Essay  うさぎの旅ヒント

【 成田空港 】

問題:ジャンボジェットの離発着が世界で一番多い空港はどこでしょう?

ニューヨークのケネディ空港? パリのドゴール空港?  ブッブー、答えは日本の成田空港でーす!

ジャンボは一機あたり500人以上もの乗客を運べる。 これ以上効率よく空へと乗客を送り出す手段は他にない。 にも関わらず、成田の滑走路はあの混みようだ。
世界の各地から成田へ、成田から世界へ。 成田を基点に、毎日何万人もの人々が空を行き交う。 その様を想像すると、しみじみこの国に生まれてよかったと思う。

子供の頃、いつか日本人をやめて、どこか外国で暮らしたいと思っていた。 今でも日本社会の枠の中に収まりきれない自分を持て余して、 どこかでもっと自由になりたい、と思うことがよくある。 世間と自分との微妙なズレを感じると、いつも頭の隅で成田空港のイメージがチラチラする。 成田に行きさえすれば日本を脱出できるのだと思うと、 空港が恋しくて恋しくてたまらなくなる。
成田までの距離は日本脱出までの距離に等しく、 うさぎは成田まで電車の乗り換えなしで行かれる今の住まいが気に入っている。 もし成田がもっと遠かったら、日本に閉じ込められているような気分になるだろうと思う。

また、遂にジャンボに乗って成田を飛び立つ時の、その晴れやかな気分といったらない。 飛行機が重力を振り切り、そのくびきから自由になるとき、 うさぎもまた様々なしがらみから自由になったような気がするのだ。

そしてそれでも、心のどこかでは分かっている。 やっぱり『ここ』がわたしの基点なのだ、と。 海外へ飛んでいっても、そのまま別の国の人になってしまったりなんかしない。 数日後にはまたここに帰ってきて、『一億分の一の日本人』としてこの国で暮らす。 それでいいのだ、と。 いつでも世界のどこへでも飛んでいかれるから、 安心してここに帰ってきて大丈夫なのだ、と。

2002年6月22日 うさぎ

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