わたしが読んだアラブ関係・イスラム関係の本で、特に面白かった、ためになったものだけを厳選しました。 基本的にわたしは小難しい本は嫌いなので、ここに掲載してあるのは、どれも比較的読みやすいと思います。 今後も良い本を見つけたら、更新していく予定です。

 
アラブの大富豪

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アラブの大富豪

ここ数年の原油高により未曾有の富を手にしたアラブの大富豪=王族。 彼らは資産を公開株という形で所有していないため、長者番付にも載らず、 その資産総額は誰にもわからない。 アラブとイスラムの厚いベールに包まれた、彼らの出自、発想方法、 投資理念、価値感覚を探る本。 著者は元JETROのサウジアラビア事務所長・前田高行

アラブ・イスラム関係の本というと擁護するにしろ批判するにしろ、 扇情的な本がとても多いのですが、 この著者は、日本人の発想・感覚では到底読み解けないアラブ感覚を、 媚も喧嘩も売ることなく、腹も立てずに客観的に展望しており、 その辛抱強い姿勢に感銘に近いものを覚えました。 あまりに日本人の感覚と違って理解しづらい点については、 比喩を用いて説明するなど、 アラブ通・イスラム通でない一般の人にも分かりやすく説明してくれています。 おそらく、アラブに全く興味のない人が読んでも面白い本。

イスラーム文化―その根柢にあるもの

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イスラーム文化―その根柢にあるもの

そもそもイスラム教とは一体何なのか、 シーア派・スンニ派の違い、 アラブ民族とイスラム教の関係など、 一番分からないこと、知りたいことが、 分かりやすく説明されたイスラム入門書。 ちなみに著者の 井筒俊彦 は仏教徒。

岩波文庫にしては(?)小難しくなく、非常に読みやすく分かりやすかったです。 発刊から20年近くを経てなお、アマゾンのレビューで15人の全員レベル5をつけるのも道理。 本質を書いているので、内容が古びることがなく、今でも新鮮です。 イスラム教について知りたいと思ったら、まずこの本を読むことをオススメします。 そもそもイスラム教とは何なのかがよく分かります。 この本を読んで、わたしは「宗教とはこういうもの」という思い込みにより、 自分がいろいろな勘違いをしていたことが分かり、ヘエ〜〜!という驚きの連続でした。

見ることの塩―パレスチナ・セルビア紀行

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見ることの塩―パレスチナ・セルビア紀行

現地の客員教授として招かれた映画史が専門の学者 四方田犬彦 によるイスラエル滞在記。 第二次インティファーダ後のイスラエルで見たイスラエルの現状。 後半は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争後のセビリア滞在記。 タイトルの「見ることの塩」とはどういう意味か、それは読んでのお楽しみ。

ニュートラルな立場で、自分の目で見たものが素直に語られています。 著者の果敢な探究心と無鉄砲なまでの行動力により、 紛争の裏にある様々な感情や複雑な事情がよく描かれています。 アラブもイスラエルも決して一枚岩ではない、 パレスチナ問題がアラブVSユダヤといった単純な宗教対立・民族対立ではない様子が見てとれました。 またこれはあくまでわたしの個人的な感想にすぎませんが、 圧倒的な武力でパレスチナを追い詰めようとしているはずのイスラエルが、 精神的にはむしろ自分自身を追い詰めてしまっているように感じました。

イエメンものづくし―モノを通してみる文化と社会

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イエメンものづくし―モノを通してみる文化と社会

かぶりモノ(男性が頭に巻く布)、覆うモノ(女性が顔を覆う布)から始まって、 着モノ、食べモノ、噛みモノ(イエメン独特の嗜好品)、飲みモノ、乗りモノ、焚きモノ(タバコ・燃料・銃器類)、回りモノ(金)、 困りモノ(現代社会の問題点)など、タイトル通り「モノ」を通し、イエメン社会を語る本。

白黒の地味な新書本ですが、 イエメン人の暮らし、独特の価値観が生き生きと語られ、内容は実に彩り豊か。 三日月型の短剣ジャンビーヤと世界遺産の町並みで有名なイエメンですが、 この国はその他の点でも実に独特。 頑固なまでに伝統や誇りを重んじる気質があるかと思えば、 新しいものの中から便利だと思うものを確かな目で選び取る合理性を持ち合わせてもいて、 豊かさは必ずしもGDPから推し量れないんだなあ、と思いました。 イエメン、行ってみたいです。

不思議探検サウジアラビア―砂漠とコーランと王族2万人の国にようこそ

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不思議探検サウジアラビア

著者は20年ほど前、サウジアラビアに3年住んだ経験を持つ女性。 カラーイラスト多数、DVD付き。 副題:砂漠とコーランと王族2万人の国にようこそ

カラーを含め、傑作なイラスト満載の楽しい本。 知られざる国サウジアラビアの習慣や暮らしがユーモラスに描かれていて、とても面白かったです。 17年前に出た同じ著者の『ハルム・アラビアの夢』とは 扱う内容が似ていて、かぶっているイラストも多いです。 付属のDVDはサウジアラビア大使館で配布しているものと似ています。 同じ著者の近著に『恋するサウジ』があり、 こちらはどちらかというと情報提供型の内容。 観光ガイド・生活ハンドブック的な情報を求めるなら『恋するサウジ』、 読みものとして楽しむなら『不思議探検』がオススメです。

恋するアラブ人

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恋するアラブ人

著者はかつてNHKのアラビア語講座で講師を務めた師岡カリーマ・エルサムニー。 日本人を母に、エジプト人を父に持つ女性。 子ども時代は主にエジプトで過ごしていた模様。

エジプトというと日本人にはまずスフィンクスやピラミッドが思い浮かびますが、 この本では、アラブ社会の一員としてのエジプトの姿が浮き彫りにされています。 アラブ人の発想・感覚、他のアラブ諸国との距離感、のどかなエジプトの田舎風景などが、目に浮かぶようでした。 ありそうでない個性的な内容が、豊かな日本語で表現されている、貴重な一冊です。

地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人

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地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人

アラブと日本の比較文化論。 著者はかつてNHKのアラビア語講座で講師を務めたアルモーメン・アブドーラ。 苦学生として来日し、日本人と結婚。 言い訳を誠意と考えるアラブ人、謝罪こそが誠意と考える日本人など、 行動の根拠となる考え方の違いなどが明快に語られています。

この本に描かれているアラブ人気質は思い当たるものばかり。 日本人についても同様。 エジプトでは同じ集合住宅のドアでさえ、色も形も家によってさまざまというのも面白かったし、 日本では気づくといつの間にか一人になってしまう「すきあらば一人」状態とか、 他人と距離を置く日本人の付き合い方を「距離こそ、融和」と表現するなど、日本語センスもお見事。

初稿:2009年2月11日
最終更新日:2011年4月19日

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