Minnesota  ホストマザーに会いに

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【 うるさがた 】

レンタカー

空港を出る前に、まずはレンタカーを借りなくては。 レンタカー会社が入った建物は、駐車場の中にあり、誰かに連れて行ってもらわなければ ちょっと分からないようなところにあった。 シドの車で子供たちを先にレストランへ連れて行ってもらい、 きりんとうさぎとメアリーの三人でレンタカーを借りに行った。

レンタカーはダラーですでに予約しておいた。 2週間前までに予約すると少し安くなるのと、 日本語の説明を読みながら申し込んだほうがラクだったからだ。 今日は予約した内容を確認してサインするだけ。 英語要らず。とってもカンタン。

‥と思ったのは間違いだった。 きりんが契約書にサインしようとするとメアリーが待ったをかけ、 もっと条件のいいプランはないか、保険の額は適切かどうかについて、 窓口のお兄さんに確認しはじめた。 うさぎは最初、その内容を聞き取ろうと頑張ったが、すぐに諦めた。 保証だの保険だの、日本語でも分からない内容が英語で聞いて分かるわけがない。 ここはメアリーにお任せだ。

さて、しばらく話し合った後、メアリーも納得し、 契約書に記載されている事項をかいつまんで簡単に説明してくれた。
「4人乗りのスモールサイズを1週間。これでいい?」

「えっ、ちょっと待って!」こんどはうさぎが待ったをかけた。 「4人乗り? スモールサイズ? 日本では5人まで同乗可能のミディアムサイズで予約したはずだけれど」
「いや、あの大きさじゃあ4人がせいぜいでしょう。 5人乗るならもう1ランク大きいのにしないと」とお兄さん。
一体どうしてそんなことになっちゃったのかしら、と思いつつもうさぎは言った。 「じゃあ1ランク上げて頂戴」
「オーケー」お兄さんは新しい契約書を用意しようと、パソコンの画面に向かった。

新しく作られた費用明細を見てうさぎは思った。ずいぶん高くなるなあ、と。 そこにメアリーが言った。 「ずいぶん高くなるわね。やっぱり大きな車のほうがいい?」
「そうね。5人乗りでないとマムを乗せられないから」
「あらなんだ、そんなこと。それなら大丈夫。いつもわたしが必ず付いていくから」
メアリーは窓口に向かって言った。 「ちょっとあなた、やっぱりさっきのでいいわ」
お兄さんはプリンタから吐き出されたばかりの新しい契約書を破り捨て、また前の条件で作り直した。

その契約書にサインを書きかけたところでまたメアリーが待ったをかけた。
「ちょっと待って。 私が代わりに運転することもあるかもしれないから、そのオプションも入れたほうがいいわ」 というのである。「もちろんオプションの分はわたしが払うから」
「オーケー」と言って、窓口のお兄さんはきりんがサインを半分書きかけた契約書をまた破り捨てた。

そんなわけで、レンタカー一つ借りるのに大騒ぎ。 えらい時間を食ってしまった。 ダラーの窓口係のお兄さんは、とんでもない客に会ってしまったと思っているに違いない。

そうして借りたのは、赤いきれいな車だった。 きりんが若かりし頃乗っていた車も赤かった。 きりんとうさぎはその車が気に入った。

ついでに言うと、その車はやっぱり5人乗りだった。
「小さいけどいい車だわ」とメアリーは言ったが、いや、充分大きい、とうさぎは思った。 アメリカ人にとってそれは4人がやっと乗れる小さな車だったかもしれないが、 うさぎたち日本人から見ればそれは、充分5人乗れる大きな車だったのである。

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