2003年4月30日 「白」と「限りなく白に近い色」の狭間

最近、デジタルカメラが人気のようです。 日経ネット(4月26日付け)によれば、日本に於ける世帯普及率は32%だそうで、 3軒に1軒がデジカメを所有している勘定になります。

けれど、我が家にはまだデジカメはありません。
いえ正確に言うと、公募の商品でもらったのがあるにはあるのだけれど、 画素数10万というオモチャのようなもので、試してはみたもののてんで使い物にはならない。 だから、持っていないのと同じです。

でもデジカメって便利ですよね。スキャナを使わなくてもパソコンに画像を取り込めるし、 色調補正をかけてからプリントアウトすることもできる。 その場でおおよその出来をチェックできるのがなんといっても魅力だし、 フィルム代はかからないわ、プリント代にも無駄がないわと、いいこと尽くめです。

だから我が家も、次にカメラを買い換えるときにはデジカメにしようかなー、 と考えたりもしています。

ただねえ、新しいものだけにまだまだ性能が進化中で安定しておらず、評価ももうひとつ 定まっていないところが不安。カメラの買い替えというのはいつ発生するか分からないので、 先日掲示板にその話題が出たのをきっかけに、少しリサーチを始めてみることにしました。

いままでにもカメラ屋さんの店頭やウェブサイトなどで、デジカメ写真は目にしていたので、 まずはもう一度見たり、印象を思い出してみることにしました。

一言で言うと、特に欠点は見当たりませんでしたね。 300万画素クラスともなると、きめも充分細かく、 全く銀塩(従来のカメラ)と見分けがつかない。 「これはデジカメ写真か、銀塩写真か」と問われて言い当てる自信は全くありません。

だけど。だけど、なんです。
一枚一枚についてはどこがどうといった不満はないし、 むしろ銀塩では撮りにくい写真もきれいに撮れているな、とさえ思うのですが、 全体的な印象が、どこか物足りないのです。 なんていうか、のっぺりしているというかあっさりしてるというか、 事実は忠実に写せても、感動までは写しきれないような感じというのか、 ‥どこがどう不満と、うまく説明できないのだけれど、 なんとなくこう‥フワッとした情感の漂う写真を見ないなあ、という気がするのです。

それは無意識にデジカメに対して抱いている先入観のせいかもしれないし、 たまたま見た写真の傾向の問題なのかもしれない。
「気のせいではないのか」と問われたら、 「そうかもしれない」とあっさり引き下がるしかない程度の感覚です。

でも、どうしてもその微妙な物足りなさが気になって、 「ヨシッ! 次に買い換えるときにはデジカメだあ〜っ!」 とは思い切れない自分がいました。

ちょうどそんなとき、 定年までニコンにいた写真にはちょっとうるさい従兄にたまたま会ったので、 カメラ談義を持ちかけ、

デジカメは、再現できる色の階調が銀塩に比べると少ない

という事実を聞きだすのに成功しました。
「中間色はわりあい再現性が高いけれど、 "限りなく白に近い部分"や"限りなく黒に近い部分"が 白・黒に切り上げ・切り下げられる傾向がある」のだそう。

それを聞いて、デジカメに感じていた物足りなさの謎が一気に解けた気がしました。
切り上げ・切り下げられてしまうその「限りなく白・黒に近い部分」に物足りなさの一因 があるのではないかと思ったのです。
言葉では説明のできないような微妙な差、 一つの色を見せられて「これは白か」と尋ねられても正しく答えられない程度の差、 でもそこに、うまく言い表せはしないけれど どうしても譲れない"何か"が潜んでいるのではないか、と。

文章に関して"行間を読む"という言葉があるように、 写真にも、"限りなく白に近い部分"と"白"の間にあるものによってしか 伝わらないものもあるのではないか。
ただそれは本当にそこに存在すると断言できるようなものではなく、 撮ろうと思って必ず撮れる確証もなく、 撮る人の腕によるのはもちろんのこと、 写真を見る側の感性によっても、 見えもすれば見えないこともあるようなものかもしれません。

昨日、ネット仲間の のりやすさんが、 新しく買ったカメラを銀塩にした理由を、 「"こだわりたいと思っているだけ"という気もします」 と説明しているのを読んで、笑ってしまいました。 彼は、それこそ写真に言葉で言い表せないものを写しこめる人なのに、 何を言ってるんだろう、って。
でもすごく分かる。 人に説明して分かってもらえるとは限らない領域だから そう言うほかはないのかもしれないなあ、って。

実を言うと、従兄の口からデジカメの色の階調に関して聞き出すのも、 ものすごーく大変でした。 彼はひたすら「デジカメの方が便利でいいんじゃないの?」と繰り返すものだから。 色の階調に関する話も、ネガティブな言い方ではなく、 「デジカメは、再現できる色の階調が銀塩に比べると少ないから、 誰が撮ってもわりあい写真としてまとまりやすい」と、 デジカメの長所として話してくれたのです。
そう言いつつ、彼自身はデジカメを持ってはいるものの全然使わず、 ひたすら銀塩派であるというところが、なんとも言えませんねえ。

利便性においては圧倒的な差でデジカメ優勢。
写真の出来栄えは「気のせい」かもしれない程度の差で銀塩優勢。

それがはっきりしたところで、さて、うさぎは今後、どうしましょうね?

うふふ‥。実を言うとね、欲張りうさぎは、 デジカメの性能がもっと進化して、色の階調が銀塩と遜色なくなるのを じっくり待とうかな〜?、と思っているのです。