遅い朝食を食べ終えると、
	きりんと子供たちはプール、うさぎはオーチャードへ買い物に行くことにした。
	部屋の外に出るとちょうどルームメイドさんが廊下にいたので声をかけた。
	中華系のおばさんで、テキパキ・チャキチャキした感じの人だ。
	「今日は部屋に出たり入ったりが多いから、お部屋の掃除は要りません」というと、
	「そうなの? じゃあ濡れたタオルだけでも交換しましょうか?」
	「いえ、まだそんなに使ってないからいいです」
	「そうお〜?」なんだかルームメイドさんは残念そうだ。
	
	「でも床の掃除はした方がいいわよねえ?」
	「いえ、ノーサンキュー」
	「じゃ、ベッドメイキングは?」
	「それもノーサンキュー」
	「で、濡れたタオルの交換もいいのね?」
	「そのとおり」
	ノーサンキューを繰り返すうち、なんだかうさぎは申し訳ないような気がしてきた。
	掃除をさせてあげた方が親切だったかしらん?
	
そういえばラサセントーサでも、 「プライバシープリーズ」の札をドアにかけていったにも係わらず、 部屋に帰ってきてみたらすっかり掃除されていたことがあった。 それでもうその日は終わりかと思いきや、もう一度部屋を出て帰ってきたら、 なんとまたベッドがきれいに直っていた。 それで諦めて、「プライバシープリーズ」の札をかけるのはやめた。 僅かな枕銭目当てとも思えないし、 この国のルームメイドさんたちは 何がなんでも仕事をきちんと済ませなくては気がすまない性分なのかもしれない。