。