Singapore  セントーサ島と動物園

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【 ドアマン 】

ラッフルズのドアマン

シンガポールといえば、"ラッフルズでハイティ"。 さっきコンシェルジェのお姉さんに予約をいれてもらった。 黒スーツをビシッと着込み、襟元に蝶ネクタイをした日本人のお姉さんは すごくカッコよかった。

ホテルを出ると、幸いにしてタクシーがホテルの前に待っており、 ドアマンがうさぎたちのためにタクシーのドアを開けてくれた。 鼻の下にちょび髭を生やしたインド人。 近衛兵のような白い制服に、ANAホテルの刺繍が入った白い制帽。 ひょろひょろっとした体格なので、制服にシワがより、テロンとして見える。 チップを差し出されて微笑んだ口には金歯が光る。 ちょっと頼りないドアマン。 親切で感じはいいけれど、外敵の侵入からホテルを守ってくれそうな感じはしない。

タクシーに乗り込み、「ラッフルズ」と言ったら通じなかったので、地図を指し示した。
オーチャード通りを走り、まもなくラッフルズに到着。
メーターより一ドル多く請求されたので、「なぜ?」と尋ねると、 運ちゃんはカチンときたらしく、ぶっきらぼうな口調で言った。
「市内を走るときはお上の課した税金がかかるんだよ! 別にオレのフトコロに入るわけじゃねえんだ!」

ふうん、そうなんだ。
うさぎがお金を支払おうとすると、運ちゃんはまだ腹の虫が治まらないらしく、 「うそだと思うなら、他のヤツに聞いてみな」と言った。 そして、タクシーのドアを開けてくれたラッフルズのドアマンに、 「オイ、市内を走るときは税金がかかるんだよな!」と尋ね、 彼が「市内から乗ったのならそうだ」と頷くと、 「そら見ろ、オレが着服しようってんじゃねえんだ!」と言った。

うさぎがお金を払うと、20セントほど余分におつりが返ってきた。 すぐに気づいて返そうかどうしようかと一瞬迷ったけれど、 ぶっきらぼうな運ちゃんの態度にこっちもカチンときていたので、 そのままもらってしまった。

あとで現地ガイドさんに聞いた話では、本当にそういう税金があるのだそうだ。 その料金形態は複雑で、場所や時間帯によっていちいち異なり、 シロウトにはちょっとやそっとじゃ把握しきれないシロモノなのだそうだ。
また帰国後、シンガポールサイトの掲示板で、 タクシーにぼられるんじゃないかと戦々恐々としている人の数を見るにつけ、 この運ちゃんも過去に何度もボッタクリを疑われ、 イヤな思いをしてきたのかもしれないと気づいた。 20セント、返してあげればよかったな。

タクシーのドアを開けてくれたラッフルズのドアマンは上背があり、 がっしりした立派な体格だった。 口のまわりに豊かな髭を蓄え、アタマの上にはターバンを乗せている。 タフにしてダンディ。 動作一つ一つも悠々としており、いかにも名門ラッフルズの顔として相応しい。 実際に武道に長けているかどうかは知らないけれど、 少なくとも見た目は、この美しい貴婦人のようなホテルを守る騎士のようだ。 うさぎは彼に頼んで、子どもたちと一緒に写真に収まってもらった。

ANAホテルのドアマンは、小柄で小太りだったりひょろっとしてたりと様々だった。 しかも、見るたびに違う人。 職務は果たしているけれど、ホテルの顔としての役割を担ってはいない。 一緒に写真を撮りたくなるようなタイプでもない。

タクシーや観光バスの車窓から見た感じでは、 高級と言われるホテルほど、隆々としたドアマンを置いていた。 もちろん、ラッフルズを頂点として。

たかがドアマン、されどドアマン。 ANAホテルがいまいち高級ホテルと呼ばれないのは、 ドアマンの外観に力を入れていないせいかもしれない。

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